国際私法令和3年(2021年)司法試験第2問答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2021年司法試験国際私法

答案

第1 設問1小問1について

1 本件訴えにおいて日本の裁判所に管轄権が認められるかは、民事訴訟法3条の2以下により判断される。

⑴ まず、3条の2第1項は、被告の応訴の負担を考慮して、被告の住所が日本にある場合は、日本に管轄権を認めている。しかし、Bの住所は甲国にあるから、同項の要件を満たさない。

⑵ 次に、本件訴えは、本件事故に基づく損害賠償請求であるから、「不法行為に関する訴え」(3条の3第8号)に該当する。

ア 同号は「不法行為があった地」が日本国内にあれば日本の裁判所に管轄を認める。その趣旨は、不法行為があった地の所在する国の裁判所に管轄権を認めることが証拠収集の便宜、被害者の保護、加害者の予測可能性にかなう点にある。かかる趣旨から、「不法行為があった地」には加害行為地と結果発生地の双方が含まれると解する。

イ 本件事故は、丙国内で発生しているから加害行為地は丙国内にある。そして、結果発生地については、加害者の予測可能性の観点から直接の法益侵害の結果が発生した地をいうと解する。そうすると、Xは丙国内で傷害を負っているから、結果発生地も丙国内にあることになる。

ウ したがって、「不法行為があった地」は日本国内に存在しない。

2 よって、本件訴えに関して、日本の裁判所は国際裁判管轄権を有しない。

第2 設問1小問2について

1 XのBに対する損害賠償請求にいかなる法が適用されるかは、不法行為によって生じる債権の成立の問題として、法の適用に関する通則法(以下、「法」という。)17条によって決定される。

2 同条は、不法行為によって生じる債権の成立について、加害行為の結果が発生した地を連結点としている。その趣旨は、加害行為地が不法行為の解決にとって最大の利害関係を有すると考えられること、加害行為地を連結点とすることは加害者と被害者の双方にとって予測可能であること、連結点の確定が容易であり、法的確実性に資する点にある。そして、加害行為の「結果」とは直接の法益侵害の結果をいい、派生的、二次的な結果は含まないと解する。本件では、前述の通り直接の法益侵害は丙国内で発生しているから、損害の「発生地」は丙国となる。

3 本件事故時において、Xの常居所は日本であり、Bの常居所は甲国であった。X及びBの間で本件訴えにおける準拠法の合意も特段ないことからすれば、丙国よりも「密接な関係がある地の法」(20条)があるとはいえない。

4 よって、Bの請求には丙国法が適用される。もっとも、丙国法の適用に当たっては、法22条により日本法が累積的に適用される。

第3 設問2小問1について

1 A社は、「生産物」である本件自動車を業として生産する「生産業者」であるD社から本件自動車を購入しているところ、本件自動車の欠陥を主張してD社に対し損害賠償を請求している。このような生産物責任を理由とする債権の成立及び効力については法18条によって判断される。

2 同条は、生産物責任を理由とする債権の成立及び効力について、被害者が生産物の引渡しを受けた地を連結点としている。その趣旨は、当該地が生産者の予測可能性と被害者の正当な期待の保護の双方の要請を満たす中立的な地といえる点にある。本件では、本件自動車はD社からA社に対して甲国内で引き渡されており、「引き渡しを受けた地」は甲国内にある。C社は、自社の自動車を甲国内で販売するための契約をD社との間で締結しており、自社の自動車を甲国内で販売していたから、甲国内における本件自動車の引渡しは通常予見することが可能であった(同条ただし書)。

3 C社は、日本国内に本店を有する法人であるが、前述の通りD社と契約して本件自動車を販売していた。そして、A社は甲国の株式会社であることからすれば、甲国よりも「密接な関係がある地の法」(20条)はないといえる。

4 よって、A社の請求には甲国法が適用される。そして、甲国法の適用に当たっては、法22条により日本法が累積的に適用される。

第4 設問2小問2について

1 本問についても、設問2小問1と同様、適用すべき準拠法は法18条によって決定される。

2 本件自動車は、甲国においてD社からA社に引き渡されている。もっとも、甲国dでは、甲国内で新車と        して販売される自動車が満たすべき排気ガス等の環境基準について、周辺国よりも厳しい基準を設定していたため、本件自動車の販売会社であるC社は甲国市場に販路を有していなかった。そして、本件自動車はC社とE社での契約に基づき乙国内で引き渡されたものであり、C社としては乙国内で販売することを目的としていたといえる。E社は本件自動車をFに販売したところ、Fは本件自動車とともに甲国に転居した後に本件自動車をD社に売却し、そしてA社がD社から本件自動車を購入し、引き渡しを受けている。このような本件自動車の移転はC社の知るところではなく、C社が甲国に販路を有していなかったことからすれば、D社からA社への甲国内での引渡しは「通常予見することができないもの」(同条ただし書)であったといえる。そのため、本件では生産業社であるC社の主たる事業所の所在地である日本法が準拠法となる。

3 前述の通り、C社とA社は同一の常居所を有していない。そして、A社は甲国の株式会社であるが、上記の通りC社が甲国での販路を有していなかったことからすれば、本件における甲国の関係は希薄であり、日本国よりも「密接な関係がある地の法」(20条)はないといえる。

4 よって、A社の請求には日本法が適用される。

以上

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