平成24年(2012年)予備試験民事実務基礎答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2012年民事実務基礎問題

答案

第1 設問1⑴について

1 相殺の抗弁が認められるには、民法505条1項本文より、ⓐ互いに同種目的の債務を負担すること、ⓑ双方債務が弁済期にあることが必要である。また、506条1項本文より、Ⓒ相殺の意思表示をしたことも必要である。これらについては、相殺の抗弁を主張する者が立証責任を負う。さらに、相殺の主張が認められるためには、ⓓ相殺が禁止される事情がないこと(505条1項ただし書、2項本文、509条ないし511条参照)も要件となる。しかし、これについては、相殺が禁止されることにより利益を受ける相手方が立証責任を負う事実である。

2 これを本件についてみる。ⓐⓑのうち受働債権の発生原因事実と弁済期の到来については、請求原因に現れており、Yがこれを主張する必要はない。そうすると、Yが立証責任を負うのは自動債権の発生原因事実と弁済期の到来の事実になる。屋根の雨漏りの修理費用については、甲建物を使用収益に適する状態に維持・保存するため必要な費用であるから、必要費に当たる。そして、必要費償還請求権は支出と同時に弁済期が到来する(608条1項)。そのため、⑤⑥は自働債権の発生原因事実と弁済期の到来をいうものであって、Yが主張すべき事実である。また、両債務の目的が同種であることは、⑤の主張により明らかとなるので、個別に主張する必要はない。そうだとすれば、ⓐ及びⓑの主張としては、⑤と⑥の主張で足りる。そして、⑦はⒸに該当する事実であり主張が必要である。

3 したがって、Qは、⑤から⑦までの事実を主張する必要があり、かつ、これで足りる。

第2 設問1⑵について

Qは⑥の金員の支払を受けるまで甲建物を留置するという留置権の抗弁(295条1  項本文)を主張すると考えられる。

第3 設問2について

1 結論

裁判所は、Pに対して、署名が丙川のものであることを争う趣旨か否かについて、本件領収証の成立を否認する理由を確認すべきである。

2 理由

文書は、成立の真正を証明する必要があるところ(民事訴訟法228条1項)、その成立を否認するときには理由を明らかにする必要がある(民事訴訟規則145条)。しかし、Pは成立の真正を否認するにあたり理由を述べていない。

そして、本件領収証については、署名が丙川のものであることにつき争う場合と、署名については争わないが文書の成立の真正を争う場合が考えられる。後者の場合には、民訴法228条4項の推定が働くため、当事者の立証活動は大きく異なることになる。

したがって、上記事項を確認する必要がある。

第4 設問3について

1 まず、請求原因②及び③に含まれる、平成23年4月28日が経過したことは顕著な事  実である。また、他の請求原因事実はすべてYが自白している。そのため、裁判所は   すべての請求原因事実を認定することになる(民訴法179条)。

2 次に、Yは、相殺の抗弁と、留置権の抗弁を主張している。

⑴ まず、相殺の抗弁について、裁判所は、相殺の意思表示が本件契約の解除の意思表示の後になされたとの心証を形成している。そうすると、解除によって契約は訴求的に消滅しているから、相殺の抗弁は認められない。

⑵ 次に、留置権の抗弁について、その抗弁事実のうち、Yの現占有については①の請求原因事実によって現れている。また、⑤の事実に自白が成立し、⑥の事実を認定できることから、占有物に関して生じた債権の発生原因事実が認められる。加えて、Yは留置権を行使するとの権利主張をしている。そのため、㋑留置権の抗弁は認められる。

3 そして、Xは、本件修理費用は30万円が相当であり、既にYに同額を弁済し債務は消滅したことから、付従性により留置権は消滅したとの再抗弁を主張している。

⑴ 裁判所は、Yが修理費用として150万円を支払い、その金額は相当であるとの心証を形成している。そして、Yが必要費償還請求権を自働債権として賃料債権120万円と相殺する旨の意思表示を行った上、Xが30万円を弁済したことが認定できるので、Yの必要費償還請求権は消滅し、付従性により留置権も消滅する。

⑵ したがって、上記再抗弁の主張は認められる。

4 よって、裁判所は、判決主文において、Xの請求を認容するとの判断をすることになる。

第5 設問4⑴について

1 結論

Aの行為は弁護士職務基本規程(以下、「規程」という。)56条前段に反するという弁護士倫理上の問題がある。

2 理由

「他の所属弁護士」Bの「依頼者」たるR株式会社(以下「R社」という。)の経営状況は、同社の信用にかかわり、Aが執務上知り得た「秘密」に当たる。また、本件においてAがR社の経営状況をSに助言する「正当な理由」もない。そのため、Aの行為は同条前段に該当する。

第6 設問4⑵について

1 結論

Aの行為は弁護士法23条に反するという問題がある。

2 理由

⑴ 規程は、弁護士を名宛人とするものであるから、弁護士登録を取り消した者について  は適用対象としていない。他方で、弁護士法23条は「弁護士であった者」にも守秘義務を課している。そして、同条における秘密保持義務違反というためには、正当な理由なく秘密を第三者に漏らしたことが必要であると解する。

⑵ これを本件についてみる。AはT株式会社の代表取締役であるが、R社の経営状況と倒産が避けられない情勢であるという事実は取締役としてではなく、弁護士としての職務を通して知り得た事実である。そうだとすれば、Aは取締役として会社に対して忠実義務(会社法355条)を負うにしても、なお当該情報を開示することに正当とは言い難い事情が存在するといえる。

⑶ よって、Aの行為には弁護士倫理上の問題がある。

以上

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