平成26年(2014年)予備試験刑事実務基礎答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2014年刑事実務基礎問題

答案

第1 設問1について

1 条文上の根拠は、刑事訴訟規則208条3項である。

2 求釈明を求める事項としては、本件証明予定事実記載書の第1の3に記載にある、AとBとの「強盗の共謀」の具体的内容を明確にすべきということが考えられる。

3 本件は、強盗致傷罪の共謀共同正犯の事件である。そうすると、共謀の具体的内容は、Aの防御にとって重要となるが、証明予定事実には、共謀された強盗の行為態様につき何ら記載がない。そこで、上記求釈明の要求が必要になる。

第2 設問2について

1 開示を請求する類型証拠としては、①V、Bの未開示の捜査段階における供述録取書等のすべて、②Vの負傷がバットでの殴打によるかどうかの鑑定書、③Aの未開示の身上・経歴関係以外の供述録取書等の全てが考えられる。

2 明らかにしなければならない事項

⑴ 類型証拠開示(刑事訴訟法316条の15)を請求するにあたっては、i同条1項各号の類型該当性、ii特定の検察官請求証拠の証明力を判断するための重要性、iii証拠開示の必要性の程度と開示による弊害の内容及び程度とを比較考慮して判断される相当性を明らかにしなければならない(同条1項前段、2項参照)。

⑵ 以下、上記①〜③についてそれぞれ検討する。

ア ①について

V、Bは、検察官が甲第4、5号証によって「取調べを請求した供述録取書」「の供述者」であり、検察官は、V、Bの供述に沿った事実の立証を企図しているから、同号証は、「第326条の同意がなされない場合」「検察官が証人として尋問を請求することを予定している者」といえ、5号ロの類型に該当する(i充足)。

次に、同号証の証明力の判断のためには、①の開示を受け、供述過程に変遷がないか等を検討することが重要である(ii充足)。

そして、同号証は、Bの犯行態様を証明するための重要な証拠であり、その証明力の判断のための①の開示は、防御のための必要性が高い。他方で、この開示による弊害は小さいため、相当性も認められる(iii充足)。

イ ②について

まず、②は、法321条4項に規定する書面といえるため、4号の類型に該当する(i充足)。

次に、甲第4号証の証明力の判断のためには、②の開示を受け、バットによる負傷というVの供述が客観的な鑑定結果によって裏付けられるかを確認することが重要である(ii充足)。

 そして、(iii)については、①と同様である。

ウ ③について

まず、③は同条1項7号に該当する(i充足)。

次に、乙第1号証は、身上・経歴関係のみが立証趣旨なので、乙第2号証の証明力の判断のためには、③を開示し供述過程等を検討することが重要である(ii充足)。

そして、(iii)については、①②と同様である。

⑶ よって、上記事項を明らかにする必要がある。

第3 設問3について

1 検察官は、Aが強盗致傷罪の共同正犯(刑法60条前段、240条前段)の罪責を負うことを立証しようとしているといえる。これに対し、弁護人は、①Aの罪責は、窃盗罪(刑法235条)に過ぎず、②共犯形態についても共同正犯ではなく幇助犯に過ぎないという主張をすべきである。

2 ①の理由

⑴ Bの行為には、Vの反抗抑圧に向けられた暴行の存在が認められないため、Bは窃盗罪の罪責しか負わない。そうすると、Aが強盗致傷罪の罪責を負うことはない。

⑵ 仮に、Bの罪責が強盗致傷罪であったとしても、AB間の共謀は窃盗罪の共謀に過ぎない。そのため、強盗致傷罪の罪責を負うことはない。その上、Aは、Bの暴行を想定しておらず、窃盗の範囲でしか犯罪を認識・認容していないため、Aに強盗の故意はなく、Aは窃盗罪の罪責しか負わない(刑法38条2項)。

3 ②の理由

⑴ 共同正犯と幇助犯は、実質的に自己の犯罪として行ったか否かによって区別される。本件では、Aは、運転役に過ぎず、重要な役割を果たしたとはいえないから、実質的に自己の犯罪として本件犯罪を行ったとはいえない。そのため、幇助犯が成立するにとどまる。

⑵ また、Aは、分け前がもらえるかを知らないなど自己の犯罪として本件犯罪を行う認識を欠いており、正犯意思は認められない。この点からも、Aは幇助犯にとどまる。

第4 設問4について

1 本件で、検察官は、Bが新たにした供述(以下「本件供述」という)と同様の証言を得るべくBを証人尋問することが考えられる。しかし、Bの供述拒否の可能性がある。また、Aを気遣い、供述を拒んでいる以上、Bの新たな調書の作成も困難である。

2 そこで、検察官は、Bの本件供述を行った公判調書を証拠調べ請求(法298条1項)すべきである。

⑴ これに対し、弁護人は、当該調書の証拠採用に不同意とした上で(法326条1項)、法316条の32第1項により、この請求が認められないと主張すると考えられる。

これに対して、検察官は、本件供述は、公判前整理手続終了後に初めてBが自己の公判で供述したものであるから、「やむを得ない事由が」認められると反論すべきである。

⑵ 次に、弁護人は、本件公判調書は、伝聞証拠であり証拠能力が否定される法(320条1項)と主張すると考えられる。

これに対して、検察官は、法321条1項1号の伝聞例外に該当すると反論すべきである。具体的には、Bの証人尋問を行い、Bが証言を拒絶した場合には供述不能の要件を、本件供述と異なる内容の証言をした場合には供述相反性の要件を満たすと主張していくべきである。

以上 

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