令和2年(2020年)予備試験商法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2020年商法問題

答案

第1 設問1について

1 Bの乙社に対する責任

⑴  乙社の「取締役」であるBは、423条に基づく損害賠償責任を負うか。

ア  「任務を怠った」(任務懈怠)とは、法令または定款違反の行為をいう。

(ア) 本件買取りは、「取締役」であるBが「自己」のために乙社と行った取引であり、市場価格が総額150万円である本件ワインを乙社がその2倍の価格である300万円で買い取るものである。これにより乙社の取締役であるBは150万円の利益を受け、乙社は同額の損失を負うことになるため、本件買取りは会社と取締役の利益が相反する利益相反取引にあたる(356条1項2号)。

(イ) 本件買取りが利益相反取引にあたる場合、取締役であるBは株主総会において重要な事実を開示し、その承認を受ける必要がある(同項柱書)。しかし、Bは株主総会による承認を得ていない。そのため、本件買取りは同項に違反する。

(ウ) したがって、任務懈怠にあたる。

イ 上記任務懈怠によって、乙社は150万円の「損害」を受けており、423条1項の要件を満たす。

ウ 同項に基づく責任は、総株主の同意によって免除することができ(424条)、乙社の唯一の株主である甲社の代表取締役であるAは本件買取りに同意しており、Bの責任は免除されると思える。しかし、後述の通り、847条の3項に基づく責任追及の際には、総株主の同意では足りず、総株主及び株式会社の第847条の3第1項に規定する最終完全親会社等の総株主の同意も必要になる(同条10項)。そのため、Aの同意のみによってはBの責任は免除されない。

エ  よって、Bは乙社に対して423条に基づく責任を負う。

⑵ そして、Cは、甲社の株主として847条の3第1項に基づく責任追及の訴えによって上記責任を追及することが考えられる。

ア            甲社は、乙社の発行済株式の全てを保有する完全親会社であり(同項、同条2項1号)、Cは甲社の総株式1000株のうち300株を有しているから、最終完全親会社の発行済株式の100分の1以上を有する株主に当たる(同条1項、6項)。

イ  令和2年6月10日に確定した令和元年4月1日から令和2年3月31日までの事業年度に係る貸借対照表上の総資産額は1億円であり、甲社はその後総資産額が変動するような行為を行っていないから、本件買取りの時点における甲社の総資産額は1億円であるといえる。甲社における乙社の株式の帳簿価額は3000万円であり、甲社の総資産額の5分の1を超えているから、上記Bの責任は「特定責任」に該当する(同条1項、4項)。

ウ 本件のCの訴えは、Cや他の株主の利益を図る目的でも乙社に損害を与える目的で行われたものではない(同条1項1号)し、前述の通り本件買取りにより乙社に実際に損害が生じている(同項2号)。

エ したがって、同条1項に基づく責任追及の訴えをすることができる。

2 Aの甲社に対する責任

⑴  甲社の「取締役」であるAは、423条1項に基づく損害賠償責任を負うか。

ア  まず、任務懈怠があるかを検討する。甲社の取締役であるAは甲社に対して善管注意義務(330条、民法644条)及び忠実義務(会社法355条)を負う。本件買取りは利益相反取引にあたるところ、乙社の株主として利益相反取引に同意したことは上記忠実義務に反するとも思える。しかし、利益相反取引による不利益を受任すべきか否かは会社の所有者である株主に委ねられるべきであるから、株主として利益相反取引を承認したとしても忠実義務に反するとはいえない。次に、本件買取りの額は300万円とそれほど高額ではない。もっとも、乙社の株式の帳簿価額が3000万円であることからすれば、本件買取りは乙社の株式価値の10分の1に当たる取引であり、重要な取引といえる。それにもかかわらず、何らの考慮もなく本件買取りを承認することは不適切な子会社管理にあたり、善管注意義務に違反する。そのため、任務懈怠が認められる。

イ 本件買取りによって、乙社の資産が減少し、乙社の株式価値が下がることになるからこれは上記任務懈怠と因果関係を有する「損害」に当たる。

ウ よって、Aは甲社に対して423条に基づく責任を負う。

⑵ そして、Cは、甲社の「株主」(847条1項、2項)としてAの上記責任を追及することができる(同条1項)。

第2 設問2について

1 甲社における手続

⑴ 甲社が、Cから甲社株式を譲り受けることは自己株式の取得にあたる。そして、特定の株主からの取得であるため、自己株式の取得について株主総会の特別決議が必要となる(156条1項、160条1項、309条2項2号)。その際に、取得価格等を決定する必要がある(157条1項)。また、Cの有する甲社株式の価額は3000万円であり、分配可能額を超えてはいない(461条1項2号)。

⑵ そして、甲社の有する丙社株式の帳簿価額は3000万円で甲社の総資産額の5分の1を超え、かつ譲渡により甲社は丙社の議決権の過半数を有しなくなるから、株主総会の特別決議が必要となる(467条1項2号の2、309条2項11号)。

2 丙社における手続

甲社が有する丙社株式をCに譲渡するにあたり、株主総会での決議が必要となる(139条1項)。

以上

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