平成27年(2015年)予備試験刑事訴訟法

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2015年刑事訴訟法問題

答案

第1 設問1について

1 ①から③の写真撮影は、いずれも甲方という個人の住居内で行われたものであり、甲の黙示の意思に反しているといえる。そして、甲のプライバシー権(憲法13条後段)という重要な権利を侵害している。また、写真撮影は人、物、場所の形状を五感の作用によって認識する処分に当たるので、検証の一内容をなすといえる。そのため、上記写真撮影は「強制の処分」たる検証にあたり、原則として、検証令状(218条1項)が必要である。

2 そうだとしても、捜索・差押えの実施に付随する「必要な処分」(222条1項・111条1項)として許されないか。

⑴この点について、適正手続(憲法31条)の見地から、「必要な処分」とは、①捜索差押えの目的を達成するため必要であり、かつ②社会的にも相当と認められる処分をいうと解する。

⑵以下、①から③の写真撮影それぞれについて検討する。

ア ①の写真撮影について

①は、呈示された捜索差押許可状を乙が見ている状況を撮影したものである。捜索差押えの執行に際しては、処分を受ける者に対し、捜索差押許可状を呈示しなければならない(222条1項・110条)。①の写真撮影は、甲方に同居している乙への令状の呈示が適法になされたことを証明するために行われたものであり、捜索差押手続の適法性を担保するために必要であるといえる。また、乙が見ている状況を撮影するという方法は、社会的にも相当と認められる。したがって、「必要な処分」にあたる。

イ ②の写真撮影について

 ②は、血の付いたサバイバルナイフ及び運転免許証を撮影したものである。甲方には乙も同居していることから、サバイバルナイフを差し押さえただけでは、サバイバルナイフが甲のものか乙のものかわからなくなる可能性がある。②の写真は、サバイバルナイフが甲の運転免許証と同じ場所から発見されたものであることを示しており、証拠の証拠価値を保存するために必要であったといえる。また、方法も社会的に相当なものである。したがって、「必要な処分」にあたる。

ウ ③の写真撮影について

③は、机の下段の引き出しから発見された注射器5本及び空のビニール袋1枚を撮影したものである。捜索差押えにかかる被疑事実はVに対する傷害であり、捜索差押許可状には差し押さえるべき物としてサバイバルナイフのみが記載されている。③の写真に収められた注射器とビニール袋は差し押さえるべき物として記載されておらず、本件被疑事実との関連性を有しない。そうだとすれば、証拠の証拠価値を保存するために必要とはいえない。したがって、「必要な処分」にあたらない。

3 よって、①と②の写真撮影は適法であるが、③の写真撮影は令状主義(憲法35条、刑事訴訟法218条1項)に反し、違法である。

第2 設問2について

1 Pの作成した書面(以下、「本件書面」という)の説明文部分は、伝聞証拠(320条1項)にあたり、証拠能力が否定されないか。

⑴まず、本件書面が伝聞証拠に該当するか。

ア この点について、供述証拠は知覚、記憶、叙述の過程を経て証拠化されるところ、各過程には誤りが介在するおそれがあるため、反対尋問(憲法37条2項前段参照)によってその正確性を吟味・確認する必要がある。これに対し、伝聞証拠は反対尋問をせずに証拠化されるため、その正確性を担保できない。そのため、伝聞証拠は原則として証拠能力が否定される。

かかる伝聞法則の趣旨にかんがみ、伝聞証拠に当たるか否かは、供述内容の正確性・真実性について反対尋問等による吟味が要請されるか否か、すなわち、要証事実との関係で相対的に決せられると考える。そこで、伝聞証拠とは、公判期日外の供述を内容とする証拠で、その供述内容の真実性を立証するために提出・使用される証拠をいうと解する。

イ これを本件についてみる。甲は、公判においてサバイバルナイフが乙の物であるとして犯行を否認しているところ、Rは、サバイバルナイフが甲の運転免許証と同じ場所から発見されたことを示して、サバイバルナイフが甲の所有物であることを立証するために本件書面を使用しようとしている。そうだとすれば、要証事実は、サバイバルナイフと甲の運転免許証が同じ場所に保管されていたことであり、Pの説明文部分の内容の真実性が問題となる。

ウ したがって、Pの説明文部分は伝聞証拠にあたる。

⑵Pの説明文部分が伝聞証拠であっても、321条1項3号の要件を満たせば例外的に証拠能力が認められるが、同号の要件のうち供述不能の要件が満たされない。

⑶よって、Pの説明文部分には証拠能力が認められない。

2 では、本件書面のうち写真部分については証拠能力が認められるか。

⑴この点について、写真は、機械的操作によって作成されるものであり、知覚、記憶、叙述のいずれの過程においても、誤りの介在する余地がない。そのため、反対尋問等による正確性の吟味は不要であり、写真は非供述証拠として伝聞証拠にあたらないと解する。

⑵したがって、本件書面の写真部分については伝聞証拠にあたらず、証拠能力が認められる。

以上

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