令和2年(2020年)予備試験憲法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2020年憲法問題

答案

1 本件における犯罪被害者及びその家族等の保護を目的として行われる、これらの者に対する取材活動を制限する立法(以下、「本件立法」という)は、報道関係者の取材活動の自由を制限している。そこで、本件立法の合憲性を検討する。

⑴ 報道活動は、情報の受け手となる国民の知る自由に奉仕するものであり、報道活動の不可欠の前提をなす報道機関の取材活動は表現の自由の精神に照らして十分尊重に値するものであり、憲法上の保護を受けると解する。

そのため、本件においても、報道関係者の取材活動は21条1項による保護に服する。

⑵ 本件立法は、報道関係者の取材活動について、犯罪被害者等に対して取材等を禁止するものであり、これは上記自由を制約するものである。

⑶ 情報化社会において情報の受け手に固定化されがちな国民にとっては、報道機関の報道は情報を得るための貴重な手段であるから、国民の知る自由に奉仕する取材活動は重要な意味を有する。

次に、本件立法は対象を限定しつつも、対象者に対する取材等を一律に禁止するものであり、この点においては強度の規制といえる。さらに、取材等の禁止に違反した場合には取材等中止命令を出される可能性があり、命令に違反した場合には処罰という重大な不利益を被ることになる。もっとも、捜査機関に対する問い合わせをすることは可能であり、処罰がなされるのは取材等中止命令に違反したことに対してであるから、対象者への取材を行ったことにより直ちに処罰がなされるわけではない。

加えて、行き過ぎた取材活動は対象者の私生活の平穏を害する可能性があり、対象者の自己に関する情報が本人のあずかり知らぬところで利用される可能性があるため、取材活動に対する制限を設けることについては一定の合理性が認められ、取材活動を制限する立法活動に対し裁量が認められるといえる。

これらの事情を考慮すれば、本件においては、厳格な基準によるべきではなく、①目的が重要で、②目的を達成するための手段が目的達成のため効果的であり、かつ過度であるといえない場合には、本件立法は合憲であると解する。

⑷ これを本件についてみる。本件立法の目的は、取材対象者の私生活の平穏を確保することにある。犯罪等の発生により、犯罪被害者等は通常時とは異なる特別な環境下に置かれることが想定され、犯罪等の発生により生じた心身への有害な影響に加え、報道活動により一般市民の関心の対象となることによって、一定期間の間他の国民よりも強い私生活の平穏確保への要請が生じるといえる。かかる要請の緊急性、重要性を考慮すると、犯罪等発生時において取材対象者の私生活の平穏を確保するという上記目的は重要であるといえる(①充足)。

 次に、手段についてみる。本件立法は、取材活動が制限される対象を、報道を業とする者としている。犯報道関係者は、罪等が発生した際、事件の情報を求めて犯罪被害者等に接触を試みることが想定されるため、これらの者の取材活動を制限することは上記目的を達成するため効果的であるといえる。また、これらの者の犯罪被害者等に対する取材及び取材目的の接触を禁止することで犯罪被害者等に対する過剰な取材を避けることができる。報道関係者には報道機関だけでなく個人で活動を行う者も含まれており、犯罪被害者等に対する不要な接触を避けるためには効果的といえる。そのため、報道関係者が犯罪被害者等に対して取材等を行うことを禁止したことは、上記目的を達成する上で効果的であるといえ、相当性を有する。

 次に、報道関係者の取材等を一律に禁止することは、報道関係者に対する強度の規制といえ、報道関係者に対する処罰規定が設けられていることは取材の自由に対する過度の規制にあたるとも思える。しかし、報道関係者は捜査機関に対し問い合わせをすることができる上、犯罪被害者等の同意がある場合には取材等は禁止されない。さらには、犯罪被害者等が希望される場合にはその一部または全員が取材等に同意しないことが記者会見で公表される可能性もあるわけであり、犯罪被害者等に関する情報を得る手段がなくなるわけではない。また、犯罪被害者等に取材を行った場合には、直ちに処罰されるわけではなく、まず取材等中止命令が出された上で同命令に違反した場合に処罰が課されることになっている。そのため、犯罪被害者等に対する取材等に対して直接に処罰という強度の処分が用意されているわけではない。また、犯罪被害者等が申し出た場合には、取材等中止命令は解除される可能性があり、時間の経過とともに犯罪被害者等の心情が変化し、私生活の平穏確保の要請が後退する可能性についても考慮された立法となっている。そうだとすれば、本件立法の規制は目的を達成するためで過度の規制であるとはいえず、必要性も認められる。

これらの事情からすれば、目的を達成するための手段として効果的であり、かつ過度であるとはいえない(②充足)。

⑸ したがって、本件立法は憲法21条1項に反しない。

2 よって、本件立法は合憲である。

以上

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