平成30年(2018年)予備試験民事訴訟法答案

武藤遼のプロフィール

プロフィール

初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

問題はこちら

2018年民事訴訟法問題

答案

第1 設問1について

1 Xの訴訟代理人であるX1は、同一の訴状によってYおよびZを被告とする通常共同訴訟(38条)の提起という方法をとることが考えられる。

 本件では、Xが売主となって、目的物を本件絵画、代金を3000万円とする売買契約(民法555条)について、その買主がYであるかZであるかが争われている。そのため、「同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき」に該当し、通常共同訴訟の要件を満たす。したがって、上記方法をとることが可能である。

2 もっとも、通常共同訴訟は、本来別々に行うべき訴訟を便宜的に併合するにすぎず、弁論の分離が行われる可能性もある(152条1項)。そうすると、XはYに対してもZに対しても敗訴してしまう可能性があり、これはXにとって不都合である。そこで、このような事態を避けるべく、主観的追加的併合による提起という方法が認められないか。

⑴この点について、主観的追加的併合については明文の規定がない。そして、明文なき主観的追加的併合を認めると、軽率な提訴ないし濫訴が増える恐れがあること、訴訟遅延につながる可能性があること、また主観的追加的併合が必ずしも訴訟経済にかなうものではなく、かえって訴訟を複雑化させる恐れがあるなどの弊害があることから、明文なき主観的追加的併合も認められないと解する。

⑵したがって、上記方法は認められない。

3 では、Xは、Y及びZを被告とした同時審判申出共同訴訟(41条)を提起するという方法をとることができないか。

⑴同条の「共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と、共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが、法律上並存しない関係にある」こととは、両請求が実体法上両立しない関係にあることをいう。

⑵本件においては、Xは、Zに対して本件絵画の売買代金の請求を行っている。仮に、ZがYの無権代理を主張して、XがYに対し民法117条1項に基づく無権代理人の責任追及訴訟を提起していたならば、両請求は実体法上両立しない関係にあるといえる。しかし、Zに対する請求が売買代金請求訴訟である以上、これはYに対する訴訟物と同一のものであると考えられ、これは同一債権の二重売買による請求と考えることができ、この請求は実体法上両立しうるものである。

⑶そのため、「共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と、共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが、法律上並存しない関係にある」とはいえず、この方法による提起はできない。

第2 設問2について

1 Xは敗訴に備えZに訴訟告知(53条1項)をしたものの、Zは訴訟に参加していない。そのため、Xは、ZにXY間の訴訟の参加的効力が生じるとして、Yを被告とする判決の効力を用いることができないか。

⑴まず、参加的効力が認められるためには、訴訟告知を受けた者が「訴訟について利害関係を有する」第三者であるとする補助参加の利益が認められることが必要である。

ア 補助参加制度の趣旨は、将来、被参加人あるいは相手方との間で訴訟当事者となる可能性のある者が、すでに係属している訴訟に参加する途を開くことによって紛争の合理的解決を開くことにある。そこで、「訴訟の結果」とは、訴訟物に関する主文の判断を意味し、「利害関係を有する」とは、参加人に独自の法律上の利益がある場合をいうと解する。

イ これを本件についてみる。XY間の訴訟物は、XのYに対する本件売買契約に基づく代金支払請求権の有無であり、これが認められない場合、ZはXから同様の契約に基づく売買代金支払請求を提起されるという法的地位に立たされる。そのため、Zは「訴訟の結果」につき「利害関係を有する」といえる。

ウ したがって、Zに補助参加の利益が認められる。

⑵そして、参加的効力が生じる範囲は、判決主文のみならず判決主文を導き出すのに必要な主要事実に係る認定及び法律判断にも及ぶ。そのため、本件売買契約の買主がZであるとするXY間の訴訟の判決理由中の判断についても参加的効力が及ぶ。

⑶しかし、参加的効力の趣旨は、同一当事者間で共同して訴訟を追行し、敗訴した者相互間の責任分担原理である衡平・禁反言の原理にある。そうだとすると、同一当事者間で訴訟を共同して追行することができない者に対しては、参加的効力を及ぼすのは不当である。Zの代表取締役はYであり、Zの訴訟追行はYが行うことになる。そうすると、Zが補助参加した場合、原告側の補助参加の地位と被告の地位をYが有することになる。そうだとすれば、YとZは共同して訴訟を行うことが期待できず、Zに対しては、参加的効力が及ばない。

2 したがって、Xは、後訴で、Yを被告とする判決の効力を用いることはできない。

第3 設問3について

1 弁論の併合および分離は裁判所の専権事項(152条1項)であるため、当事者の立場から弁論の分離を不当であると主張することは原則として認められない。しかし、訴訟の目的は当事者の紛争を早期に解決することにあり、当事者の手続保障や訴訟経済の観点から不合理と認められる弁論の併合および分離は裁判所の裁量の範囲を逸脱するものとして認められないと解する。

2 これを本件についてみる。本件では、Zの代表取締役をYが務めていることから、YとZは実質的に同一と考えることができる。そのため、XのYに対する訴訟とZに対する訴訟はこれらを併合する合理的な理由があった。これらを併合することは、訴訟経済の観点からも合理的であり、当事者にとっても便宜であったといえる。そうすると、弁論の併合により紛争が合理的に解決されるとの当事者からの信頼が生じていたといえ、このような状況の中で弁論を分離することは当事者の手続保障に反する。

また、Yに対する請求でもZに対する請求でも本件売買契約という同一の契約の買主が誰であるかが問題とされていた以上、本件売買契約に用いられた領収書や名刺等の証拠は共通のものであったといえる。このような証拠が共通する両訴訟について併合後にまた分離するのは訴訟経済の観点からも妥当でない。

3 以上のような事情から、裁判所が弁論を分離したことは、その裁量を逸脱するものとして違法である。

以上

メルマガやってます

司法試験、予備試験合格のために
さらに詳しい情報が知りたい方はメールマガジンに登録してください。
もちろん無料です。
メルマガでは、
より具体的な話をしております。

無料なので、
興味がある方は
ぜひご登録ください。

大好評いただいていて、
メールマガジンでしか流さない話もよくしてますし、
メルマガ限定企画も流しますし、
ここまで読んでいただいた方は、
登録して損することはないかと思われます。

下記から登録できます。
武藤遼のメールマガジンはこちら