平成27年(2015年)予備試験刑事実務基礎答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2015年刑事実務基礎問題

答案

第1 設問1

1 小問⑴について

 検察官が取調べを請求した証拠の開示(316条の14第1項)を受けた弁護人は、当該証拠について意見を述べる法令上の義務がある(316条の16第1項)。

2 小問⑵について

 本件では、Vは、ナイフで刺されているところ、甲第4号証のナイフは、犯行現場付近に落ちていたものである(甲第3号証)。そして、同ナイフに付着していた人血のDNAは、Vのものと一致していた(甲第6号証)。そうだとすれば、同ナイフは本件犯行の凶器である可能性が高く、事件との関連性がある。

 そして、このナイフの柄から採取された指紋はAの右手母指の指紋と一致しており(甲第5号証)、Aとの関連性もある。

 これらの事実から、飛び出しナイフについて関連性が認められる。検察官はこのように釈明すべきである。

3 小問⑶について

⑴捜査報告書は間接証拠にあたる。

⑵直接証拠とは、要証事実を直接証明するのに用いる証拠であり、間接証拠とは、要証事実を推認させる事実(間接事実)を証明するのに用いる証拠をいう。飛び出しナイフにAの右手母指の指紋がついていた事実は、Aがこのナイフを手に持っていたという間接事実を証明するにとどまり、AがVをこのナイフで刺したという事実(要証事実)を直接証明することはできない。したがって、甲第5号証の捜査報告書は、間接証拠にあたる。

第2 設問2について

1 まず、89条各号の除外事由があるかについて検討する。

 本件公訴事実は傷害罪(刑法204条)で、法定刑は15年以下の懲役または500万円以下の罰金であるから、1号には該当しない。また、Aには前科前歴がないから、2号には該当せず、常習性もないから、3号にも該当しない。そして、B子の証言はAの犯人性を証明する証拠となる可能性がある。しかし、Aは、V及びB子といったAの被告事件に関する証人となる者に接触しない旨の誓約書を作成している。そのため、罪証隠滅の危険はなく、4号にも該当しない。同様に、誓約書の存在から、証人威迫の可能性もないといえ、5号にも該当しない。さらに、Aの身柄については、Aの母親が身柄引受書を作成しており、Aの住居が定まるといえるので、6号にも該当しない。したがって、同条各号該当事由はない。

2 次に、裁量保釈(90条)について検討する。

本件では、Aは、母親の日常生活を手助けするため、長期間不在にするわけにはいかないという事情がある。そして、Aを引き続き雇用するというC作成の上申書の存在により、Aの勤務先(定職)が定まったといえる。この事実からすれば、Aが容易に逃亡することは想定し難く、保釈を行なっても公判廷への出頭を期待できるといえる。そのため、保釈を認めるべきである。

3 以上より、90条による裁量保釈を認めるべきである。

第3 設問3について

1 小問⑴について

 伝聞供述とは、公判廷外の供述であって、要証事実との関係でその供述内容の真実性が問題となる供述をいう。本件の要証事実は、Aが①通りの発言をしたことであり、供述の内容の真実性は問題とならない。そのため、①伝聞供述にはあたらない。

 したがって、検察官は、異議に理由がないとして、異議を棄却する決定(刑事訴訟規則205条の5)をすべきとの意見を述べるべきである。

2 小問⑵について

 本件の要証事実は、AがVをナイフで刺した事実である。この事実については、発言の内容が真実でなければ、Aが本当にVを刺した事実の存在を推認することはできず、要証事実との関係で内容の真実性が問題となる。したがって、②の事実は、伝聞供述にあたる。

しかし、かかる供述はVを刺したという自己に「不利益な事実の承認を内容」とするものであり、Aは恋人のB子に自ら任意でかかる供述をしている。そのため、324条1項・322条1項の要件を充足し、証拠能力が認められる。

したがって、検察官は、検察官は、異議に理由がないとして、異議を棄却する決定をすべきとの意見を述べるべきである。

第4 設問4について

1本件において、Aは自らが犯人であることを弁護人に話している。それにもかかわらず、Aの弁護人は、Aが無罪である旨の弁論をしている。

 弁護人は、真実を尊重し職務を行う義務を負う(真実義務、弁護士職務基本規定5条)。弁護人は依頼者の利益のため最善の弁護活動に努める義務があり(46条)、また、弁護人の心証が正しいとは限らないことから、弁護人は消極的真実義務を負うにとどまり、積極的真実義務までは負わないと解する。そのため、弁護人が無罪弁論を行うことは5条に反するものではない。

2 Aの弁護人の行為には、上記のような弁護士倫理上の問題がある。

以上

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