平成27年(2015年)予備試験商法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2015年商法問題

答案

第1 設問1小問⑴について

1 Aの責任

 X社の代表取締役であり「役員」たるAは、Eに対し、会社法429条1項の損害賠償責任を負わないか。

⑴まず、「職務を行うについて…重大な過失」があるといえるか。

ア この点について、同項の趣旨は株式会社が経済社会において重要な地位を占めているところ、その活動が取締役等の役員等の業務執行に依存していることから役員等の責任を加重し第三者を保護する点にある。かかる趣旨から、重大な過失は任務懈怠について存すれば足りると解する。

イ Aは、取締役会を構成する一員(362条1項)として、他の取締役の職務の執行を監督する義務を負う(同条2項2号)ところ、本件では弁当事業本部長であるCの職務について、食中毒被害が発生しないよう、Cに適切な指示等を行う義務を負っていた。Aは、Cが消費期限切れの弁当の食材の一部を再利用するよう、弁当製造工場の責任者Dに指示していたことをDから聞いていた。消費期限切れの食材を口にすれば、食中毒により消費者の生命・身体の安全が害される危険があることからすれば、AはCに対しその発生を防止するようCに指示すべきであったといえる。ところが、Aは、Cから上記事実について説明を受けた上で、「衛生面には十分気をつけるように」と述べるにとどめており、Aに任務懈怠が認められる。

ウ そして、「再利用する食材は新鮮なもののみに限定しており、かつ、衛生面には万全を期している」というCの説明を漫然と信じたAには、任務懈怠に対する重大な過失があるといえる。

⑵そして、再利用した食材に大腸菌が付着していたことを原因とする食中毒が「第三者」であるEらに発生し、治療費等の「損害」が生じている。これは、X社の弁当製造工場が、検査をせずに食材を再利用した弁当を、Eらに提供したことにより生じているから、上記任務懈怠と損害との間に因果関係があるといえる。

⑶よって、Aは上記損害賠償責任を負う。

2 Cの責任

 X社の取締役であり「役員」たるCは、Eに対し、429条1項に基づく損害賠償責任を負うか。

⑴Cは、X社の弁当事業本部長の地位にあり、同社の弁当製造工場において、食中毒を発生させないように指示等を行う善管注意義務(330条、民法644条)を負っていた。しかし、消費期限切れの食材の一部を再利用するDに指示するにあたり、食中毒の発生を防止する措置を行っていない。そのため、Cには上記注意義務に反する任務懈怠がある。さらに、検査等を行うことなく漫然と「衛生面には万全を期している」と考えており、上記任務懈怠につき重大な過失があるといえる。

⑵そして、上記の通り、「第三者」であるEに対して「損害」が発生しており、任務懈怠と損害との間に因果関係があるといえる。

⑶よって、Cは上記損害賠償責任を負う。

第2 設問1小問⑵について

上記の通り「役員」にあたるA及びCは、Bに対し429条1項に基づく損害賠償責任を負うか。

1前述の通り、A及びCに任務懈怠が認められ、任務懈怠に対する重大な過失もある。

2では、株主であるBは「第三者」にあたるか。

⑴この点について、株主に対する間接損害については、株主代表訴訟により救済することができるから、直接損害を被った株主のみが「第三者」に含まれると解する。

⑵本件では、A及びCの任務懈怠によりX社がEらに対する損害賠償を負うという損害を被り、その全額を賠償できなくなった同社が破産手続を開始している。これにより、同社の株式が無価値になり、株主であったBが損害を被っている。そのため、Bに生じる損害は間接損害であるといえる。

⑶したがって、Bは「第三者」に当たらない。

3よって、A及びCは、上記損害賠償責任を負わない。

第3 設問2について

1 X社と別人格である以上、Y社は、原則としてX社のEらに対する損害賠償の責任を負わない。

2 しかし、Y社は、X社のホテル「事業を譲り受け」同事業を承継しているため、22条1項により上記責任を負わないか。

⑴まず、X社とY社はともに「甲荘」という文字を使用しておらず、商号の続用がない。そのため、同項を直接適用することはできない。

⑵そうだとしても、Y社は、X社が用いていた「甲荘」という名称を引き続き利用しているため、同項の類推適用によって上記責任を負わないか。

ア この点について、同項の趣旨は、商号の続用がある場合には、同一事業主体により事業が継続しているものと信じたり、事業主体の変更があったけれども当該事業によって生じた債務については事業を承継した会社に承継されたと信じる権利外観法理にある。そして、名称であっても同一のものを使用している場合には外観への信頼が生じうるので同項が類推適用されると解する。

イ 本件では、X社が約30年に渡り「甲荘」という名称を使用してホテル事業を営んでおり、「甲荘」という名称がX社を表示するという信頼が世間一般に定着していた。そして、Y社は、その名称を継続して使用している。しかし、Eらに対してX社が負う責任は高級弁当の製造販売業から生じているところ、Y社が承継したのは弁当の販売製造業ではなく、ホテル事業である。また、ホテル事業に関連して高級弁当の製造販売が行われていた事実がない。そのため、Eらに対するX社の責任は「事業によって生じた債務」に当たらない。

ウ したがって、類推適用によってもその責任は認められない。

3 よって、Y社は、Eらに対するX社の損害賠償債務を弁済する責任を負わない。

以上

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