平成25年(2013年)予備試験商法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2013年商法問題

答案

第1    設問1について

1    Aは、Y社の「取締役」(831条1項柱書後段)として、本件総会の決議の日から「3箇月以内」に株主総会決議取消しの訴えを提起することで、本件総会の決議の効力を争うことが考えられる。

2    Aの解任という議案に対して「株主」であるAから質問があったことにより、「取締役」であるBは当該事項について説明義務を負う(314条本文)。しかし、Bは、「それはあなたもわかっているはずであり、答える必要はない」と述べ、具体的な理由を述べておらず、「必要な説明」をしていない。そして、本件では、拒絶事由(同条ただし書、会社法施行規則71条)に当たる事実はない。そのため、Bの行為は314条に反するといえ、本件総会は「決議の方法が法令……に違反」する。

3    そして、取締役の説明義務は株主総会決議での株主の合理的判断にとって重要であるから、「違反する事実が重大でな」(831条2項)いとはいえず、裁量棄却は認められない。

4    以上より、Aは本件総会の決議の効力を争うことができる。

第2    設問2について

1    まず、Aは「100分の3……以上」(433条1項柱書前段)である15%のY社株を保有する株主であり、本件交換比率の妥当性を検討するためと「請求の理由」(同後段)を明らかにしている。そのため、Aの請求は同項1号の要件を満たす。

2    もっとも、AはY社と「実質的に競争関係にある」(同条2項3号)者に当たり、閲覧拒絶事由に該当するのではないか。

⑴    まず、Y社とZ社の事業は、不動産販売の点で一致し、取引先が競合するといえる。そして、AはZ社の3分の2を超える67%の株式を保有しており、Z社の取締役はA及びAの親族のみであるから、Aは実質的にZ社を支配していると評価でき、客観的にみてY社と競争をなす関係にあるといえる。

⑵    もっとも、Aは本件交換比率の妥当性を検討するために閲覧請求をしているのであって、競業利用のために資料の閲覧を請求しているわけではない。この点について、同号の趣旨は、会社の秘密が競業者に利用され、会社に損害が生じることを未然に防ぐ点にある。

そこで、「実質的に競争関係にある」者に当たるためには、当該会社と競業をなす者である等の客観的事実が認められれば足り、競業利用目的の主観的意図は考慮しないと解する。

⑶    よって、Aは「実質的に競争関係にある」者に当たる。

3    以上より、Y社はAの上記請求を拒むことができる。

第3    設問3について

1    ①株式交換の効力発生前について

⑴    AはY社の「株主」として、本件株式交換の差止請求(784条の2第1号)をすることが考えられる。

ア    本件株式交換により、Aは持ち分比率の低下という「不利益を受けるおそれ」(同条柱書)がある。

イ    次に、X社は本件株式交換契約の相手方であるから、Xグループは会社の利益と相反する個人的利害関係を有するといえ、「特別の利害関係を有する者」(831条1項3号)に当たる。そして、Xグループが議決権を行使した結果、不当な交換比率の株式交換契約の承認という「著しく不当な決議」がなされている。そのため、承認決議に取消事由たる瑕疵がある本件株式交換は、「法令に……違反する」といえる。

ウ    以上より、Aは上記請求をすることができる。

⑵    次に、本件総会で本件株式交換に反対しているAは、本件総会に先立ちその旨通知していた場合、「反対株主」(785条2項1号イ)に当たり、Y社に対し、株式売買請求

(同条1項1号)をすることができる。

2    ②株式交換の効力発生後について

⑴    Aは、Y社の「株主」(828条2項11号)として、株式交換無効の訴えを提起することが考えられる。

ア 無効の訴えには無効事由について明文の規定がないが、提訴期間や提訴権者を制限して法的安定を図った制度趣旨から、無効事由は重大な瑕疵に限られると解する。 

  これを本件についてみる。まず、本件交換比率が不当であっても、反対株主は株式買取請求により投下資本を回収できるため、重大な瑕疵とまではいえない。もっとも、本件株式が決議された本件株主総会決議には取消事由(831条1項1号)があり、これは重大な瑕疵に当たるといえるから、かかる事由が無効事由となる。

イ もっとも、株主総会決議の取消事由を無効事由として主張する場合には、株主総会決議取消の訴えの提訴期間を超えてその事由を主張することはできないと解する。

ウ したがって、本件株主総会の決議の日から3か月以内に限り、上記訴えを提起することができる。

⑵    次に、Aは、Y社取締役であるBらに対し423条1項に基づく損害賠償請求をすることが考えられる。しかし、仮に比率が不当であるとしても、Y社には「損害」が生じないため、かかる請求をすることはできない。

⑶    そうだとしても、AはBらに対し、不当な交換比率による株式価値の低下という「損害」について、「第三者」として429条1項に基づく損害賠償請求をすることが考えられる。

ア    そもそも、同項の趣旨は株式会社が経済社会において重要な地位を占めているところ、その活動が取締役等の役員等の職務執行に依存していることから、役員等の責任を加重し第三者を保護する点にある。そこで、「悪意又は重大な過失」は、任務懈怠について損すれば足りると考える。これを本件についてみる。Bらには、承認決議の手続違反の点について任務懈怠があり、悪意といえる。また、任務懈怠と上記損害との因果関係も認められる。

イ    以上より、Aは上記請求をすることができる。   

以上

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