平成30年(2018年)予備試験民法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2018年民法問題

答案

第1設問1について

1 ①の請求の根拠

⑴Aは、Cに対して債務不履行に基づく損害賠償および遅延損害金の請求をすることが考えられる(415条1項)。

ア まず、債務不履行が認められるか。

(ア) 本件では、CはAと雇用契約(623条)を締結していないため、AC間に直接の契約責任が発生しているわけではない。

しかし、AはBに雇用されているところ、Bは本件家屋の解体を請け負ったCの下請人の地位にある。そして、Aは、Cの従業員と同様にCから具体的な指示を受けていた。このような事情からすれば、AC間の契約責任を一切認めないのは妥当ではなく、Aに指示する立場にあったCには、信義則(1条2項)上の付随義務として労働者の職務における安全につき配慮する義務を負っていたといえる。

(イ) 本件家屋に設置された柵の撤去作業は高所での作業を伴うものであり、責任者であるCとしては、高所で作業する者がバランスを崩し転倒するなどして被害を受けぬよう命綱や安全ネットなどの用意をして従業員の安全に配慮する義務を負っていた。しかし、Cはこれらの用意を怠り、上記義務に違反している。

(ウ) したがって、債務不履行が認められる。

イ 高所での作業である以上、安全への配慮を怠ればこのような事故が起こりうることは建築業を営むCにおいては予見できた事情であるといえ、Cに「責めに帰することができない事由」があるわけではない(415条1項ただし書)。

ウ よって、Aは、Cに対して上記請求をすることができる。

⑵次に、Aは、Cの履行補助者であるBに過失があったとして、Cに対し債務不履行に基づく損害賠償および遅延損害金の請求をすることが考えられる。

ア 「債務の本旨に従った履行をしないとき」には、当事者の公平の観点から債務者の故意過失および信義則上これと同視できる事由も含むと解するところ、これには履行補助者の故意過失も含まれる。Bは、Aの撤去作業が終了しないうちに、本件家屋の1階壁面を重機し始めているところ、Cはこれに対して周囲に配慮するなどの指示を行なっておらず、Bへの監督につき過失があったものといえる。したがって、「債務の本旨に従った履行をしないとき」に当たるといえる。

イ よって、Aは、Cに対して上記請求をすることができる。

2 ②の請求の根拠

 ⑴Aは、Cに対して使用者責任に基づく損害賠償および遅延損害金の請求をすることが考えられる(715条1項)。

ア Bは、Cの従業員と同様Cの指示の下に働いており、Cは、「ある事業のために他人を使用する者」にあたる。

イ そして、Bは、Aの撤去作業が終了しないうちに、本件家屋の1階壁面を重機し始めたという「過失」により、Aに重傷という「損害」を負わせている。そのため、Bに不法行為責任が認められる(709条)。

ウ 「事業の執行について」とは、行為の外形から見て、被用者の職務範囲の行為と認められる場合のことをいう。Cは3階建ての家屋の解体を請け負っており、Bが行なっていた行為もCの請け負っていた工事の内容に含まれる。そのため、「事業の執行について」Aに加えた損害であるといえる。

⑵よって、Aは、Cに対して上記請求をすることができる。

3 ①と②の比較

⑴①の請求の立証責任は、加害者であるCにあるところ、②の請求の立証責任は、被害者であるAにある。そのため、Aにとっては、①の請求の方が有利である。

⑵①の請求債務不履行に基づく損害賠償請求の消滅時効は10年(166条1項)であるのに対し、②の請求の不法行為に基づく損害賠償請求の消滅時効は3年である(724条)。もっとも、本件はAの「身体の傷害」による損害賠償請求であるから、①の請求であろうと②の請求であろうと、消滅時効の期間は20年となる(167条)。そのため、消滅時効の観点からみれば、どちらの請求もAにとって違いはない。

⑶①の請求の場合、期限の定めのない債務として「履行の請求」時である平成29年5月1日から遅延損害金が発生する(412条3項)。これに対し、②の請求の場合、被害者保護の観点から本件事故が発生した損害時である平成26年2月1日から遅延損害金が発生する。そのため、遅延損害金の観点からみれば、遅延損害金がより多く発生する②の請求がAにとって有利である。

第2 設問2について

1 アの質問について

⑴協議離婚は、届出時に離婚意思がない場合に無効となる。そして、離婚は婚姻と異なり、解消的身分行為であるから、離婚意思は届出に向けられた意思で足りる。

⑵本件では、CF間に引き続き家族として生活する意思があるものの、Cの離婚の提案に対し、Fは承諾しているため、離婚の届出に対し意思の合致があったといえる。

⑶したがって、CF間の離婚は有効であるため、離婚の無効を前提としCからFへの財産分与が無効であるとするアの質問は不適当である。

2 イの質問について

⑴イの質問は、AのCに対する損害賠償請求権を被保全債権とする詐害行為取消権(424条1項)に基づき、CからFへの財産分与を取り消すことができないかというものである。この質問に回答するにあたり、本件財産分与が詐害行為に当たるかが問題となる。

ア この点について、共同担保保全の必要性と身分意思尊重の要請との調和の観点から、財産分与は夫婦の共同財産の清算分配という768条3項の趣旨に反し不相当に過大で、財産分与に仮託してされた財産処分と認めるに足りるような特段の事情のない限り、財産権を目的とする法律行為に当たらず、詐害行為とはならないと解する。

イ これを本件についてみる。本件建物はCがFの協力のもとに建てたものであり、本件土地にいたってはC所有のものであり、そもそもFのものではない。そうだとすれば、本件土地および本件建物のいずれかないし大部分がCに分与されてもよさそうなところ、これら全てがFに分与されている。CがAから損害賠償を受け本件土地および本件建物を差し押さえられそうな状況にあったことやCが本件土地や本件建物の他にめぼしい財産を持っていなかったことからすれば、Fへの分与のうち本件建物の2分の1の部分および本件土地の部分に、財産分与に仮託してされた財産処分と認めるに足りるような特段の事情があるといえる。

ウ したがって、上記部分が詐害行為にあたる。

⑵よって、Fへの財産分与は詐害行為として取り消しうるが、その全てが取り消せるわけではない。そのため、本件財産分与の全ての部分をAが取り消しうるという点について、イの質問は不適当である。

以上

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