平成26年(2014年)予備試験刑法答案
武藤遼のプロフィール
初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]
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答案
第1 甲の罪責について
1 甲が詐欺目的でVの待つホテルの一室に入った行為は、管理権者Vの意思に反する出入りとして「侵入」に当たるため、かかる行為に建造物侵入罪(130条前段)が成立する。
2 甲が乙を使って仏像を持ち出した行為に詐欺罪(246条1項)が成立しないか。
⑴ まず、甲が代金を支払意思がないと知っていれば、Vは仏像を甲に渡さなかったであろうから、上記行為は、売主たるVによる財産的処分行為の基礎をなす重要な事実を偽る行為といえ、「欺」く行為に当たる。
⑵ 次に、密輸入された仏像は禁制品であるが、法的手続なく没収されない点で財産的価値があり、「財物」に当たる。
⑶ そして、乙が仏像を室外に持ち出した時点で仏像の占有は甲に移転しているところ、Vは鑑定人が待つ近くの喫茶店まで仏像を持ち出すことを許しているから、かかる占有移転はVの意思に基づくものといえ、財物の「交付」が認められる。
(4) さらに、確かに、仏像は密輸入されたものであるから、その売却は不法原因給付(民法708条)であり、返還請求権を欠く。しかし、だからといって給付物を第三者に交付すべき理由はなく、不法原因給付物であっても刑法上保護に値する。そのため、財産的損害があるといえる。
(5) したがって、上記行為に詐欺罪が成立する。
3 甲がナイフでVの腹部を刺した行為につき強盗殺人未遂罪(243条、240条後段、236条2項)が成立しないか。
⑴ まず、構成要件該当性を検討する。
ア 刃体の長さが約15センチメートルもあるナイフは人を殺傷するに足る十分な能力を有し、そのナイフで身体の枢要部である腹部を指す行為は、相手型の反抗を抑圧する行為であるといえる。被害者の意思を抑圧する強盗罪は被害者の処分行為を予定していないから、被害者の処分行為は不要であるものの、処罰範囲限定のため、「暴行」に当たるというには確実かつ具体的な利益移転に向けられている必要があると解する。甲はVの処分行為なく財産的利益を得ているが、偽名の使用等により身元を隠しており、Vを殺せば代金返還請求を完全に免れるから、甲の行為は確実かつ具体的な利益移転に向けられているといえる。したがって、甲の行為は「暴行」にあたる。
イ 次に、密輸入された仏像は禁制品であり返還請求権を欠くが、前述の通り、禁制品が財物に当たる以上、その返還を免れる利益も「財産上不法の利益」にあたり、甲は「強盗」に当たる。
ウ そして、甲は殺意を有しているところ、殺意がある場合こそ処罰の典型例であるから240条後段は殺意ある場合にも適用されると解する。
エ また、強盗殺人罪の第一次的保護法益は生命であり、死亡の結果の有無で未遂既遂を判断すべきであるから、Vは死亡していない本件は未遂にとどまる。
オ したがって、甲の行為は強盗殺人未遂罪の構成要件に該当する。
⑵ もっとも、甲はVからナイフを突きつけられていることから、正当防衛(36条1項)が成立し、違法性が阻却されないか。
ア まず、甲はVからナイフを突きつけられ、生命という法益侵害の危険が切迫しているから、「急迫」性が認められる。
イ 次に、仏像取返しの為にナイフを突きつけるVの行為は目的達成に適当な限度を超え、自救行為として違法性を阻却されないから、Vの侵害は「不正」といえる。
ウ また、甲は自分の身を守ろうとしており、防衛の意思を有するから、「防衛するため」といえる。
エ さらに、「やむを得ずにした」とは、防衛行為として必要かつ相当であることをいうところ、甲は防衛しなければVに刺される危険があったから、防衛の必要性はあった。しかし、Vよりも体格の良い甲はナイフを振り回して威嚇すれば侵害を排除し得たのに直ちに突き刺しているから、必要最小限の防衛とはいえず、防衛の相当性を欠く。そのため、「やむを得ずにした」とはいえない。
オ したがって、正当防衛は成立せず、過剰防衛(同条2項)の成立にとどまる。
⑶ よって、強盗殺人未遂罪が成立する。
4 以上により、①建造物侵入罪②詐欺罪③強盗殺人未遂罪が成立する。②と③は包括一罪となり、これと①は牽連犯(54条1項後段)となる。また、③につき刑が減免され得る。甲は、かかる罪責を負う。
第2 乙の罪責について
1 乙が仏像を保管した行為につき盗品等保管材(256条2項)が成立しないか。
⑴ まず、甲による仏像の詐取行為に詐欺罪が成立している。そして、密輸入された仏像の売却は不法原因給付であるが、詐欺罪成立の反射的効果としてVに事実上の返還請求権があると解される。そのため、仏像は「財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」といえる。
⑵ 次に、仏像が詐欺により領得されたものであることを乙が知ったのは保管開始後である。盗品等保管罪は追求権侵害を本質とし、保管を継続すれば追求権侵害も継続するといえるから、乙の知情後の保管も「保管」に当たる。
⑶ したがって、盗品等保管罪が成立する。
2 乙が仏像を第三者に売却した行為につき横領罪(252条1項)が成立しないか。
⑴ まず、財産秩序保護のため、犯罪行為の委託も刑法上保護に値し、仏像は「自己の占有する」物といえる。
⑵ 次に、甲が乙に仏像を委託したのは不法原因給付であり返還請求権を欠くが、刑法上は給付者の平穏な所持も保護に値するから、仏像は「他人の物」といえる。
⑶ また、乙の行為は、仏像の保管という委託の趣旨に反し所有者でなければできない行為といえ、「横領」に当たる。
(4) したがって、横領罪が成立する。
3 以上により、盗品等保管罪及び横領罪の罪責が成立する。そして、両者は併合罪となる。乙は、かかる罪責を負う。
以上
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