平成25年(2013年)予備試験刑事実務基礎答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2013年刑事実務基礎問題

答案

第1 設問1

1 甲を勾留すべきといえるためには、甲が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があること、刑訴法60条1項各号の要件を満たすことを要する(207条1項本文、60条1項)。

2 「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」

⑴ 甲がカメラを窃取したことを直接示す証拠はないことから、間接事実の積み上げにより甲の犯人性を推認できるかを検討していく。

⑵ 間接事実

ア 被害品の近接所持

(ア)  犯人は、平成25年2月26日午後11時50分ごろから翌27日午前7時ごろまでの間に、T市内にあるV方居室から、V所有のデジタルカメラX(以下「本件カメラ」という)を持ち去ったと認められる(V供述、防犯ビデオ)。

(イ) 次に、甲は、同月27日午前10時ごろ、T市内のリサイクルショップRにおいてデジタルカメラXを売却している。そして、同カメラから採取された指紋は、甲の指紋と合致している。

また、甲は、デジタルカメラXにも適合するメモリーカードを、同月24日から甲が使用する登録番号550よ6789の白色ワゴン内に所持していた。同メモリーカードには、VがXで撮影しインターネット上で公開している画像が3枚含まれていた。この事実から、このメモリーカードはVが本件カメラで使用していたものと認められる。

Xは在庫が不足気味で入手困難であること、甲の使用する車からVが本件カメラで使用していたメモリーカードが発見されたことを考えれば、同月27日に甲が売却したカメラはV所有の本件カメラであると合理的に推認できる。

(ウ)  これらの事実からすれば、甲は、被害品である本件カメラを、犯行から間もない時間に犯行現場と同一市内にて所持していたこととなる。時価30万円ほどする高額のカメラが短時間のうちに転々流通する可能性はそれほど高くないことを考えれば、この事実は、甲の犯人性を相当程度推認させる。

イ 犯行可能性

(ア)  犯人は、同月26日午後11時50分ごろから翌27日午前7時ごろまでの間に、V方居室から本件カメラを持ち去ったことが認められる。

(イ) 甲は、午後9時55分ごろから午後11時55分ごろまでの間、V方居室に滞在していたことが認められる(V供述、A供述、防犯カメラの映像)。

(ウ)  これは、甲が犯行時刻と一部重なる時刻に犯行現場たるV方居室に滞在していたという点で、甲に犯行が可能であったことを示す事実である。そして、マンションの出入り口は防犯カメラが設置されているエントランス1か所のみであり、甲がマンションを出て行った時刻である午後11時55分ごろから午前7時20分ごろまでの間にマンションに出入りした人がいないことからすれば、甲が犯行を行った可能性は高い。他方、V方玄関は施錠されておらず、マンション内部の者による犯行の可能性もないとはいえない。したがって、甲に犯行が可能であった事実は、甲の犯人性を相当程度推認させるといえる。

ウ 動機

犯人は、V方居室から時価30万円程度の本件カメラを持ち去ったところ、甲は、犯行当時150万円の借金を抱えていた。この事実は、甲が、借金返済のために本件カメラを持ち出し売却する動機を示すものであって、甲の犯人性を一定程度推認させる。

⑶ 間接事実の総合評価

犯人でないにもかかわらず、被害品を所持していたこと、甲とA以外にマンション外部の者による犯行可能性が低いこと、犯行の動機もあることといった事象が偶然重なる事は考え難いことからすれば、甲以外の者が犯人である可能性は低く、一応確からしいものとして甲の犯人性を推認できる。

⑷ 甲の供述の信用性

ア 甲は、同月27日に売却したデジタルカメラXは他人からもらったものであるとして、V方から本件カメラを持ち去ったことを否認する。しかし、他人からもらったものであればその入手経緯について合理的な説明ができるはずなのに、名前を言えない知らない知り合いからもらったと不自然な弁解をしており、かかる弁解は信用し難い。

イ また、甲は、26日夜はAと一緒に帰った旨供述している。これについて、Aは、甲がタバコを吸ってから帰ると言ったためにAは1人で帰った旨供述している。防犯ビデオには、11時50分ごろにAが1人でマンションを出る映像が記録されており、Aの供述は客観的事実と整合し信用できるものである。したがって、このようなAの供述と矛盾する甲の弁解は上記認定に合理的疑いを抱かせるものではない。

⑸ 以上より、甲の弁解を考慮しても、甲が犯人である事は一応確からしいと認められ、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があるといえる。

2 刑訴法60条1項各号の要件該当性

⑴ まず、甲はT市内のアパートに居住しており、定まった住居を有する(1号不充足)。

⑵ 次に、甲はZ社の正社員という比較的安定した地位にある。しかし、単身で居住して身軽であり、執行猶予中の身でもある。そうすると、実刑を恐れて逃亡することが考えられ、「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」があるといえる(2号充足)。

⑶ またA、V、W、Z社社員といった者を威迫するなどして供述証拠を隠滅したり、Z社の車の鍵の管理簿を捏造するなど「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」もある(3号充足)。

3 結論

以上より、要件を充足するので、Jは甲を勾留すべきである。

以上

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