平成28年(2016年)予備試験憲法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2016年憲法問題

答案

第1  Xの立場からの憲法上の主張

1 Xは自らの方針に沿わない見解の表明を強制されない自由を有しているところ、本件条例は、助成の要件として、本件誓約書の提出を義務付けており、Xのかかる自由を侵害している。そのため、本件条例の合憲性を検討する。

2 憲法21条1項の表現の自由は、自己の考えを他者に発信することのみを内容とするのではなく、意に沿わない見解の表明を強制されないという消極的表現の自由も含む。そのため、上記自由は同項によって保障される。

3 そして、助成の要件として法律婚を積極的に推進するとの立場を表明させる本件誓約書の提出を義務付ける本件条例は、結婚の形にこだわらない活動方針を採用するXの意に沿わない意見を表明させる点において上記自由を制約している。

4 多数の情報に溢れる現代社会においては、情報の発信だけでなく、自己の方針に沿わない情報への支持を表明しないことも個人の人格的価値の発展・向上につながり、上記自由は重要であるといえる。また、自己の意思に沿わない見解を表明させる本件誓約書の提出は、上記自由に対する強力な制約である。そして、これにより、XはA市からの助成を受けられなくなるという重大な不利益を被っている。そこで、必要最小限度の制約であるといえる場合に限り許される。

5 これを本件についてみる。本件誓約書を提出させることの目的は、法律婚を推進することによって成婚数を上げ、もって少子化による人口減少に歯止めをかけることにある。

しかし、事実婚の数が増加することによっても成婚数は増加するのであり、成婚数の増加のために法律婚を推進させることに合理性はない。また、NPO法人はその目的に応じて様々な方針を持つことが許されている団体であるところ、このような団体に対し一律に法律婚を推進させる誓約書を提出させることは上記自由に対する過度の制約であると言わざるを得ず、助成を受けられなくなるという不利益は重大であるといえる。

6 したがって、必要最小限度の規制とはいえず、違憲である。

第2 想定される反論

1 表現の自由は、自己の思想・心情を外部に発信する積極的表現の自由のみを定めるにすぎず、消極的表現の自由は憲法21条1項によっては保障されない。

2 仮に消極的表現の自由が憲法上保障されるとしても消極的なものにすぎない以上、重要であるとは言えない。また、助成が受けられなくなることは上記自由に対する直接的な制約とはいえず、本件誓約書の提出の義務付けは制約の程度として軽微である。そこで、相当程度の制約が許される。

3 法律婚によって、行政からの様々な支援を受けることができ、これによって家庭の経済的安定が得られ、子供を産みやすく育てやすい環境が形成されるから、法律婚を推進させることは上記目的達成のため効果的である。また、助成を受けられなくなることが直接的な制約ではない以上、過度の制約とはいえない。

4 したがって、相当程度の制約といえ、合憲である。

第3 自身の見解

1 確かに、意見を表明しないという消極的活動は表面上表現活動とは言いがたく、表現の自由として保障されないとも思える。しかし、本心に沿わないものであってもそれが外部に表明された場合、表現者本人の意見として扱われることになる。そうすると、本人の意思尊重のためには意見を外部に表明するだけでなく、表明しないことも表現活動として憲法上保護されるべきである。そのため、消極的自由も憲法21条1項によって保障され、上記自由もその一内容として保障される。

また、Xは法人であるが、法人であっても権利の性質上可能な限り人権の享有主体性が認められる。そして、法人であっても、表現活動を観念できないわけではないから、上記自由は法人であるXにも保障される。

2 そして、自らの方針に沿わない見解を表明させる本件誓約書の提出は、上記自由に対する制約になる。

3 表現の自由は、精神的自由の中枢を占めるものとして重要な権利であり、個人の人格的価値の発展に資する重要なものである。もっとも、反論のとおり助成が受けられなくなることは直接的な制約とは言えないから制約の程度は強度とはいえず、またどのような条例を作成するかについては専門的技術的判断が必要となるため、行政庁に裁量が認められる。そこで、①目的が重要であり、②手段が目的との関係で効果的で過度でない場合には当該制約は合憲であるといえる。

4 これを本件についてみる。

⑴ 本件誓約書の提出の義務付けの目的は、法律婚の推進により、成婚数を増加させ、もって少子化による人口減少に歯止めをかけることにある。少子化による人口減少は現代の日本にとって重要な課題であり、未婚化・晩婚化を克服し、安心して家庭や子供を持つことができる社会を実現することは、福祉主義(25条以下)の要請に沿うものであり、上記目的は重要といえる(①充足)。

⑵ 次に、確かに法律婚により、経済的な支援が受けられるから、子供を産みやすく育てやすい環境の実現につながり、上記目的達成のため効果的とも思える。しかし、法律婚した夫婦が必ずしも子供を持つわけではなく、また事実婚の増加によっても、成婚数は増え、少子化を解消させる可能性はあるのであり、法律婚の推進が上記目的達成のため必ずしも合理的であるとは言えない。

また、本件誓約書は法律婚を推進することを直接的に表明させるものであり、本件誓約書とは異なる見解を持つ団体にとっては、本件誓約書の提出は過度の規制と言わざるを得ない。

したがって、実質的関連性は認められない(②不充足)。

5 よって、本件条例が本件誓約書の提出を義務付けたことは憲法21条1項に反し、違憲である。

                                   以上

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