平成31年(令和元年・2019年)予備試験憲法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2019年憲法問題

答案

1 乙中学校は、水泳の授業について代替措置を取らず、これによりXは水泳の授業に参加できなかったため、Xの3年間の保健体育の評定はいずれも「2」であった。これは、Xの自己の信仰する宗教の戒律を理由に水泳の授業に参加しない自由を侵害している。そこで、かかる乙中学校の成績評価についてその合憲性を検討する。

⑴ Xは、B教の戒律に従い水着の着用および水泳の授業への参加を拒否しているが、これはXがB教を信仰することによるものである。B教を信仰することは憲法21条1項の信教の自由の一内容であるといえる。

XはA国民であり、日本国民ではない。外国人についても、性質上日本国民のみを対象としていると解される権利を除き、その人権享有主体性が認められるところ、宗教を信仰する権利は国籍を問題とすることではないから、性質上日本国民のみを対象としていると解される権利とはいえない。Xは永住資格ではないものの適法に滞在しており、権利を保障することについても問題はない。

したがって、上記自由は同項で保障される。

⑵ そして、Xは水泳の授業に参加しなかったことを理由に乙中学校に在学中の3年間保健体育の評定は5段階中「2」であった。これは宗教上の戒律を理由に水泳の授業に参加しない自由を制約するものである。

⑶ 宗教は、それを信仰する者にとっては人生全体の指針ともなりうる重要な思想である上、信仰上の行為や服装はその者の自己表現の手段ともなりうるものであるから、信教の自由は個人の自己実現を達成する上で重要な権利であるといえる。本件における水泳への不参加はB教の戒律を理由にするものであった。また、Xは代替措置が認められなかったことにより低評価がつけられ、その結果希望する高校に進学することができなかったという重大な不利益を受けている。

他方、水泳の授業に参加しなかったことを理由に評定を低くしたことは、Xの上記自由に対する直接的な制約ではなく、間接的な制約にとどまる。また、Xは未成年であることから、上記制約は未成年の健全な成長を後見的に保護するパターナリスティックな制約であるともいえる。さらに、乙中学校の校長には、学校の秩序を維持する上で適切な措置をとることができる裁量の余地が認められているといえる。

これらの事情を考慮すれば、本件においては、厳格な基準によるべきではなく、①目的が重要で、②目的を達成するための手段が目的達成のため効果的であり、かつ過度であるといえない場合には、当該成績評価は合憲であると解する。

⑷ これを本件についてみる。本件で、水泳の授業に参加しなかったことを理由に保健体育の成績を「2」にした理由は、宗教上の理由による不参加を認めることによって学校の秩序が乱れることを防止し、教育の中立性を保つことにある。乙中学校は公立高校であり、様々な境遇の生徒が一同に集まって義務教育を受ける場所であるところ、生徒の教育を受ける権利(憲法26条)を保障するためには教育の中立性を保つことが重要であるから、上記目的は重要であるといえる(①充足)。

次に、手段についてみる。まず、手段としての相当性について、乙中学校が、B教の戒律を理由に水泳授業の不参加ないし代替措置を認めることは政教分離原則に反するのではないかという問題がある。保健体育の授業はスポーツなどの活動や保健知識の教育を通じて生徒の健康促進や運動や身体に関する知識向上を図ることにある。そして、運動を直接経験しなくてもレポートの提出等により適切な知識をつけることは可能であるといえる。しかし、レポートの提出等により参加しなかった生徒について保健体育の授業の目的を達成することはできるとしても、宗教上の理由により授業の一部に参加しないことを認めることは公立高校が特定の宗教を優遇する結果につながるおそれがある。また、代替措置を要望する理由が本当に宗教的理由に基づくものであるかを判断することは必ずしも容易であるとはいえない。そのため、B教の戒律を理由に水泳の授業の不参加ないし代替措置を認めることは政教分離原則に反するおそれがある。そのため、乙中学校が、B教の戒律を理由に水泳授業の不参加ないし代替措置を認めなかったことは、上記目的を達成する上で効果的であるといえ、相当性を有する。

そして、乙中学校はXが提出したレポートを受領したものの成績評価の際には考慮していないが、これは乙中学校が水泳授業の不参加について代替措置をとらなかったがゆえのことであるにすぎず、Xに対してことさらに不利益な行為をしたとは評価できない。また、乙中学校のX以外のB教徒の生徒の中には、戒律との関係で葛藤を抱きつつも水泳授業に参加している生徒がいた。Xらの要望に応えるとなれば、他の生徒も同様の要望をする可能性があり、結果として見学の生徒が増えるなど水泳授業の実施や成績評価に影響を与えるおそれがあった。学習指導要領上、水泳実技は中学校の各学年につき必修とされていることからすれば、水泳授業の実施や成績評価に支障が出るような措置を学校側が取ることは妥当とはいえない。そのため、Xとの関係で水泳授業の不参加や代替措置を認めなかったということは乙中学校の教育の中立性を保つ上でやむを得なかった措置であるといえ、必要性も認められる。

これらの事情からすれば、目的を達成するための手段として効果的であり、かつ過度であるとはいえない(②充足)。

⑸ したがって、乙中学校の成績評価は憲法21条1項に反しない。

2 よって、乙中学校の成績評価は合憲である。

以上

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