国際私法令和元年(2019年)司法試験第2問答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2019年司法試験国際私法

答案

第1 設問1について

1 ①について

⑴ 名誉毀損を理由とする慰謝料請求は、「他人の名誉又は信用を毀損する不法行為によって生ずる債権の成立及び効力」の問題として、法の適用に関する通則法(以下、「法」という。)19条によって決定される。

⑵ 同条は、被害者の常居所地を連結点とする。その趣旨は、被害者の常居所地を連結点とすることが被害者の保護に資すること、加害者にとっても予見可能であること、被害者の常居所地において最も重大な社会的被害が生じられると考えられる点にある。本件における被害者Xの常居所は甲国である。そのため、同条によれば甲国法が準拠法となる。

⑶ Yは、被告小説を日本のインターネットコンテンツプロバイダーC社の運営しているブログに公表しているが、被告小説は甲国においても閲覧可能であった。Xは甲国に、Yは日本にそれぞれ常居所を有していたことからすれば、甲国よりも密接な関係がある他の地があるとはいえず、本件において20条は適用されない。さらに、名誉毀損は日本においても不法となりうるため、法22条1項は適用されない。また、名誉毀損を理由とする損害賠償を行うことは日本法上可能であるから、同条2項も適用されない。

⑷ よって、本件には甲国法が適用される。

2 ②について

⑴ プライバシー権の侵害を理由とする請求の準拠法については、法に規定がない。この点について、プライバシー権も名誉権と同様に人格権の一内容を構成する。そのため、19条を類推適用して同条によって準拠法を決定すべきと解する。

⑵ Xの常居所地は甲国であるから、同条によれば甲国法が準拠法となる。精神疾患に関する記述についても窃盗癖に関する記述と同様日本及び甲国において閲覧可能であったから、その利害関係は同一といえ、20条は適用されない。また、プライバシー権侵害は日本法上不法となりうるし、プライバシー権侵害を理由とする損害賠償も日本法上認められているから22条は適用されない。

⑶ よって、本件にも甲国法が適用される。

3 ③について

⑴ 本件では著作権の侵害を理由として損害賠償を請求しているところ、その前提として被侵害権利である著作権の準拠法を決定する必要がある。

ア 著作権について、属地主義の見地からその準拠法は保護国法によると解する。日本及び甲国は文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(昭和50年条約第4号)(以下、「条約」という。)の同盟国であるから、条約5条2項により、著作権の保護の範囲及び救済の方法は同盟国の法令の定めるところによって決定される。

イ したがって、本件の著作権の保護の範囲及び救済の方法は保護の要求される同盟国である日本法によって決定される。

⑵ そして、著作権の侵害を理由とする損害賠償請求に適用される法は「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力」の問題として法17条により決定される。

ア 同条本文は加害行為が発生した地を連結点とする。その趣旨は加害行為地が不法行為の解決にとって最大の利害関係を有すると考えられること、加害行為地を連結点とすることは加害者と被害者の双方にとって予測可能であること、連結点の確定が容易であり、法的確実性に資する点にある。

イ 著作権の侵害における加害行為地であるが、著作権は保護国において直接的に効力を発生するものであるから、日本における著作権侵害については日本が、甲国における著作権侵害については甲国がそれぞれ加害行為地となる。そして、それぞれの地における結果の発生は通常予見することが可能であるといえるため、同条ただし書の適用はない。

ウ また、XとYの常居所地は異なるから、20条により適用されるべき地の法もない。そして、著作権の侵害は日本法上不法となりうるし、著作権の侵害を理由とする損害賠償請求も日本法上可能であるから22条の適用もない。

⑶ よって、日本における著作権侵害には日本法が、甲国における著作権侵害には甲国法がそれぞれ適用される。

第2 設問2について

 1 小問1について

⑴ 本件執行判決請求は、甲国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えであるから、その訴えが却下されないためには民事訴訟法118条各号の要件を満たす必要がある(民事執行法24条5項)。

⑵ 本件外国判決は慰謝料に加えて懲罰的損賠賠償請求をも認容するものである。このような判決は、「判決の内容…が日本における公の秩序又は善良の風俗に反」(民事訴訟法118条3号)するとして同号の要件を満たさないのではないか。

ア この点について、同号の趣旨は妥当でない外国判決の効力を否定して内国の公序良俗を維持する点にある。そして、たとえ外国判決を承認・執行した場合の結果が異常でも、内国との関連性が薄ければ、内国の公序を害しない。そこで、公序に反するか否かは、①外国判決を承認・執行した場合の結果の異常性、および②内国との関連性の相関関係により判断すべきであると解する。

イ これを本件についてみる。本件外国判決は、慰謝料に加えてその3倍程度の金額を懲罰的損害賠償として認めている。そのような懲罰的損害賠償は甲国法上公的団体に収める義務はなく、その使途に制限はない。このような懲罰的損害賠償は、生じた結果に対して過大な責任を相手方に課すものであり、結果の異常性は大きい(①)。また、本件外国判決は甲国で言い渡されているが、日本にあるYの財産の執行を求めるものであり、日本との関連性は薄いとはいえない(②)。

ウ したがって、本件外国判決のうち、懲罰的損害賠償部分については同号の要件を満たさない。

⑶ よって、本件外国判決のうち慰謝料の請求を認容した部分について執行判決請求が認められる。

 2 小問2について

⑴ Xの執行判決請求が認められるためには、小問1同様民事訴訟法118条各号の要件を満たす必要があるところ、本件外国判決に係る訴訟の訴状及び期日呼出状の送達方法は同条2号の要件を満たすか。

ア この点について、同号の趣旨は手続開始時点での審問請求権及び手続関与権を保証することにある。かかる趣旨からすれば、同号の「送達」があったというためには、被告が現実に訴訟手続の開始を了知することができ、かつ、その防御権の行使に支障がないものでなければならないと解する。

イ これを本件についてみる。本件外国判決に係る訴訟の訴状及び期日呼出状は、甲国法に従い、いずれもXの代理人弁護士からYに対し,日本語への翻訳文を添付し、訴訟に対応できる時間的余裕をもって、国際書留郵便によって直接郵送されていた。訴状及び期日呼出状がYに直接手渡されている以上、被告であるYは現実に訴訟手続の開始を了知していたといえる。そして、それらは日本語への翻訳文を添付して送達されているわけであるから、Yもその内容を把握でき、さらに訴訟に対応する時間的余裕もあったわけであるから、防御権の行使にも支障はなかったといえる。

ウ したがって、同号の「送達」があったといえ、同号の要件を満たす。

⑵ よって、Xの執行判決請求は認められる。

以上

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