国際私法令和2年(2020年)司法試験第1問答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2020年司法試験国際私法

答案

第1 設問1について

1 XとYはともに甲国人であるところ、日本での調停離婚を希望しており、渉外的法律関係が存在している。渉外的法律関係における離婚の問題は法の適用に関する通則法(以下、「法」という。)27条によって決定される。

2 同条本文は、法25条を準用している。同条は段階的連結を採用しており、夫婦の本国、夫婦の常居所地、夫婦の最密接関係地を連結点としている。夫婦について同一の連結点によって準拠法を決定する趣旨は、抵触法上の男女平等の実現を図る点にある。本件において、XとYの本国はともに甲国である。本件ではXとYは日本人でないから、法27条ただし書の適用はない。

3 そのため、XとYの離婚についての準拠法は甲国となる。甲国民法は、当事者の合意を尊重して離婚を認める裁判手続があるところ、この手続を日本の裁判所の調停手続によって代行できるかが問題となる。

⑴ この点について、当該手続を要求すべき趣旨を日本で全うできないのであれば、かかる手続を日本で代行させる意味はない。そこで、手続代行の可否は、当該手続が要求される趣旨を全うできる日本の制度があるかという見地から判断すべきと解する。

⑵ これを本件についてみる。甲国民法には協議離婚の制度はなく、裁判離婚主義が採用されている。裁判による離婚は裁判所の判断に基づくものであるため、当事者の意思に基づく日本の調停離婚手続では代用できないと思える。しかし、甲国民法上の裁判離婚手続は原則として当事者の合意を尊重する裁判手続であり、当事者の合意を尊重する日本の調停離婚制度と同じ趣旨を有しているといえる。そのため、日本の調停離婚手続は、甲国民法上の裁判離婚制度が要求される趣旨を全うできるといえる。

⑶ したがって、日本の裁判所は、甲国民法上の裁判手続を代行することができる。

4 よって、XとYについて調停離婚を認めることができる。

第2 設問2小問1について

 1 離婚請求について

⑴ 本件は離婚の訴えであるところ、離婚の訴えは「人事訴訟」(人事訴訟法(以下、「人訴法」という。)2条1号)にあたるから、民事訴訟は適用されず(29条1項)、その管轄権の有無は3条の2以下にしたがって判断される。

ア まず、同条1号は被告の応訴の負担を考慮して被告の住所地が日本にある場合は、日本に管轄権を認めている。しかし、Bはすでに乙国に帰国し、現在は乙国に住所を有しているから、同号によっては日本の裁判所に管轄権は認められない。

イ もっとも、Aは現在も日本に住居を有しているため、本件の訴えは「日本国内に住所がある身分関係に当事者の一方からの訴え」(同条6号)にあたる。そして、Bが乙国に帰国するまでは、AとBは日本に共通の住所を有していた。そのため、「当該身分関係の当事者が最後の共通の住所を日本国内に有していたとき」に該当する。

ウ そして、本件では一方当事者であるAが日本に居住している。また、Bは以前日本に居住していたことから、Bに対し日本での応訴を求めることは過大な要求とはいえない。また、AとBの最後の居住地及びBの不貞行為が行われた地も日本であり、証拠の所在地の観点からも日本に管轄権を認めることが不合理であるとは言い難い。したがって、本件では「特別の事情」(3条の5)は認められない。

⑵ よって、本件訴訟における請求のうち離婚請求については、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる。

 2 財産分与請求について

⑴ 前述の通り、本件訴訟における離婚請求については日本の裁判所が管轄権を有するところ、家事事件手続法(以下、「家事法」という。)3条の12各号のいずれかに該当するときは、本件財産分与請求についても日本の裁判所に管轄権が認められる(人訴法3条の4第2項)。

⑵ そこで、家事法3条の12の要件を検討する。

ア まず、同条1号は被告の応訴の負担を考慮して被告の住所地が日本にある場合は、日本に管轄権を認めている。しかし、Bは乙国に住所を有しているから、同号の要件を満たさない。

イ もっとも、前述の通りAは現在も日本に住居を有しているため、本件の訴えは「日本国内に住所がある夫又は妻であった者の一方からの訴え」(同条3号)にあたる。そして、Bが乙国に帰国するまでは、AとBは日本に共通の住所を有していたから、「夫であった者及び妻であった者が最後の共通の住所を日本国内に有していたとき」に該当し、同号の要件を満たす。

⑶ よって、財産分与請求についても日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる。

 3 慰謝料請求について

⑴ 本件離婚請求については日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるところ、それと関連する請求についても日本の裁判所に管轄権が認められる(人訴法3条の3)。そこで、本件慰謝料請求が本件離婚請求と関連するといえるかを検討する。

⑵ 本件において、Xが離婚請求をするに至った原因は、YがAと不貞行為に及んだことが知られてXとYの婚姻関係が破綻したことにある。Yは、慰謝料の内容として離婚せざるを得なくなったことについての精神的苦痛とYの不貞行為についての精神的苦痛への賠償の両方を内容としているところ、これは離婚の「原因である事実によって生じた損害」であるといえ、同条の要件を満たす。

⑶ よって、慰謝料請求についても日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる。

第3 設問2小問2について

 1 離婚請求について

本件離婚請求の準拠法は「離婚」の問題として27条によって決定される。前述の通り、同条は法25条を準用しているところ、XとYの本国はともに乙国であるから、準拠法は乙国法となる。

 2 財産分与請求について

⑴ 本件において、Xは夫婦の財産の分配と清算について請求している。かかる財産分与については、法に規定がないが、準拠法をいかにして決定すべきか。

ア この点について、夫婦財産の清算には財産的側面があり、離婚に伴う夫婦財産の清算はまさに夫婦財産制の終了の場面の問題であるといえる。また、法27条によるとすると、ただし書の日本人条項適用の余地が生じてしまい、財産分与についての抵触法上の両性平等を貫徹できず、妥当でない。そこで、財産分与請求は法26条の問題として法性決定されると解する。

イ これを本件についてみる。法26条は法25条を準用している。その趣旨は、婚姻の財産的効力は婚姻の身分的効力と密接な関係を有すると考えられる点にある。前述の通り、XとYの本国はともに乙国である。

ウ したがって、26条の規定によれば乙国法が準拠法となる。

⑵ よって、本件財産分与請求には乙国法が適用される。

 3 慰謝料請求について

⑴ 慰謝料請求についても、法に規定がない。これについては、離婚そのものを原因とする慰謝料請求については離婚の問題として法性決定し、離婚に至るまでの個々の行為を原因とする慰謝料については、離婚とは独立した不法行為の問題として不法行為の問題として性質決定すべきと解する。

⑵ そこで、まず離婚せざるを得なくなったことについての精神的苦痛を原因とする慰謝料請求を検討する。前述の通り、離婚の準拠法は乙国法であるから、かかる精神的苦痛を原因とする慰謝料請求についても乙国法が適用される。

⑶ 次に、Yの不貞行為についての精神的苦痛を原因とする慰謝料請求について検討する。

ア 不法行為については、証拠収集の便宜及び予測可能性の観点から、加害行為が行われた地を連結点としている(法17条本文)。この場合における加害行為の結果とは、直接の法益侵害の結果をいうところ、Yは日本で不貞行為を行っており、その当時Xは日本に居住していたから、加害行為が行われた地は日本となる。加害者であるYも当時日本に住んでおり、Xが日本に住んでいることを知っていたから結果の発生が予見できなかったとはいえず、同条ただし書は適用されない。

イ そして、Yは現在乙国に住所を有しているが、それは不貞行為後の事情であり、乙国は「密接な関係のある他の地」には該当しない(法20条)。

ウ よって、Yの不貞行為についての精神的苦痛を原因とする慰謝料請求は日本法が適用される。

以上

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