令和2年(2020年)予備試験刑事訴訟法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2020年刑事訴訟法問題

答案

第1 設問前段について

1 判決の確定により、起訴された事実について一事不再理効が生じる(憲法39条前段後半、後段)ところ、一事不再理効が生じている事実について再度起訴があった場合免訴判決がなされる(刑事訴訟法337条1号)。一事不再理効の根拠は、一度訴追処罰の危険にさらされた以上、2度と同じ危険にはさらされないという人権に基づく政策的配慮にあり、かかる根拠からすれば一事不再理効は訴追された訴因と公訴事実の同一性がある事実に及ぶと解する。そして、検察官には広範な訴追裁量権限があり、一罪を構成する行為の一部を起訴する行為も適法になしうることからすれば、公訴事実の同一性の判断にあたっては、前訴及び後訴の各訴因のみを基準として判断するべきといえる。

2 これを本件についてみる。本件では、①の起訴事実と②の起訴事実はともに単純窃盗罪で起訴されており、いずれも常習傷害罪により起訴されているわけではない。そうだとすれば、裁判官は①の起訴事実と②の起訴事実の双方とも単独の傷害事件として審理を行うことが期待されており、両訴因の検討において常習性の発露を検討することは期待されておらず、また常習性の発露を考慮すべき契機が存在しなかった。そうだとすれば、時間的場所的近接性の認められない①の起訴事実と②の起訴事実に控訴事実の同一性は認められない。

3 したがって、②の起訴の事件は,既に有罪判決が確定した①の起訴の事件と共に常習傷害罪の包括一罪を構成するものではなく、一事不再理効は及ばない。よって、裁判官は弁護人の主張を却下すべきである。

第2 設問後段について

1 設問後段の場合についても、前段と同様の基準で判断する。

2 これを本件についてみる。本件では、前段の場合と異なり、①の起訴事実は常習傷害罪として起訴されている。そうだとすれば、訴因に常習性の発露という面が含まれている以上、訴因の相互関係を検討するにあたり常習性の発露を検討する契機があったというべきである。そこで、常習性の有無を検討するに、まず①の起訴事実は令和元年6月1日に行われ、②の起訴事実は同年5月15日に行われており、ある程度時間的近接性はあるものの、暴行行為が行われた場所は県を異にするなど大きく異なっており、この点に関連性は認められない。また、①の起訴事実では被害者が知人である交際相手の乙であるのに対し、②の起訴事実の被害者は見ず知らずの通行人である丙であり、暴行相手の選定にも共通する基準は見受けられない。また、暴行態様についても、①の起訴事実では顔面を平手で殴り、加療約5日間を要する顔面挫傷等の比較的軽度の傷害を伴っているのに対し、②の起訴事実では頭部を多数回拳骨で殴り、加療約6か月間を要する脳挫傷等の重大な傷害を負わせており、暴行の程度も大きく異なっている。これらの事情を考慮すれば、①の起訴事実と②の起訴事実に相関関係は認められず、常習性を伺わせる事情は存在しない。

3 したがって、本件の場合においても一事不再理効は及ばず、裁判官は弁護人の主張を却下すべきである。

以上

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