平成31年(令和元年・2019年)予備試験刑事訴訟法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2019年刑事訴訟法問題

答案

1 本件では、甲の勾留に先行する手続きとして、警察官が甲をパトカーに押し込んでH警察署まで連れて行ったという行為が存在する。これは任意同行として行われているものの、これは任意同行として許容されるか。任意同行の範囲を超えた実質的逮捕をいえるかを検討する。

⑴ まず、任意同行について刑事訴訟法上明文の規定がなくその有効性が問題となるが、明文がなくても被疑者の意思に基づく場合は違法とすべき理由はないし、任意同行がかえって被疑者に有利な場合も存在するから、任意同行自体は197条1項本文の任意捜査の一手段をとして許容されると解する。

⑵ そうだとしても、任意同行が被疑者の身体拘束期間(203条以下)の潜脱に利用される危険も否定できない。そこで、任意同行と実質的逮捕の区別が問題となる。

ア この点について、両者の違いは任意手段か強制手段かという点にあり、任意手段と強制手段は相手方の意思決定の自由があるかないかによって区別される。そこで、同行を断る意思決定の自由が制圧されていた場合には強制手段として実質的逮捕にあたると解する。

イ これを本件についてみる。まず、同行を求めた時間は午後3時と遅く、日常生活の範囲を超えた時間帯である。そして、同行を求めた場所も警察署の手前など警察署に近接した場所であったとはいえない。さらに、同行を否定する甲に対し応援の警察官を含む4人で甲を取り囲んでパトカーに乗車させようとした上、パトカーの屋根を両手で掴んで抵抗する甲に対し、Qが、先にパトカーの後部座席に乗り込み、甲の片腕を車内から引っ張り、Pが甲の背中を押し、後部座席中央に甲を座らせており、同行の方法・態様は有形力を行使した強制的なものであったと言わざるを得ない。そして、警察署に到着した後は逮捕されるまで約6時間にわたって本件事件への関与を否認する甲を警察署の取調室にとどめ置いており、常に甲は警察官に監視されている状態であった。これらの事情からすれば、本件の被疑事実は住居侵入、窃盗と重大事案であり捜査の必要性が認められることを考慮しても、上記同行は甲の意思決定の自由を侵害するものであり、同行を断る意思決定の自由が制圧されたといえる。

ウ したがって、同行を断る意思決定の自由が制圧されていたといえる。

⑶ よって、警察官の上記行為は任意同行ではなく、実質的逮捕にあたる。

2 そして、上記行為の際、逮捕状の発付を受けていなかったから、上記行為は違法な逮捕行為ということになる(憲法33条、刑事訴訟法199条1項)。そうだとすると、本件勾留には先行する逮捕手続に違法があったことになる。かかる先行手続の違法は本件勾留の適法性に影響するか。

⑴ この点について、逮捕については不服申立手続が存在しないところ、これはこの点に関する違法が全て後の勾留段階で一括して事後の司法審査に服することを当然の前提としているといえる。そして、逮捕の手続きには重大な瑕疵がある場合には、身体拘束の法的根拠がなくなり、被疑者は釈放されなければならないので、逮捕を継続する処分としての勾留の請求は許されない。さらに、違法な逮捕に引き継ぐ勾留を適法とすることは司法の廉潔性の保持や将来の違法捜査の抑止の観点からも妥当でない。そのため、勾留に前置される逮捕が違法である場合、その後の勾留も原則として違法となると解する。 

もっとも、軽微な違法があるに過ぎない場合にも一切勾留を認めないとすると、逃亡や罪証隠滅防止といった捜査の必要性をあまりにも害する。そこで、前置される逮捕の違法が令状主義の精神(憲法33条、刑事訴訟法199条1項)を没却するような重大な違法がある場合に限り、その後の勾留も違法となると解する。

⑵ これを本件についてみる。本件では、甲は人相及び着衣において犯人と酷似しており、犯行があった令和元年6月5日午後2時頃何をしていたかという警察官の質問に対して、「覚えていない」など曖昧な答えに終始していた。そして、その時甲は被害品であるV名義のクレジットカードを所持していた。甲と警察官が話をしていた時は同月6日午前2時半頃であり、犯行から12時間しか経っていない時間において転々流通しない性質のものであるクレジットカードを所持していた甲は犯人である可能性が高かったといえる。そうすると、本件では甲が本件の犯人であると疑うにつき充分な理由があったといえる。そして、この時点では甲が誰でどこに住んでいるかなどの情報を知り得なかったわけであるから、ここで甲を確保しなかった場合再び甲の居場所を突き止め話を聞くのは困難であり、甲の身柄を確保する緊急の必要性もあったといえる。そして、窃盗は長期3年以上の懲役にあたる罪である。そうすると、本件では、同行を求めた時点において甲を緊急逮捕するための要件が満たされていたといえる(210条)。本件では通常逮捕状の発付を受けているわけであるから、本件では緊急逮捕の要件が充足されていたといえる。

そして、甲をパトカーに押し込んだ同月6日午前3時5分頃逮捕が行われたと考えても、検察官への送致は逮捕から48時間以内である同月7日午前8時30分に行われ(203条1項)、勾留請求も被疑者を受け取ってから24時間以内の同日午前1時に行われ(205条1項)、逮捕から通算しても72時間を超えていない(同条2項)。そうすると、本件では逮捕から勾留までの時間的制限を超過していないことになる。

これらの事情からすれば、本件の実質的逮捕については、令状主義の精神を逸脱する重大な違法があったとまではいえない。

⑶ したがって、先行する逮捕手続の違法は勾留の適法性に影響しない。

3 よって、本件勾留は適法である。

以上

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