平成25年(2013年)予備試験民事実務基礎答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2013年民事実務基礎問題

答案

第1 設問1⑴について

1 Qは、BY間の転貸借契約に基づく転借権を根拠とする占有権原の抗弁を主張しているが、転借権は適法な賃借権の存在を前提とする権利である。そのため、転借権に基づく占有権原の抗弁を主張する者は、転貸借契約の基礎となる賃貸借契約が適法に成立していることを主張立証する必要がある。

2 賃貸借契約に基づく占有権原を主張するためには、賃貸借契約の成立と、それに基づく目的物の引渡し、及び賃借人が目的物を賃貸借契約に基づき適法に占有していることを示す必要がある。そして、④の事実は、本件転貸借契約の基礎となる本件賃貸借契約に基づく目的物の引渡しに当たる。

 3 よって、④の事実が占有権原の抗弁の抗弁事実として必要となる。

第2 設問1⑵について

1 結論

Qが主張する必要がある占有権原の抗弁の抗弁事実は、③から⑥までの各事実だけでは足りない。

2 理由

民法612条1項は、転貸を原則として禁止し、承諾がある場合にのみ例外的に許容している。そして、転借権を占有権原として主張する者が、その主張が認められることにより利益を得るから、賃貸人の承諾があったことにつき主張立証責任を負うと解する。そうすると、転貸を承諾するという特約は、実際の承諾に代わるものであるから、転借権を占有権原として主張する者が主張立証責任を負うべきである。

したがって、Qは、③の際に本件特約を締結した事実をも主張する必要があり、Qが主張する必要がある占有権原の抗弁の抗弁事実は、③から⑥までの各事実だけでは足りないことになる。

第3 設問2について

1 まず、本件特約がB又はYにより書き加えられたのであれば、Aの保有する契約書には、本件特約が記載されていないはずである。そうすれば、その契約書を示すことで、本件特約の不存在を立証することができる。したがって、申出を検討すべき証拠として、Aが保有する契約書が考えられる。

2 次に、本件特約がB又はYの筆跡によることが判明すれば、本件特約はB又はYが記載したということになるが、本件においてB又はYの筆跡の対照の用に供すべき筆跡を備える証拠は提出されていない。したがって、申出を検討すべき証拠として、B又はYの筆跡の対照の用に供すべき筆跡を備える物件(民事訴訟法229条2項)が考えられる。

3 また、本件特約が存在しているか否かは、本件賃貸借契約を締結したA、Bが知っているはずである。そこでA、Bの証人尋問の申出をすることが考えられる(同法190条)。

第4 設問3⑴について

Bの死亡により、YがBを相続(896条本文)したことで、YはBが有していた賃借権を承継し、Yが有していた転借権は混同(179条1項本文類推)によって消滅する。したがって、Qは転借権を根拠とする占有権原の抗弁を主張することはできず、賃借権を根拠とする占有権原の抗弁を主張すべきである。

第5 設問3⑵について

Aは、Bの生前に、既にBのYに対する無断転貸を理由として本件賃貸借契約を解除している(612条2項)。そのため、Pは、Yは賃借権を承継せず、賃借権を根拠とする占有権原の抗弁は認められないという再抗弁を主張することになる。

第6 設問4について

1 Aは、BのYに対する本件建物の無断転貸を理由として本件賃貸借契約を解除しているが、これによりAに解除権が認められるか。

⑴ この点について、無断転貸がなされた場合、賃貸人に解除権が発生する(612条2項)。もっとも、同項は、通常、無断転貸がされた場合には、継続的契約たる賃貸借契約の基礎である信頼関係が破綻される点を根拠とする。そこで、無断転貸が賃借人の背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権は発生しないと考える。

⑵ これを本件についてみる。Bは、Aに対し約定どおり毎月の賃料を支払っており、Aに経済的損失はなかった。また、BとYは親子関係にあり、Bは全く無関係の者に転貸したわけではないし、転貸料は賃料と同額であることから、Bの転貸に営利目的も認められない。さらに、Bは、単に転貸につき賃貸人の承諾が必要であることを知らなかったために無断で転貸しただけであるから、Aを害する意図はなかった。そうだとすると、本件において、上記の特段の事情が存するとも思える。

しかし、AがBに相場より安く本件建物を賃貸したのは、友人であるB個人を信頼していたからである。それにもかかわらず、BはAの信頼を裏切って本件建物をYに転貸している。また、Bは無断転貸についてAから異議を述べられた際に承諾が必要であるとは知らなかったと開き直る不誠実な態度に出ている。さらに、Yは約150万円という多額の借金を抱えており、本件転貸がなされることで本件建物に取立人が訪れるなど、本件建物の所有者であるAの社会的信用が低下させるおそれもあった。

⑶ したがって、本件無断転貸によってAB間の信頼関係は破壊されており、上記の特段の事情は存しないというべきである。

2 よって、Aは解除権を有しており、裁判所は本件賃貸借契約の解除は有効であると判断することになると考えられる。

第7 設問5について

Pは、「事件の見通し」と「処理の方法」について適切な説明をする必要がある(弁護士職務基本規程29条1項)。具体的には、Yが本件賃貸借契約の解除の効力を争う可能性があり、かかる主張が認められればXの請求は認められないということ、Xの主張が認められなかった場合、本件建物の売買におけるAの担保責任(565条)をめぐってAX間で利害の対立が生じるおそれがあり、その場合には辞任の可能性があること(弁護士職務基本規程42条1項)を説明すべきである。

                           以上 

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