平成29年(2017年)予備試験刑事実務基礎答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2017年刑事実務基礎問題

答案

第1 設問1について

 Aは、両手でVを押すなどその他の行為によりVを転倒させたことを否定している。このAの主張に対し、WやB子の証言がAにとって不利なものとなっている。そのため、AはWやB子に働きかけ証言を覆すよう迫ったり、Aの知人に対し、Aに有利な嘘の証言をしてもらうように働きかけるなどの行為を行う可能性がある。特に、B子はAと交際しているため、このような働きかけを行うことは容易である。また、Vに対しても、意識が戻り次第接触する可能性もがある。Vは未だ取り調べが行われていない状態であり、接触を図る実益もある。Aは犯行を否認しており、上記のような行為を行う可能性が高い。以上のことから、「罪証を隠滅させるに足りる相当の理由」があるといえる。

第2 設問2について

直接証拠とは、要証事実を直接証明する証拠のことをいう。本件での要証事実は、AがVに対し、暴行行為を行ったことである。暴行行為とは、具体的にはVの胸部を両手で2回押し、Vをその場に転倒させたことである。bの供述は、犯人がVの腹の上にまたがっていたことを内容とし、しかも犯人がAであることを識別した供述である。しかし、これはVが転倒した後のことであり、Bが誰の、どのような行為によって倒れたかを示すものではない。そのため、AがVに対し、暴行行為を行ったことを直接証明する証拠とはいえない。したがって、検察官は、bの供述を間接証拠として考えているといえる。

第3 設問3について

1イに定める証拠の類型

刑事訴訟法316条の15第1項5号ロ

2ロに定める開示が必要である理由

Vは、甲3号証の供述者であり、その証明力の判断にあたっては、未開示の供述録取書を含む全ての供述を調べ、その供述仮定に矛盾がないかを検討する必要がある。また、甲3号証は、Vが被害状況を述べたものであるところ、その供述の信用性を他のVの供述録取書によって調べることは、Aの防御のため必要性が高い。以上のことから、類型証拠の開示が必要である。

第4 設問4について

甲4号証には、被害状況が再現された写真が貼付されているが、これはVの供述に基づいて再現された状況を撮影したものである。そのため、これはVの供述を具体化したものとして、供述書面と同様の性質を有するといえる。そのため、弁護人は、写真を刑事訴訟法320条1項の証拠として扱い、326条1項の基づく同意をしなかったものである。

これに対し、甲5号証は、Wが被害状況を直接撮影したものであり、被害状況を再現した写真ではない。これは機械的に作成されたものであり、供述証拠としての性質を有しない。そのため、刑事訴訟規則190条2項前段に基づく証拠調べ請求に対する意見として、「異議あり」との意見を述べたものである。

第5 設問5について

1 小問⑴について

Vの証言は、被害状況について詳細に述べたものであり、その真偽を確かめるためには被害状況の再現を機械的に記録した写真によって判断することが望ましいと考えられる。そのため、刑事訴訟規則199条の12第1項に基づいて、写真の利用を許可している。

2 小問⑵について

 Vは、甲4号証の写真を示された後は、写真を引用しながら証言しているため、写真の内容とVの証言は密接に関連しているといえる。そうだとすれば、写真の内容は、Vの引用によってその証言の一部になっているといえる。したがって、Vが証言した限度において、事実認定の用に供することができる。

第6 設問6について

1 小問⑴について

甲7号証においては、B子が、AがVの胸を合計2回突き飛ばすように押したことやAが仰向けのVに対し馬乗りになり、右腕を振り上げてVを殴ろうとしたことを供述したとされている。これに対し、証人尋問においてB子は上記の事実を否定している。これは、AがBに暴行を行ったか否かについて異なった結論を導く供述である。したがって、B子は、公判期日において前の供述と相反する供述をしている。

また、B子は、捜査段階での検察官に対する供述状況について 、何を話したのか覚えていないが、嘘を話した覚えはなく、録取された内容を確認した上、署名・押印したものが甲7号証であると供述している。人の記憶は時間の経過に従って薄れていくものであるため、事件当時に近い捜査段階での検察官に対する供述状況の方が、証人尋問における証言よりも信用性が高い。さらに、公判請求後に、B子がAの子を妊娠しているという事実が発覚している。これは、B子がAをかばうため虚偽供述をする強い動機となる事情である。以上のような事実からすると、公判期日におけるB子の供述よりも、検察官面前調書の供述を信用すべき特別の情況があるといえる。

2 小問⑵について

本件において、AはVへの暴行を否定しており、Vの転倒原因がわかっていない。Wは、状況を注視していなかったため、Vの転倒原因がわからないと供述しており、被害者であるVも後ずさりしながら「何するんだ。」といった後のことは記憶にないと供述している。そうだとすれば、Vの転倒原因を明らかにできるのは被害当時、Aとともにおり、Vの転倒を目撃したであろうB子の供述のみであるといえる。そのため、Aによる暴行行為によりVが転倒したことを明らかにするため、甲7号証を取り調べる必要があるという旨を、検察官は釈明すべきである。

以上

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