平成29年(2017年)予備試験民事訴訟法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2017年民事訴訟法問題

答案

第1 設問1

1 本件の不当利得返還訴訟(以下「本件訴訟」)は、訴え提起の時点で既に発生済の利得分を求める現在給付の訴えと、同時点で未発生である利得分を求める将来給付の訴え(135条)を含むところ、かかる訴えは適法か。本件訴訟の訴えの利益が認められるかを検討する。

2 本件の現在給付の訴えについては、既に履行期が到来しているのであるから、紛争解決の必要性と実効性が認められ、訴えの利益が認められる。

3 次に、将来給付の訴えに訴えの利益が認められるか。

⑴ 本件の将来給付の訴えについては、未だ発生していないものの、継続的に将来に渡り、発生が予測される。そこで、将来給付を求める基礎となる資格たる請求適格が認められるかが問題となる。

ア この点について、①請求権の基礎となるべき事実関係および法律関係が存在し、その継続が予測されるとともに、②将来債務者に有利となる事情の変動が明確に予測でき③請求意義の訴えによってのみその執行を阻止しうる不利益を債務者に貸しても、格別不当と言えない場合、請求適格が認められる。

イ 本件では、甲土地がXとYの共有になる以前から、Aへの賃料請求権の基礎となるY A間の賃貸借契約がすでに存在している。また。Aが運営するゴルフ場の経営は極めて順調であり、本件賃貸借契約が締結されてからこの10年間本件賃貸借契約通りにAは賃料の支払いを続けていて、これまでに未払いはない。そうすると、契約が今後10年間存続する以上、AからYに対してこれからも継続的に賃料が支払われ続けることが予測される (①)。

 また、Aが賃料をYに支払わなければ、YはXに対し持ち分に応じた賃料を支払う必要はなくなるから、債務者Yにとって有利な事情の変動は明確に予測できる(②)。そうすると、かかる事情の変動があったことについて請求異議の訴えによってのみその執行を阻止しうる不利益をYに課しても格別不当とはいえない(③)。

ウ したがって、Xに本件訴訟の請求適格が認められる。

⑵では、 「あらかじめその請求をする必要がある場合」(135条)といえるか。その判断基準としては、義務者の態度、給付義務の目的、性格などを考慮する。本件では、Yが裁判外での交渉に応じず、Xに支払わない態度から「あらかじめその請求をする必要」(135条)がある。

⑶したがって、本件の将来給付の訴えに訴えの利益が認められる。

4 よって、本件訴訟は適法である。

第2 設問2

1 第1訴訟の判決の確定により、確定判決の判断内容の後訴での通用力ないし拘束力たる既判力(114条)が生じる。そのため、第2訴訟において、受訴裁判所が貸金債権の存否について改めて審理・判断することは、第1訴訟の既判力に抵触し、許されないのではないか。

⑴まず、第1訴訟の既判力が生じる範囲を検討する。

ア 既判力は、「判決主文に包含するもの」(114条1項)に生じるのが原則である。なぜなら、既判力は紛争の蒸し返しを防止する必要と、手続保障に基づく自己責任を根拠に認められるものであるが、主文について生じれば、審理を円滑・迅速に行えるし、手続保障に基づく自己責任を問えるからである。

本件の前訴判決の主文は、一部認容判決であるから、主文である250万円のYのXに対する給付を認める部分に生じる。

イ もっとも、本件はYの提出した相殺の抗弁についての判断もされている。相殺の抗弁について審理・判断された場合には、例外的に、判決理由中で示される反対債権の不存在(114条2項)についても既判力が生じる。なぜなら、かかる範囲に既判力が生じないと、訴求債権の存否の判断が反対債権の存否の判断として蒸し返される恐れがあるため、これを防止する必要があるからである。

 本件では、Yの提出した反対債権である500万円の本件貸金債権について、「相殺をもって対抗した額」である300万円のうち、50万円の「成立」及び250万円の「不成立」について既判力が生じる。

⑵では、第2訴訟において、前訴判決の効力は生じるか。

ア 第2訴訟の訴訟物は、貸金返還請求であり、第1訴訟については不当利得返還請求で、同一ではない。もっとも、第2訴訟の450万円の請求は、前訴判決による本件貸金債権250万円の「不成立」と抵触し、矛盾する。

イ したがって、裁判所は、第1訴訟の既判力に抵触する450万円のうちの250万円の請求について、改めて審理・判断できない(積極的作用)。

2 そうすると、200万円の部分については既判力が及ばないことになるが、本件貸金債権は第1訴訟において、その全部が審理されている。そのため、後訴裁判所が、本件貸金債権の450万円のうち、残りの200万円について改めて審理・判断することは、信義則(2条)に反し、許されないのではないか。

⑴この点、後訴が前訴の不当な蒸し返しにあたれば、信義則に反するので、裁判所は、審理・判断できない。

⑵本件で、200万円は前訴で既に審理されている。そうだとすれば、第2訴訟で受訴裁判所が、その200万円について改めて審理・判断をすると、これは不当な蒸し返しにあたる。

⑶したがって、受訴裁判所が200万円について改めて審理・判断することは、信義則に反する。

4 よって、受訴裁判所は、貸金債権の存否について改めて審理・判断することができない。

以上

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