令和2年(2020年)予備試験民事訴訟法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2020年民事訴訟法問題

答案

第1 設問1について

 1 本訴は債務不存在確認の訴えであるところ、債務の具体的な金額が明示されていない。このような債務を具体的に指定しない債務不存在確認の訴えは訴訟物が特定されているといえるのか問題となる。

⑴ この点について、債務不存在確認の訴えは給付訴訟の裏返しであるため、その訴訟物は債務の全額から自認額を控除したその余の債務の存否であると解する。そして、債務が具体的に明示されていない場合であっても、請求の原因並びに一件記録から金額を判断できる場合には訴訟物が特定されているといえると解する。

⑵ これを本件についてみる。本件では被告であるYが債務の存在について争う姿勢を見せており、本件事故による治療費用として多額の支出をしているので、その支出と通院に伴う慰謝料の一部のみを請求すると主張している。そうだとすれば、Yの主張や証拠及びそれに対するXの主張などから具体的な金額を判断することは可能であるといえる。

⑶ したがって、訴訟物は特定されているといえる。

 2 次に債務不存在確認の訴えである本訴に対し、Yから500万円及びこれに対する本件事故日以降の遅延損害金の支払を求める反訴が提起されている。これにより、本訴の訴えの利益は失われるのではないか。

⑴ そもそも、訴えの利益とは、個々の請求内容について、本案判決による紛争解決の必要性及び実効性を検討するための要件をいう。そして、確認の訴えの対象は給付訴訟とは異なり無限に拡大するおそれがあることから、その対象を限定する必要がある。また、確認判決は給付判決と異なり執行力を有しないため、確認判決をすることが必要かつ適切な場合に限り認めるべきである。そこで、確認の利益は、①対象選択の適否②即時確定の利益③方法選択の適否の3つの観点から判断すべきと解する。

⑵ これを本件についてみる。判例は、債務の履行を求める反訴が提起された以上、債務不存在確認の訴えは訴えの利益を失うとしている。本件でもYが反訴を提起したことにより。債務不存在確認の訴えは本件の紛争を解決するための方法として適切とはいえないとも思える。しかし、Yの提起した反訴は債務の全部の履行を求める請求ではなく、債務の一部の履行を求める一部請求である。Xは、本訴において債務の全部が存在しないことの確認を求めており、一部請求においては当該一部の部分にのみ既判力が生じ債務全体には既判力が生じないことを考慮すれば、債務全部の不存在の確認の訴えを維持した方が紛争の抜本的な解決のために必要かつ適切な方法といえ、対象選択としても適切である(①及び③充足)。また、Yは債務の存否について争っており、Xには自己の権利に対する不安ないし危険が存在し、その除去のため確認判決によって法的地位を確定する必要があるといえる(②充足)。

⑶ したがって、反訴の提起によっても本訴の訴えの利益は失われない。

 3 それでは、本訴についての既判力はいかなる範囲に生じるか。

⑴ この点について、審理の簡易化・弾力化のため、既判力は訴訟物たる権利関係の存否についての判断にのみ生じると解する。

⑵ これを本件についてみる。本訴の訴訟物は本件事故の損害賠償債務の全額から自認額を控除したその余の債務の存否である。Xは何らの債務も辞任していないため、債務の全額の存否が訴訟物となる。

⑶ したがって、本件事故の損害賠償債務の全額の存否の判断について既判力が生じる。

第2 設問2について

 1 前訴判決の確定により、確定判決の後訴における通用力ないし拘束力たる既判力が生じるところ、既判力は口頭弁論終結時(基準時)における訴訟物たる権利関係の存否の判断について生じる。本訴の訴訟物は本件事故の損害賠償債務全額の債務の存否であり、反訴の訴訟物は500万円及びこれに対する本件事故日以降の遅延損害金の請求権の存否である。そのため、前訴判決の確定により本件事故の損害賠償債務全額の債務の不存在及び500万円及びこれに対する本件事故日以降の遅延損害金の請求権の不存在についてそれぞれ既判力が生じる。

2  前訴判決の確定により生じた既判力は、前訴訴訟物と同一、先決関係、矛盾関係にある訴訟物について作用する。判例は、同一事故を原因とする後遺症による損害の賠償を求める後訴の適法性について、前訴においては明示的な一部請求があったと解し、後訴を残額請求として許容している。既判力は基準時までの事情を考慮するものであり、その後の事情については判断していない。そうだとすれば、前訴の請求は判断の範囲を基準時までに発生した損害に限定しているというべきであり、前訴と後訴の訴訟物が同一とはいえない。また、後発損害が予測できなかった以上先決関係になく、後発損害に基づく損害賠償は前訴の訴訟物と矛盾する関係にはない。

3  よって、前訴判決の確定により生じた既判力は後訴に作用せず、後訴におけるYの残部請求は認められる。

以上

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