国際私法令和元年(2019年)司法試験第1問答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2019年司法試験国際私法

答案

第1 設問1について

1 AとBが、Dとの養子縁組を行うことができるかは養子縁組の問題として法の適用に関する通則法(以下、「法」という。)31条1項によって決定される。

2 同項前段は養子縁組について、縁組の当時における養親となるべき者の本国を連結点としている。その趣旨は、養親子の生活は通常養親を中心としたものになると考えられ、養親となるべき者の本国が養子縁組に密接な関係を有すると考えられる点にある。

3 本件で養親となるものはAとBである。そして、AとBの本国はともに甲国である。したがって、本件では甲国法が準拠法となる。

4 甲国法によると、養子縁組をするには、家庭裁判所の決定によらなければならないとされている(甲国民法①)。そこで、このような家庭裁判所の決定を日本の家庭裁判所が代行できるかが問題となる。

⑴ この点について、当該手続を要求すべき趣旨を日本で全うできないのであれば、かかる手続を日本で代行させる意味はない。そこで、手続代行の可否は、当該手続が要求される趣旨を全うできる日本の制度があるかという見地から判断すべきと解する。

⑵ これを本件についてみる。甲国民法は、家庭裁判所の決定によって養子縁組が成立するとしており、決定型の養子縁組制度を採用している(甲国民法②参照)。決定型の養子縁組において裁判所の関与が要求されているのは、養子保護の観点から養親としての適切性等を実質的に判断するためである。日本の養子縁組制度は、特別養子縁組制度を除き、当事者の合意に基礎を置く契約型を採用しているところ、かかる趣旨を考慮すれば、子の利益に適うかを実質的に判断することができる日本の特別養子縁組の成立審判手続(民法817条の2以下)であれば、甲国民法の要求する趣旨を全うできるといえる。

⑶ したがって、特別養子縁組の成立審判手続(民法817条の2以下)によって、養子縁組を代行できる。

5 そして、法31条1項後段は、養子保護の観点から、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならないとしている。Dの本国は日本であるところ、日本民法によれば、未成年者を養子にする場合は、家庭裁判所の許可を得なければならないとされている(798条)。そして、Dは15歳未満であるところ、Dの法定代理人がDに代わって縁組の承諾をすることができる(797条1項)。AとBが日本において養子縁組を有効に行うためにはこれらの要件を満たす必要がある。

6 よって、以上の要件を満たした場合、AとBは、Dとの養子縁組を日本において有効に行うことができる。

第2 設問2について

1 AとBが、Dとの養子縁組を行うことができるかは、設問1と同じく法31条1項によって判断される。

⑴ 本問では、Aの本国は日本である。そうすると、AとDとの養子縁組の有無は日本法によって決定される。

⑵ そして、Bの本国は甲国である。甲国民法によれば、甲国裁判所は、養親となるべき者の住所が国内にある場合には、その養子縁組決定の国際裁判管轄権を有すとしており(甲国民法③)、管轄権がある場合、養子縁組の決定は法廷地法によるとしている(甲国民法④)。このように甲国民法には準拠法を決定する規定が存在しないが、甲国民法が養親となるべき者の住所に着目して国際裁判管轄権の有無を判断していることからすれば、かかる管轄規則には養子縁組の準拠法を住所地法とする暗黙の規定があると考えることができる。本件において、Bの住所は日本にあるため、BとDとの養子縁組についても日本法によって決定される。

⑶ したがって、A及びBいずれにおいても日本法によってDとの養子縁組の可否が決定される。

2 養子縁組を行うにあたり、養子とその実方の血族との親族関係が終了するか否かは法31条1項前段によって適用すべき法によって決定される(同条2項)。その趣旨は、養子縁組の成立と、養子とその実方の血族との親族関係の断絶という効果は不可分のものと考えられるため、成立と同じ準拠法を適用する点にある。本件において、養子縁組の成立における準拠法は日本法であるから、養子とその実方の血族との親族関係についても日本法によって判断される。そして、日本法において特別養子縁組をした場合には親族関係は終了するが(民法817条の2第1項)、通常の養子縁組の場合には親族関係は終了しない。

3 よって、AとBは、普通養子縁組手続(792条以下)によって、CとDとの親子関係を維持したままDとの養子縁組を行うことができる。

第3 設問3小問1について

1 前述の通り、養子縁組においては養親の本国法によって決定される(法31条1項前段)。AとBの本国はともに日本であるから、本件では日本法が準拠法となる。

2 そして、養子となるDの本国は乙国であるから、乙国法による同意等の有無を検討する必要がある(同項後段)。

⑴ 乙国国際私法によれば、同国国際私法の規定によって指定された国の実質法のみが適用され(乙国国際私法⑤)、養子縁組は養親となるべき者の本国法によるとされている(同⑥)。

⑵ 養親となるAとBの本国は日本であるから、乙国国際私法に従えば日本法が適用されることとなり、反致が成立する(法41条本文)。これについて、法31条1条後段は、セーフガード条項であるところ、反致を認めてしまうと養子保護という目的に反するとも思える。しかし、法41条ただし書があえて段階的連結の場合の反致のみを否定していることからすると、その他の場合の反致は除外しない趣旨と解され、セーフガード条項の場合に反致を否定するのは解釈として困難であるし、日本法を準拠法としても必ずしも養子の保護に欠けるとは限らない。そのため、セーフガード条項にも反致は適用されると解する。

⑶ したがって、養子となる者や第三者の承諾等の有無についても日本法が適用される。

3 よって、本件の養子縁組には日本法が適用される。

第4 設問3小問2について

1 乙国民法によると、養親となるべき者に満10歳以上の子がいる場合、養子縁組をするには、その子の同意を得る必要があるとされている(乙国民法⑨)。本件では、AとBには満15歳の実子Eがいるため、乙国民法⑨によれば、Dとの養子縁組にはEとの同意が必要となる。

2 そして、養子となるDの本国は乙国であるから、かかるEとの同意を得ることが本件において必要となる(法31条1項後段)。DとEは親族関係にないため、Eの同意を要求することは養子となる者の保護という同項後段の趣旨にそぐわないとも思えるが、同項後段は第三者の範囲を限定していない。そのため、Eの同意が必要になると考える。そして、Eは養子縁組に反対しており、養子縁組の成立に対する同意はない。

3 よって、AとBは養子縁組を日本において有効に行うことができない。

以上

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