平成25年(2013年)予備試験行政法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2013年行政法問題

答案

第1 設問1について

1 Cは、A市長をして本件計画に適合するよう本件マンションの設計を変更すべき旨の変更命令(法17条1項)をBに対して行わせるために、A市を相手方として(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)38条1項・11条1項1号)、変更命令の非申請型義務付け訴訟(3条6項1号)を提起した上で、変更命令の仮の義務付け(37条の5第1項)を申し立てる必要がある。以下、理由を述べる。

2 まず、法は、景観計画に反する建築物の新築等を行おうとするものに対しては、専ら変更命令によって是正を図ることとしているから(法16条1項、17条1項参照)、本件マンションの設計を変更させるためには、同命令の義務付け訴訟の提起により、A市長に変更命令を義務付けることが必要である。そして、法は、申請に基づき変更命令を行うことを予定していないから(法17条1項)、Cは非申請型義務付け訴訟を提起すべきこととなる。

3 次に、Bは2013年7月10日に法16条1項による届出を行っているため、同月14日の時点では、届出日から30日以内という変更命令の期限(法17条2項)まであと4週間程度しかなく、その間に上記訴訟の認容判決が確定する可能性は低い。そこで、Cは、上記期限までに変更命令を行わせるべく、仮の義務付けを申し立てるべきである。

4 以上から、上記の法的手段を探ることが必要である。

第2 設問2について

1 変更命令の義務付け訴訟は、非申請型義務付け訴訟の訴訟要件(行訴法37条の2第1項)を満たすか。

2 まず、変更命令が「一定の処分」に当たる必要がある。

⑴ まず、「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。変更命令は、A市長がBに対してマンション設計の変更を義務付けるものであり、「処分」にあたる。

⑵ 次に、「一定」とは裁判所における判断が可能な程度に特定されていることをいうところ、Cが求めているのは、Bに対する、本件計画に適合するよう本件マンションの設計を変更すべき旨の変更命令であり、これは裁判所における判断が可能な程度に特定されているといえ、「一定」といえる。

⑶ したがって、「一定の処分」といえる。

3 次に、「重大な損害を生ずるおそれ」はあるか。同条2項に従って判断する。

現在の設計に基づき建築が行われた場合、本件計画が許容する50メートルを大幅に超過する、幅70メートルの外壁を持つマンションが建築されることになる。そのため、本件マンションの隣接地に居住するCは、本件マンションの存在により自宅からの景観が圧迫感のあるものになることから、景観利益すなわち良好な景観の恵沢を享受する利益という重要な利益を日常的に害されることになる。そのため、本件マンションの建築により、重要な利益に甚大な損害が生じるといえる。

そして、景観は一度損なわれると現状に戻すことは困難であり、「損害の回復の困難の程度」も大きい。

よって、「重大な損害を生ずるおそれ」が認められる。

4 また、非申請型義務付け訴訟に代わる救済手続きは特に法定されておらず、「他に適当な方法がないとき」に当たる。

5 さらに、Cは「法律上の利益を有する者」(同条3項)に当たり、原告適格が認められるか。Cは「処分……の相手方以外の者」であるため、9条2項に従って判断する(37条の2第4項)。

⑴ 「法律上の利益を有する者」とは、当該処分がなされないことにより自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含むと解される場合には、かかる利益もここにいう法律上保護された利益に当たる。

⑵ これを本件についてみる。

ア まず、本件マンションの隣地に居住するCの利益として、マンション建設によって良好な景観が害されない利益が想定できる。

イ 本件変更命令の根拠法規は法17条1項である。同項は「良好な景観の形成のために必要があると認める時」と規定しており、良好な景観の保護に考慮しているといえる。法は、良好な景観の形成を目的の一つとし(法1条)、現在及び将来の国民が良好な景観の恵沢を享受できるよう、その整備及び保全を図ることを基本理念とするとともに(法2条1項)、建築物の新築等に関しては届出制を採用している(法16条1項1号)。これらの規定からすれば、法17条1項は、景観利益を保護する趣旨の目的を有するといえる。

ウ そして、景観利益は、一度損なわれたら回復することが困難な利益であり、その周辺に居住する者にとっては生活環境の向上につながる重要な利益である。また、マンションが一旦建築されるとそれによる景観の阻害は以後継続的に行われ、またマンション付近に居住する者ほど被害は大きくなる。そこで、同項は、対象となる建築予定物の周辺に居住し、これまで享受していた景観利益が直接的に害されるおそれのある者の利益を保護する趣旨を含むと解される。

エ これを本件についてみる。Cは本件マンションの建築予定地の隣に建っているマンションに居住しており、マンションの建設によりこれまで享受していた自宅からの景観が直接的に害されるおそれのある者にあたる。

オ したがって、Cは「法律上の利益を有する者」に当たる。

⑶  よって、Cに原告適格が認められる。

6 以上より、上記訴訟は、訴訟要件を満たす。

以上

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