平成24年(2012年)予備試験民法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2012年民法問題

答案

第1 設問1について

1 小問⑴について

債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であるとの主張は、検索の抗弁として民法453条に規定されているところ、これは保証人に関する規定であり、物上保証人であるBに対して直接適用することはできない。そこで、同条を物上保証人に類推適用できないかが問題となる。

⑴ この点について、検索の抗弁は保証債務の補充性に基づいて認められる保証人保護のための抗弁であるところ、物上保証人は、保証人と異なり、その責任の範囲が抵当目的物に限定されているため、物上保証人に保証人と同等の保護を認める必要はない。また、検索の抗弁を物上保証人に認めると、抵当権の実行を不当に遅延させるおそれがあり、妥当でない。そこで、物上保証人に対する同条の類推適用は認められないと解する。

⑵ したがって、Bは上記のような検索の抗弁を主張することができない。

2 小問⑵について

⑴ 主債務者から委託を受けて保証をした者は、一定の場合に、あらかじめ、求償権を行使できる(460条)ところ、同条は保証人に関する規定であり、物上保証人に直接適用できない。そこで、同条を物上保証人に類推適用できないかが問題となる。

ア この点について、事前求償権の法的性質は委任事務費用の前払請求権(649条)であると解されるところ、物上保証人の委任は弁済によって債務者を免責させる趣旨を含まない。そのため、物上保証人の弁済は委任事務とはいえず、委任事務費用及びその前払請求権の発生を観念し得ない。また、抵当不動産の売却代金による被担保債権の消滅の有無及びその範囲は、抵当不動産の売却代金の配当等によって確定するものであることから、求償権の範囲はもちろん、その存在すらあらかじめ確定することはできない。そこで、物上保証人に対する同条の類推適用は認められないと解する。

イ したがって、Bは、Aに対し、あらかじめ、求償権を行使することができない。

⑵ 次に、仮にCが抵当権を実行して乙建物が売却された場合において、Bは、Aに対し、求償権を行使できるか。

ア この点について、委託を受けて保証をした者は、「自己の財産をもって債権を消滅させるべき行為をした」(459条1項)場合に、主債務者に対し求償権を行使できる。

イ これを本件についてみる。物上保証人Bは、抵当権の実行によって抵当不動産たる乙建物の所有権を失い、これはAの債務を消滅させるべき行為に当たる。

ウ  したがって、Bは、A に対し、求償権を行使できる(372条・351条)。

第2 設問2について

1 主張することのできる権利について

⑴ Aは、死亡前に甲土地をBに贈与(以下「本件贈与」という。)しているため、相続人(887条1項)であるEは、甲土地の所有権を相続せず、甲土地所有権を取得し得ない。そうすると、Eは、甲土地の所有権に基づく土地明渡請求権という権利を主張することができない。

⑵ しかし、だからといって甲土地所有権につきEは何らの権利主張もなし得ないとすると、遺産相続に対するEの期待が害される。そこで、Eは、甲土地について、本件贈与を対象とする遺留分侵害請求権(1046条)の主張をすることが考えられる。

ア まず、Eは「兄弟姉妹以外の相続人」であるから、遺留分を有する相続人である(1042条柱書)。そして、本件では、相続人となる直系尊属がいないため(同条1項1号)、Eの遺留分は相続財産の2分の1となる(同条2号)。

イ 次に、Aの死亡は平成24年3月25日であるから、同年1月18日になされた本件贈与は「相続開始前の1年間にしたもの」(1044条1項)に当たり、遺留分侵害請求の対象となる。

ウ したがって、Eは、上記権利の主張をすることができる。

2 どのような法律関係が成立するかについて

では、Eの遺留分侵害請求の結果、甲土地の所有権について、どのような法律関係が成立するか。

⑴ この点について、被相続人による贈与の効力が否定されないと、贈与に基づく権利移転義務が残存してしまい、遺留分権利者は、遺留分侵害請求の目的を達することができない。そこで、遺留分侵害請求の法的性質は形成権であって、侵害の意思表示によって、相続開始前の贈与は遺留分を侵害する限度においてその効力が否定され、受贈者が取得した権利はその限度で遺留分権利者に帰属すると解する。

⑵ これを本件についてみる。本件では、Eの遺留分侵害請求により甲土地の持分2分の1がEに帰属することになる。

⑶ したがって、Eの遺留分侵害請求の結果、甲土地の所有権について、EとAがそれぞれ持分の2分の1の割合で共有するという法律関係が成立する。

以上

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