国際私法平成29年(2017年)司法試験第1問答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2018年司法試験国際私法

答案

第1 設問1について

1 本件認知が有効に成立するかは、「認知」の問題として法の適用に関する通則法(以下、「法」という。)29条2項によって判断される。

⑴ 同項は、子の身分取得容易化の観点から、子の出生時における認知する者の本国(同条1項)、認知時におけるその者の本国、または認知時における子の本国(同条2項)を連結点とする選択的連結を採用している。本件において、Dの出生時及び本件認知時におけるAの本国は甲国であり、本件認知時のDの本国は乙国である。

⑵ 甲国民法によれば、15歳未満の子の認知についてはその母の同意を要するところ、AはDの母であるCの同意を得ておらず、本件認知は甲国民法上の要件を満たしていない。もっとも、乙国民法上はそのような同意は要件とされておらず、本件認知は乙国民法上の要件を満たしている。

⑶ したがって、本件認知は法29条2項の要件を満たす。なお、乙国法は認知の当時における子の本国法であるから、子の保護を目的とする同条1項後段及び同条2項後段に定めるセーフガード条項は本件では適用されない。

2 次に、本件認知が有効となるためには、本件認知が有効な方式で行われている必要があるところ、これについては法34条により判断する。

⑴ 同条は、親族関係についての法律行為の方式について、当該法律行為の成立について適用すべき法を準拠法とすると定めている。その趣旨は、法律行為の方式の問題は、法律行為の成立の問題と密接な関係を有しているため、成立と方式が同一の準拠法によって規律されることは、法律関係の簡明という観点からも望ましいといえる点にある。

⑵ 前述の通り、本件認知の成立について適用された法は乙国法である。そして、本件認知は乙国において乙国民法に定める方式で行われ、同法の要件を満たしていた。

⑶ したがって、本件認知は法34条により有効な方式と認められる。

3 よって、本件認知は、日本において有効に成立しているといえる。

第2 設問2について

1 Bによる認知無効請求が認められるためには、Bが血縁関係の不存在を理由とする認知無効の主張権者である必要がある。かかる主張権者の判断について、法に定めはないが、認知無効の訴えについてはその主張権者の範囲も含めて認知の成立に関わる問題といえるため、法29条により判断すべきと解する。

2 本件認知無効請求では、AによるDの認知が争われているところ、前述の通り、同条に従えば、本件認知無効請求に適用すべき法は甲国法及び乙国法である。甲国民法によれば、認知社の配偶者は利害関係人として認知の無効を主張することができるが、乙国民法上は認知を受けた子、その直系卑属またはこれらの者の法定代理人のみが認知の無効を主張することができるとされている。そのため、甲国民法によればBは主張権者となるが、乙国民法によればBは主張権者とならない。同条は子の身分取得を容易にすることを目的として選択的連結を採用するところ、かかる趣旨に従えば認知無効請求の請求権者は制限的に解すべきである。そして、甲国民法の規定にしたがった場合でも、セーフガード条項(同条1項後段、同条2項後段)により乙国民法の規定が採用され、結果的に主張権者が制限される。そのため、本件では乙国法を準拠法として判断する。

3 よって、Bは本件認知無効請求の主張権者と認められず、同請求は日本において認められない。

第3 設問3について

1 Dが叔父Eに対し扶養料を請求できるかについては、「親族関係から生ずる扶養の義務」の問題であるから法第3章の規定は適用されず(法43条)、扶養義務の準拠法に関する法律(以下、「扶養義務法」という。)の規定によって判断する。

2 扶養義務法2条1項本文は、扶養権利者の常居所地を連結点として準拠法を定めている。常居所とは、人が相当期間居住することが明らかな地をいう。本件における扶養権利者であるDは、乙国で出生し、その後日本で暮らしていたが、平成28年8月に乙国に帰国し、現地の小学校に通学している。Dが乙国の生活になじんでいることからすれば、乙は今後も相当期間乙国に居住することが明らかといえ、Dの常居所は乙国となる。乙国民法によれば、2親等内の傍系親族間でのみ扶養義務が認められているところ、DとEは2親等内の関係になりから、乙国法によっては扶養義務が認められない。

3 同項によって親族関係が認められない場合、扶養義務法は当事者の共通本国法(同項ただし書)を基準として準拠法を定める。Eは、甲国人であるから、その本国法は甲国法となる。これに対し、Dは平成27年1月に甲国籍を取得しており、乙国籍との二重国籍者である。扶養義務法には法38条のような二重国籍者についての規定はないが、扶養権利者を保護し、扶養が与えられる機会を増やすという扶養義務法の趣旨から、当事者双方が共通の国籍を有する国があれば、その国の法を共通本国法とすべきと解する。したがって、本件ではDとEの共通の国籍である甲国の法を共通本国法とする。

4 よって、日本の裁判所は、DがEに対し扶養料を請求できるかについて、甲国法を適用すべきである。なお、甲国法によっても扶養義務が認められない場合は日本法によって扶養義務を定めることとなるが(2条2項)、甲国民法では4親等内の傍系親族間の扶養義務が認められており、それによればEの扶養義務が認められるから同項は適用されない。

以上

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