平成31年(令和元年・2019年)予備試験行政法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2019年行政法問題

答案

第1 設問1について

1 Cは、本件訴訟1について、以下に述べる通り、自らが「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法(以下、「行訴法」という。)9条1項)にあたり、原告適格が認められるとの主張をすべきである。

⑴  「法律上の利益を有する者」とは、自己の利益または法律上保護された利益が侵害されもしくは必然的に侵害されるおそれがある者をいうのであって、当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきとする趣旨を含むと解される場合は、かかる利益も法律上保護された利益に当たると解する。

本件では、Cは本件許可処分の名宛人以外の者であるから、9条2項の判断要素に従って原告適格の有無を検討する。

⑵ これを本件についてみる。

ア まず、本件許可処分の根拠法規は、条例6条1項である。

イ そして、Cは、法律上保護された利益として、派手な色彩や動きの速い動画を用いた広告物の設置により、周辺の景観保全や自己の安眠確保といった利益を主張する。

ウ これについて、A県としては、同項は上記利益を不特定多数者の具体的利益として保護されていないと反論することが考えられる。

しかし、同項は各号に定める地域について広告物を設置しようとする者について許可を受けることを定めている。そして、条例1条は、広告業に対して必要な規制を行い、良好な景観を形成するとともに、風致の維持や公衆に対する危害を防止することを目的としている。さらに、条例施行規則は条例の施行に対し必要な事項を定めており、条例と目的を同一にする関係規定といえるところ、別表第4には黒色や原色といった色の規制や蛍光塗料などの反射が著しい材料等についても配慮がなされている。これらの規定からすれば、条例は、原色などの刺激色や蛍光塗料などの反射が著しい材料を使用することにより、広告物周辺の景観や公衆に対する危害を防止する趣旨を有しているといえる。

エ そうだとしても、A県からは、条例がかかる利益を保護していても、それが個々人の個別的利益としてまでは保護されず、不特定多数者の具体的利益として専ら一般的公益の中に吸収解消させられていると反論することが考えられる。

これについて、広告は一度設置されると以後継続的にその広告が景観として組み込まれることになる。また、派手な色彩や蛍光塗料による反射は、広告との距離が近いほどその効果は強いといえる。また、良好な景観の維持というのは、周辺地域に住む者に共通する利益であり、周辺住民が快適な生活を維持するために不可欠な利益である。そして、派手な色彩や動きの速い映像などが表示された広告が設置され、安眠が害されるようなことがあれば、その者の健康が害されることがあり、不利益は重大である。そのため、上記利益は不特定多数者の具体的利益として専ら一般的公益の中に吸収解消させるべきではなく、個々人の個別的利益としても保障される。

そのため、条例6条1項は、広告設置場所周辺に居住し、広告に表示された派手な色彩や動きの速い映像等により直接的な被害を受けるおそれがある者を法律上保護される利益を有するものとして保護しているといえる。

オ A県としては、条例6条1項が一定の利益を有する者を保護しているとしても、Cは保護されるべき者に当たらないと反論することが考えられる。

これについて、Cは本件申請地点の隣地に居住しており、Cは広告設置場所周辺に居住するといえる。そして、Cの居住地は申請地点の隣地であり、広告による被害を最も受けやすい場所にあることから、Cは広告に表示された派手な色彩や動きの速い映像等により直接的な被害を受けるおそれがある者といえる。

⑶ したがって、Cは「法律上の利益を有する者」に当たる。

2 Cは以上のような主張を行うべきである。

第2 設問2について

1 条例施行規則は、条例の施行に関し必要な事項を定めるものである。そのため、基準1は条例6条1項の許可の判断を達成するために定められた基準といえ(9条)、条例の委任を受けて作成された基準である。許可基準が条例による委任を受けて作成された場合、かかる基準は条例が委任をした趣旨に適合し、委任の範囲内であるといえなければならず、委任の範囲内にあるとはいえない場合は委任の範囲を超え無効となる。

2 条例9条が規則による委任を認めた趣旨は、許可の判断にあたって考慮すべき事情は具体的なものとなり、また、時期や場所の事情によって基準値が変動することが見込まれることから、規則によって定めることによって地域の実情に合わせた判断基準を柔軟に設定することにある。そして、条例は広告業の規制により、良好な景観の形成、風致の維持及び公衆に対する危害を防止することを目的としているから、委任を受けて作成される基準についてもかかる目的を達成できる内容である必要がある。

3 条例の委任を受けて規定された基準1は、広告物と鉄道との位置関係を100メートル以上という距離によって制限している。広告は、消費者から見られることを目的として制作されるところ、これが消費者から見られなければ広告の目的は達成されず、無用のものとして設置地域の良好な景観を阻害するものとなる。本件申請地点については、鉄道から設置予定の広告物を見通すことができず、基準1は鉄道から広告を見通せるかを考慮しておらず、結果として景観を阻害するだけの広告物を設置される可能性が高い基準となってしまっている。これは、良好な景観の形成を目的とする条例の目的と矛盾するものであり、基準1は条例の委任の適合しない、委任の範囲外の規定であるといえる。

4 以上から、基準1は条例に反するものとして、本件取消訴訟2における本件不許可処分の違法事由となる。

以上

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