令和2年(2020年)予備試験民法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2020年民法問題

答案

第1 設問1について

1 Cが、Aに対して、本件消費貸借契約に基づき貸金の返還を請求することができるためには、BC間で行われた本件消費貸借契約がAに効果帰属している必要がある。

⑴ 本件消費貸借契約は、BがAの代理人であることを示した上で行ったものであるところ、BはAから代理権を授与されていないため、無権代理行為となり本人であるAが追認しない限り、Aに効果帰属しない(113条1項)。本件消費貸借契約後、Aは後見開始の審判(7条)を受け、Bが後見人に就任している。そして、後見人であるBは本件消費貸借契約の追認権を有するところ(122条、120条1項)、Bは本件消費貸借契約の履行を拒絶しているため、追認を拒絶している。したがって、本件消費貸借契約はA に効果帰属しないのが原則である。

⑵ もっとも、Bは後見人に就任する前に無権代理行為を行った当人でありながら、後見人に就任した後にAから代理権を授与されていなかったことを理由に本件消費貸借契約の履行を拒絶しており、これは矛盾挙動に当たる。そのため、Bの追認拒絶は信義則(1条2項)に反するとして、例外的に本件消費貸借契約がAに帰属しないか。

ア  この点について、無権代理行為をした者が後見人に就任した後に無権代理行為の追認を拒絶することは矛盾挙動に反し許されないとも思える。しかし、後見制度は後見人の保護を目的としており、後見人となった者は過去にいかなる行為をしたかどうかに関係なく、その時点で何が後見人にとって利益である観点から追認権を行使する義務を負う。そのため、契約の内容や契約に至る経緯など諸般の事情を考慮して、追認を拒絶することが正義の観念に反するといえるような例外的な場合を除き、無権代理行為を行った後見人が追認を拒絶しても信義則に反しないと解する。

イ  これを本件についてみる。本件消費貸借契約によって、Bは100万円を受け取っているところ、Bはこれを自己のために費消することなく、100万全額をAの入院費用に充てている。そして、CはAの友人であり、突然の入院で治療費を調達するあてがないBのためにCは同100万円を融資している。もっとも、100万円を入院治療費に充てたとしてもそれはBが単独で行った行為であり、本件消費貸借契約自体もBが単独で締結しており、Aは同契約に何らの関与もしていない。そうだとすれば、Aの立場に立ってBが追認を拒絶したとしても、当事者間の信頼を裏切るものではない。さらに、Cは本件消費貸借契約の追認を拒絶されたとしても、無権代理人であるBに責任を追及することが可能であり(117条1項)、自らの関与しない経済的不利益を負わせてまでAにCの財産を回復させる必要性は認められない。

ウ  したがって、追認を拒絶することが正義の観念に反するような特段の事情は認められない。

⑶ よって、本件消費貸借契約はAに効果帰属しない。

2 以上より、Cは、Aに対し、本件貸金の返還を請求することができない。

第2 設問2

1 Dは、Aに対し、500万円を貸し付けており、Aへの貸金返還請求権を有する債権者にあたる。Dが、Eに対し、本件登記の末梢登記を請求するための法律構成としては、かかる貸金返還請求権を被保全債権とした債権者代位権(423条以下)及び詐害行為取消権(424条以下)が考えられる。

2 Dの債権者代位権に基づく請求は認められるか。

⑴ まず、本件の被代位債権について検討する。

ア 本件では、実際には本件不動産が3000万円相当の価値を有しているにもかかわらず、Eは、Aに対し、様々な虚偽の事実を並べ立てて、本件不動産の価値は300万円を超えないと申し向け、Eの説明を信じたAは300万円で本件不動産を売却している。これはEによる詐欺であり、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消すことができる(96条1項)。Dは、かかる取消しに基づく原状回復請求権を被代位債権として債権者代位権を請求することが考えられる。

イ 詐欺による意思表示の取消しが認められた趣旨は、表意者を保護することにある。そのため、表意者でない債権者の保護を目的としているとはいえず、債権者代位権の被保全債権とはならないとも思える。もっとも、債権者代位権は債権者の責任財産を保護する制度であり、債権者に債務者の財産管理権に干渉することを認めた制度である。そのため、債務者の財産の性質にかかわらず、債務者の有する全ての行為が被代位債権となると解する。

ウ  したがって、AのEに対する詐欺取消に基づく原状回復請求権は被代位債権となる。

⑵ Aは本件不動産以外にめぼしい財産がなく、Dは「自己の債権を保全するため必要がある」(無資力)といえる。また、同原状回復請求権は一身専属の権利ではなく(423条1項ただし書)、同請求権は請求と同時に履行期が到来する(同条2項、413条3項)。さらに、強制執行によって実現できない権利ではない(423条3項)。さらに、本件売買契約に基づく代金支払債務の履行期は未だ到来しておらず,Eは、本件売買契約の代金300万円を支払っていないため、Eから同時履行の抗弁(533条)を主張されることもない。

⑶ よって、Dの請求は認められる。

3 Dの詐害行為取消権に基づく請求は認められるか。

⑴ まず、詐害行為性について検討する。本件不動産は3000万円相当の価値があるにもかかわらず、本件売買契約では本件不動産がその10分の1に当たる300万円で売買されている。本来の価値の10分の1で売却するということは社会通念上相当な行為とはいえず、行為の外形を基準にすれば、詐害性の認められる行為である。もっとも、債務者であるAは債権者であるDを害することを目的として本件売買契約を行ったのではなく、契約の相手方であるEに騙されて本件売買契約を行っている。そうだとすれば、AにDを害する意図があったとはいえず、本件売買契約は「債務者が債権者を害することを知ってした行為」に当たらない。

⑵ よって、Dの詐害行為取消請求権に基づく請求は認められない。

以上

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