令和2年(2020年)予備試験行政法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2020年行政法問題

答案

第1 設問1について

1 本件条項は、法や条例に根拠を有するものではなく、また法第33条第1項及び条例に定める基準に関係するものでもないA市とBとの間の合意であるところ、かかる本件条項に法的拘束力が認められるかが問題となる。

⑴ この点について、私人間における合意には契約自由の原則が適用される反面、法律に根拠を有しない合意には原則として法的な拘束力は認められない。もっとも、当事者の一方が公的な立場として合意を締結する場合には、法律に根拠を有しない場合であっても合意に法的な拘束力を認める公益上の要請がある場合が想定されるから、関係法令の規定に照らして合意に法的拘束力を認める合理性があるといえ、合意の内容が社会通念上許容される程度のものであるといえる場合には、例外的に当該合意に法的拘束力が認められると解する。

⑵ これを本件についてみる。本件条項は、法や条例に根拠を有しないで行われた合意である。

本件条項は、第2処分場の設置にかかる開発事業の開発許可を与える際に合意された条項であり、Bに対し、第2処分場の設置に係る開発事業以外の開発事業を制限するもので、相手側の行為を規制するという性質を有している。法は、開発事業を行う者は開発許可を受ける必要があると定めており(29条)、都道府県知事に開発許可を与える権限を認めている(33条)。この趣旨は、開発行為が土地の区画形質の変更を伴うもので周辺住民の生活環境に変化を及ぼす可能性のある行為であることから、その要否を判断する権限を行政庁に認めることにある。かかる趣旨からすると、行政庁には開発行為を許可する権限を与えるとともに一定の者に対し開発行為を制限する権限が与えられているというべきであり、関係法令の規定に照らして合意に法的拘束力を認める一定の合理性があるといえる。

もっとも、法は開発許可の申請が手続に適合し、法や命令の規定に違反しない場合には開発許可をしなければならないとし、許可を出すことを原則としている上、開発許可の申請を審査の対象と定めている(33条)。そうだとすれば、開発事業を規制する権限は、開発許可の申請に何らかの不備を認めた場合に認められると考えるべきであり、申請の内容を考慮することなく開発事業を行うことを規制することは法の趣旨に適合しないといえる。そうだとすれば、申請の内容にかかわらず合意以後の開発事業を一切認めないとする本件条項の内容は社会通念上許容される程度のものとはいえない。

⑶ したがって、本件条項には上記例外的場合に当たらない。

2 よって、本件条項には法的拘束力は認められない。

第2 設問2について

1 取消訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法(以下、「行訴法」という)3条2項、3項)とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し若しくはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

2 これを本件についてみる。

⑴ 本件通知は、行政庁たるA市長により行われているから、公共団体の行う行為であるといえる。

⑵ 次に、本件通知に国民の権利義務に対する直接具体的な法的効果があるといえるか検討する。

本件通知は、Bとの事前協議を行わないというA市の決定を通知する事実行為にすぎず、本件通知は具体的な法的効力を有しないとの反論が想定される。しかし、法は開発行為を行うためには、開発行為の許可を受ける必要があるとし(29条)、都道府県知事に対し開発許可を行う権限を与えている(33条)。そして、A市においては許可を受けるための手続が条例で定められており、開発事業を行おうとする者は、事前に市長と協議しなければならないとされている(4条)。そうすると、A市においては事前協議を行うことが開発許可を受けるための要件として定められており、事前協議を行わないことを通知する本件通知は、実質的に開発不許可処分を通知するものとして直接具体的な法的効果を有するといえる。

次に、本件通知の違法性については開発不許可処分に対する取消訴訟で争うことができるから、本件通知に対する処分性を認める必要性がないとのA市からの反論が考えられる。もっとも、第2処分場の設置に係る開発許可の段階で本件条項が締結され、第3処分場の設置に係る開発許可に対し本件通知がなされたという経緯を考慮すれば、本件通知は、A市がBの開発工事を認めない意思の現れということができ、事前協議を行わないことに対する勧告(11条)及び同勧告に従わない場合の工事中止命令を出す恐れが高いことは本件通知の段階で予想でき、中止命令がなされる相当の蓋然性があるといえる。さらに、開発工事の実施にあたっては多額の費用がかかり、仮に開発工事が行えなくなったとした場合の撤去費用等にも追加の支出が伴うことから、開発工事の許否を左右する事情が生じた場合には、速やかにそのような事情に対する判断を行うべきである。そのため、本件通知の段階でその違法性を争うことに合理性が認められる。そうだとすれば、本件通知は、国民の権利義務に対する直接具体的な法効果を有するといえる。

3 よって、本件通知に処分性が認められる。

以上

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