国際私法平成29年(2017年)司法試験第2問答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2018年司法試験国際私法

答案

第1 設問1小問1について

1 本問におけるYの主張は、本件運送契約における乙国裁判所を管轄裁判所とする旨の条項を理由とするものである。日本及び甲国は本件条約の締約国であるところ、Yの主張を判断するにあたり、日本の裁判所は本件条約をいかにして適用すべきか。法廷地の国際私法と本件条約の適用関係が問題となる。

⑴ この点について、本件条約は締約国間において、国際航空運送について統一的な規則を定めることを目的とした条約である。本件条約は運送人の免責条項を無効としている(26条)ことや、事前の準拠法選択合意を排除している(49条)ことからすれば、本件条約の適用に際して法廷地の国際私法を介することは適当とはいえず、法廷地の国際私法を排除して本件条約を直接適用することが妥当であると解する。

⑵ 本件運送契約は、Y社の「航空機」(本件条約1条1項)による「有償」による本件貨物の国際運送である。そして、その「出発地」は本件条約の「締約国」である日本であり、「到達地」も「締約国」である甲国であり、同条2項の要件を満たす。

⑶ したがって、本件訴えには本件条約が直接適用される。

2 本件条約が適用されることにより、本件訴えは、原告の選択により、運送人の住所地、運送人の主たる営業所若しくはその契約を締結した営業所の所在地の裁判所又は到達地の裁判所のいずれかに提起する必要がある(33条1項)。本件において、運送人であるYの主たる営業地は甲国、本件運送契約を締結した営業地の所在地は日本、到達地は甲国である。日本及び甲国はいずれも本件条約の締約国であるから、本件訴えは日本または甲国のいずれかの国の裁判所に提起されなければならない。

3 他方、本件運送契約には、乙国裁判所を管轄裁判所とする旨の条項があり、これは「運送契約中の条項又は損害の発生前に行った特別な合意」(49条)に該当する。乙国は本件条約の締結国ではないから、当該合意は日本及び甲国のいずれかの国の裁判所に損害賠償についての訴えを提起すべきとする本件条約33条1項の定めに反する条項である。そのため、本件条約49条によって当該条項は無効となる。

4 よって、Yの主張は認められない。

第2 設問1小問2について

1 本件訴えは日本の裁判所に提起されているところ、本件訴えの1ヶ月前に甲国の裁判所に本件貨物の毀損を原因とする本件条約18条1項に基づく債務不存在確認を求める訴えが提起されている。

2 前述の通り、本件運送契約に関する損害賠償の訴えは日本または甲国のいずれかの国の裁判所に提起されるべきところ(本件条約33条1項)、本件訴えは日本の裁判所、債務不存在確認の訴えは甲国に提起されているから、いずれの国の裁判所もそれぞれの訴えについて国際裁判管轄権を有している。これらの訴えの訴訟物は同一であるから、本件では訴訟物を同一とする訴えにつき国際的な二重訴訟となっている。

3 このような国際的な訴訟競合については明文の規定がないところ、すでに同一の訴訟物を内容とする訴訟が提起されている場合、後訴をどのように取り扱うべきかが問題となる。

⑴ この点について、国際的訴訟競合の取扱いについて事案の内容を勘案し、具体的妥当性を図るため、適切な法廷地であるかを利益衡量によって判断すべきと解する。具体的には、国際裁判管轄における「特別の事情」(民事訴訟法3条の9)によって判断する。

⑵ これを本件についてみる。本件訴えにおいては、本件貨物はすでに甲国に到着している。また、被告であるYの主たる営業所が甲国にあり、応訴の負担があることを考えれば、本件では甲国で審理及び裁判を行うことが当事者の衡平の観点及び適正かつ迅速な審理の観点から適切といえる。そのため、本件では「特別の事情」があるといえる。

⑶ よって、日本の裁判所は本件訴えを却下すべきである。

第3 設問2について

1 Zの主張は、本件条約18条1項に基づく損害賠償を法律上の代位によって取得したものであるとするところ、かかる法律上の代位については、法の適用に関する通則法及び本件条約のいずれにも規定がない。そのため、法律上の代位についていかにして準拠法を決定すべきかが問題となる。

⑴ この点について、債権の法律による移転は、一定の事実の発生をもって法律上当然に生じるものである。そのため、法律上の代位による債権の移転の要件及び効力については、その原因たる事実の準拠法によるべきである。また、債権の移転は法律上当然に生じるものであるから、債務者の利益保護の要請は強いとはいえず、移転の対象たる債権の準拠法を累積的に適用する必要はないと解する。

⑵ これを本件についてみる。本件における法律上の代位は本件保険契約に基づくところ、本件保険契約は甲国法を準拠法とする旨の合意がある。

⑶ したがって、本件における法律上の代位については甲国法によって判断する。

2 よって、Zの主張の当否は甲国によって判断される。

以上

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