平成27年(2015年)予備試験憲法答案

武藤遼のプロフィール

プロフィール

初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

問題はこちら

2015年憲法問題

答案

第1 設問1

1 結論

設問の見解は妥当だと考える。

2 理由

⑴ 76条3項は、裁判官は、「憲法及び法律にのみ拘束される」と定める。そして、99条では憲法尊重擁護義務が定められており、裁判官も「憲法を尊重し、擁護する義務」を追っている。これらの規定からすれば、裁判官は司法権の行使において、憲法に拘束されこれを尊重しなければならないことになる。

⑵ そして、憲法98条は、憲法に反する法律や命令は「効力を有しない」と規定し、これは憲法の最高法規性を定めるものである。上記の通り、裁判官が憲法に拘束されこれを尊重する義務を負っていることからすれば、裁判官は98条1項に基づいて憲法に反する法律の効力を否定する必要がある。すなわち、これらの条文で示された内容を実行的なものにするためには、裁判所が法律や命令等の憲法適合性を判断する必要があり、これは違憲審査権に他ならない。

⑶ したがって、81条によらずとも違憲審査権を認めることは可能であるといえ、本問の見解は妥当であるといえる。

第2 設問2

1 Aの主張

 Aとしては、まず、条約は一般に違憲審査の対象となると主張する。そして、本条約の内容は、日本の食料自給率を世界的に見ても異常な低水準に引き下げるものであり、国家の裁量権の逸脱濫用にあたるものとして、本条約について憲法判断を行うべきであると主張する。

2 国の主張

  これに対し、国としては、条約は憲法より上位に位置づけられるため、一般に条約は違反審査の対象とならないと主張する。仮に、条約一般が違反審査の対象となるとしても、本条約については憲法判断を行うべきでないと主張する。

 3 私見

⑴ 条約が違憲審査の対象となるかについて

確かに、違憲審査権を定める81条がその対象として条約を列挙していないことや98条1項に条約が明示されていないこと、同条2項が国際協調主義を定めていることからすれば、条約は憲法に優位し、違憲審査の対象にならないとも考えられる。

しかし、それでは憲法改正について厳格な手続が定められているにもかかわらず、そのような厳格な手続によらずとも条約によって憲法改正がなされてしまうという不都合が生じる。また、条約締結権は憲法に根拠を有するものであって、条約の締結及び国会の承認は憲法の枠内においてのみ許容されるものである。

したがって、条約は憲法に優位せず、条約も違憲審査の対象になると解する。

⑵ 本条約について憲法判断を行うべきか

ア 本条約の内容については、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為だとして、裁判所の審査権の範囲外にあるとも考えられる。しかし、本条約の目的は貿易摩擦の解消という経済的なものである。そのため、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為とはいえない。

イ そうだとしても、貿易摩擦は国家間の経済的取引を問題とするものであり、貿易摩擦の解消のためどのような施策を行うかは国家に裁量が認められているということができる。そうすると、条約の内容が裁量権の逸脱濫用に当たりうる場合にのみ、裁判所は本条約について憲法判断を行うべきといえる。

   これを本件についてみる。内閣が本条約上の義務を履行する措置を講じた結果、X国からの輸入量が非常に増加し、日本の食料自給率が20パーセントを下回るまでになることが予想される状況になった。食料自給率は、世界的に見ても60から70パーセントが平均であり、先進国であっても20パーセントを下回る国はないことからすれば、上記予想は異常な事態であるといえ、国益を損なう可能性がある。そうだとすると、本条約の内容について、裁量権の逸脱濫用が認められうるといえる。

ウ したがって、本条約について、憲法判断を行うべきである。

以上

メルマガやってます

司法試験、予備試験合格のために
さらに詳しい情報が知りたい方はメールマガジンに登録してください。
もちろん無料です。
メルマガでは、
より具体的な話をしております。

無料なので、
興味がある方は
ぜひご登録ください。

大好評いただいていて、
メールマガジンでしか流さない話もよくしてますし、
メルマガ限定企画も流しますし、
ここまで読んでいただいた方は、
登録して損することはないかと思われます。

下記から登録できます。
武藤遼のメールマガジンはこちら