平成28年(2016年)予備試験行政法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2016年行政法問題

答案

第1 設問1について

1 本件処分の取消訴訟の継続中に営業停止期間が満了した後に問題となる訴訟要件は、訴えの利益(「回復すべき法律上の利益」、行政事件訴訟法(以下、「行訴法」という)9条1項かっこ書)である。

2 それでは、Xはどのような主張を行うべきか。

⑴そもそも、訴えの利益とは、当該処分を取り消す必要性のことである。そして、訴えの利益は、当該訴訟を行うことが紛争の解決のために合理的かを判断するための訴訟要件であるから、訴えの利益は、当該処分を取り消すことにより、原告の具体的利益が回復可能な場合に認められると解する。

⑵これを本件についてみる。

ア Y県からの反論として、本件処分はXに対し、B店にかかる飲食店の全部の営業を3カ月間という一定期間において停止させるものであり、停止期間が満了すれば、Xは再び営業を開始することができるのだから、停止期間の満了により、本件処分の法的効力は消滅し、本件処分の取消により、Xの具体的利益は回復できず、訴えの利益は認められないとの反論が想定される。

イ 確かに、営業停止期間が満了すれば、Xは再び営業を行えるのであり、期間が満了した場合、本件訴訟に訴えの利益は認められないとも思える。

しかし、仮にB店で再び未成年者に飲酒が提供され再度の営業停止処分を受ける場合、本件基準2の定める加重規定が適用されることになる可能性が高い。また、本件処分が本件基準3⑵ア(ア)の最近3年間に同一の処分事由により行政処分に課せられたことに該当したり、同一処分を再び受けたことにより(オ)の改悛の情がみられないといった加重規定に該当する可能性があり、再度の営業停止処分は本件処分よりはるかに重い処分になる可能性が高い。そうだとすれば、停止期間の満了により、営業を停止させるという効力は消滅したとしても、再度の処分の過重事項としてなお付随的な効力が残存しているから、Xには当該処分を取り消す必要性が認められる。

ウ したがって、営業停止期間が満了しても、訴えの利益が認められる。

3 Xは上記のような主張を行うべきである。

第2 設問2について

1 手続上の違法について

⑴本件処分はB店の営業を3カ月間停止することを命ずるものであり、「不利益処分」(行政手続法(以下、「行手法」という)2条4項柱書)にあたる。そのため、本件処分を行うためには聴聞手続が必要となるところ(法41条1項)、本件では聴聞手続きを行っており、この点に手続上の違法はない。

⑵もっとも、本件処分をなすにあたっては、理由の提示が必要となるところ(行手法14条1項)、本件処分のかかる処分決定通知書は理由の提示として不十分ではないか。理由の提示の程度が問題となる。

ア この点、同項の趣旨は、処分庁の判断の慎重・合理性を担保し、その恣意を抑制することと、処分を受けたものに処分の理由を知らせて不服申し立ての便宜を図ることにある。このような趣旨にかんがみ、理由の提示の程度として、いかなる事実関係の基づきいかなる法規を適用して当該処分がなされたかを被処分者がその記載自体から了知できる程度であることが必要であると解する。

イ これを本件についてみる。本件処分のかかる処分決定通知書には根拠法令及び処分の理由が記載されており、理由の提示として十分であるとの反論が想定される。

しかし、本件処分は3か月の営業停止という処分であるところ、なぜ処分が3カ月間という期間になったかについての加重・軽減事由について記載がなくいかなる事実関係につきいかなる法規を適用して本件処分が行われたかがその記載自体から了知しうるとはいえない。

ウ したがって、理由の提示として不十分である。

⑶そして、行手法1条は同法に定める適切な手続きに従って処分を受けることを保障していると解されるから、同法の手続きに違反した場合はかかる違反が当該処分の取消訴訟における違法事由になると解する。よって、上記違反は本件処分の取消事由となる。

(4)Xは上記のような主張をすべきである。

2 実体法上の違法について

⑴本件処分については行政裁量の逸脱・濫用があり、それが違法事由に当たるとの主張をXはすべきである。

⑵本件処分の根拠規定は法34条2項である。同項は「できる」との文言を用いている。また、「少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認められるとき」といったあいまいな文言を用いており、専門的技術的な判断が求められる。そのため、行政庁に要件裁量、効果裁量が与えられているといえる。

もっとも、法34条2項の処分は私人が本来自由に行える営業の自由(憲法22条1項参照)という重要な憲法上の権利を制約するものであり、その裁量は広範なものとはいえない。そのため、処分の結果のみならず処分の判断過程も考慮して、考慮すべき事項を考慮してない等により、処分の結果が社会通念上著しく不当といえる場合に行政裁量の逸脱・濫用が認められ、取消訴訟における違法事由になると解する(行訴法30条)。

⑶これを本件についてみる。本件処分は本件基準に言うBランクの処分に当たり、Bランクの処分の基準期間は3か月であるから行政庁の裁量の逸脱・濫用は認められないとの反論が想定される。

しかし、Xが最近3年間に処分事由に係る法令違反行為を行ったというような事情はなく、本件処分の軽減事由である本件基準2⑵イ(ウ)に該当する。また、Dらの飲酒行為があった後、B店では未成年者と成年者とでフロアを分けるといった対策を実施しており、「具体的な営業の改善措置を自主的に行っている」から本件基準2⑵イ(エ)に該当する。このように、本件処分をするにあたっては、軽減事由があるにもかかわらずこれを考慮せず標準的な期間である3か月の営業停止を命ずる処分を行っており、考慮すべき事項を考慮しておらず、比例原則に反し、その結果本件処分は社会通念上著しく不当な処分であるといえる。

(4)したがって、本件処分には行政裁量の逸脱・濫用があり、取消訴訟の違法事由となる。

(5)Xは上記のような主張をすべきである。

以上

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