平成28年(2016年)予備試験民事実務基礎答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2016年民事実務基礎問題

答案

第1 設問1⑴について

1 弁護士Pのとるべき法的手段

甲土地の所有権移転登記についての処分禁止仮処分の申し立て

甲土地の占有移転禁止仮処分の申し立て

2 理由

⑴所有権移転登記手続請求の被告は現在の登記名義人であるところ、甲土地の所有権移転手続請求の被告はYである。しかし、甲土地の所有権移転登記について、処分禁止仮処分の申し立てをしなければ、Yが第三者に甲土地の登記を移転した場合、Xはその第三者を被告として請求をしなければならないという不都合が生じる。また、抵当権などの新たな権利が設定されてしまうことも防ぐ必要がある。このような事態を避けるため、処分禁止仮処分を申し立てる必要がある。

⑵土地の明渡し請求の被告も現在の土地の占有者であるところ、甲土地の明渡し請求の被告は占有者たるYである。そして、甲土地について、占有移転禁止仮処分の申し立てをしなければ、Yが甲土地を第三者に明け渡した場合に、Xはその第三者に対して請求を行わなければいけなくなる。このような事態を避けるため、占有移転禁止の仮処分を申し立てる必要がある。

第2 設問1⑵について

被告は、原告に対し、甲土地について、真正な登記名義回復を原因とする所有権移転登記手続きをせよ。

被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。

第3 設問1⑶について

イ Xは、平成27年6月1日、Aから甲土地を買い受けた。

ウ Yは、甲土地を占有している。

第4 設問2について

1 主張すべき抗弁の内容

対抗要件具備による所有権喪失の抗弁

2 理由

⑴Aは本件第1売買契約によりXに、本件第2売買契約によりYにそれぞれ甲土地を売り渡しており、甲土地の二重譲渡が生じている。そのため、XおよびYが所有権を主張するためには登記を具備する必要があるところ(177条)、Yが登記を備えたことにより、Yが確定的に甲土地の所有権を取得するため、XはYに対し甲土地の所有権を主張できなくなる。

⑵そうだとすれば、Yが甲土地の所有権移転登記を具備したという主張はXの甲土地の所有権に基づく所有権移転登記手続き請求と明渡し請求の法律効果の発生を障害するものであるから、かかる事実の主張は抗弁として機能する。

第5 設問3について

1 エに入る具体的事実

Yは、Xが甲土地を買い受けたことを知っていた。

2 理由

⑴事実エ、オによって、主張される再抗弁は背信的悪意者の再抗弁である。民法177条は、自由競争の範囲内で取引の安全を図る規定であるところ、相手方の登記の不存在につき悪意であっても「第三者」として保護される。もっとも、相手方の登記の不存在を主張することが信義則(1条2項)上許されない背信的悪意者は「第三者」として保護されないと解する。したがって、Yが背信的悪意者に当たるとの主張は対抗要件具備による所有権喪失の抗弁の法律効果の発生を障害し、請求原因の法律効果の発生を復活させるものであるから、再抗弁として機能する。

⑵そして、背信的悪意者の再抗弁の要件事実は、相手方の悪意と背信性を基礎づける事実の主張である。背信性は規範的要件であるため、その主張には相手方の背信性を基礎づける具体的な事実である評価根拠事実を主張する必要があり、これはオに当たる。そのため、エにはYが、Xが甲土地を所有したことについて悪意であることを示す事情が入り、それが上記事実に当たる。

第6 設問4について

1  Aは、本件第2売買契約の際に、甲土地をすでにXに売却していることをYに対し説明していて、Yはそれでもかまわないといって甲土地を購入している。その際に、Yは甲土地を売却して利益が生じた場合にはその3割を謝礼としてAに渡す旨の念書を作成している。弁護士Qは本件念書の成立の真正を認めており、本件念書はYの意思に基づき作成したものと推定される。そうだとすれば、Yは、甲土地がすでにXに売却されていることを知りながら、これを誰かに転売し、利益を上げる目的を有していたといえる。

そして、Yは実際にXに対して甲土地の購入を持ち掛けている。甲土地の時価は1000万円程度であり、Yも契約時にそれを知っていたところ、YはXに対し時価の2倍に当たる2000万円での購入を持ち掛けている。Xが甲土地を買い受けたことを、Yは本件第2売買契約時に知っていた以上、Yが甲土地を買い受けたことを知ったらXが明渡しを要求してくることは予想できたであろうから、Yはその機会を利用して甲土地を時価の2倍の値段でXに買い取らせることで利益を得ようという目的を本件第2売買契約時に有していたのだといえる。

2 他方、Yは建築業者で甲土地を資材置き場として使用していることがYにとって有利な事情となりそうである。しかし、甲土地におかれている資材は大した分量ではなく、それ以外にも運搬用のトラックが2台置かれているにすぎない。そうだとすれば、Yは甲土地を資材置き場として使用しているのではなく、資材置き場として使用しているように見せかけているだけということができ、上記事実によって、YがXに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していなかったことを推認させる事情とはなりえない。

3 以上のような事実から、「Yは、本件第2契約の際、Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していた。」との事実が認められる。

                               以上

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