平成24年(2012年)予備試験刑事実務基礎答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2012年刑事実務基礎問題

答案

第1 設問1について

1 本件においては、甲が犯人であることを示す直接証拠はない。そのため、間接事実の積み重ねにより甲の犯人性を検討する。

2 間接事実

⑴ 指紋の一致

ア 犯人は、平成24年4月2日午前11時頃、Tマンションにある自宅において、ガムテープ及びひもでVを拘束している。さらに、犯行現場から、犯行前の同日午前10時45分ごろにZでガムテープと紐を購入したことを示すレシートが発見され、購入品目と犯人が犯行に使用した物件の種類が一致する。また、このレシートはVやWが受領したものではない(V供述、W供述)。TマンションとZとの距離はわずか200メートルしか離れておらず、Zから15分以内にV宅へ赴く事は容易であることからすれば、このレシートは犯人が犯行時に現場に遺留したものであると合理的に推認できる。

イ そして、このレシートから、甲の指紋が検出されている。

ウ この事実は、犯行現場に犯人が遺留したレシートに甲の指紋が付着している点で、甲と犯人との結びつきを示す事実である。そして、レシート用紙に午前10時45分より前に甲の指紋が付着したとは考え難いし、10時45分からWが帰宅する11時30分ごろまでの短時間のうちに、他人の受領したレシートに甲が触れることも考え難い。そうだとすれば、甲が犯人である以外にレシートに指紋が付着している理由を合理的に説明することが困難であるから、この事実は甲の犯人性を強く推認させる。

⑵ 被害品の近接所持

ア 犯人は、同日午前11時頃、I市所在のV宅から、V名義のクレジットカード在中のVの財布を持ち去った(V供述)。

イ そして、甲は、同日午後3時頃I市所在の家電量販店SにおいてこのV名義のクレジットカードを所持していた。

ウ クレジットカードは転々流通する性質のものではなく、犯行から4時間後という近接した時点に、犯行現場と同一市内にて被害品であるV名義のクレジットカードを甲が所持していたことからすれば、甲が犯人である可能性は高い。他方、クレジットカードを拾得したり他者から譲り受けた可能性も一応ある。したがって、この事実は甲の犯人性を相当程度推認させる。

⑶ アリバイ工作

犯人は、同日午前11時ごろに本件犯行を行っている。一方で、甲は、同日午後零時ごろ、自宅にいたAに対して、被害品と同一種類の財布を渡すとともに、その日は朝から午前零時まで家でと2人でいたと警察に話すよう伝えている。これは、犯行時刻を含む同日午前における虚偽のアリバイを作出しようとする行動であって、Aに渡した財布に関して何らかのやましい出来事があったとうかがわせるものである。もっとも、財布を拾った程度でもアリバイ工作をすることはあり得る。したがって、この事実は甲の犯人性を一定程度推認させるにとどまる。

⑷ 特徴の一致

Vの供述によれば、犯人は、身長約180センチメートル、がっちりとした体格、20歳代位、緑色のジャンパーとサングラスを着用した男性である。そして、甲は、身長182センチメートル、体重95キログラム、27歳の男性で、自宅から緑色のジャンパー及びサングラスが発見されている。そうすると、犯人の身体的特徴と甲の身体的特徴は一致している上、犯行当時の犯人の服装に合致する衣類等が甲の自宅から発見されたことになる。もっとも、この程度の特徴を備えた者は多くいるであろうから、この事実は甲が犯人であることと矛盾しないとの意味を有するにとどまる。

⑸ 以上の事実が偶然に起こることは考え難いことからすれば、甲が犯人であることが合理的疑いを超える程度に認められる。

3 消極事実

⑴ A供述から、甲宅にある4本の刃物のうち、3本については持ち出されていないことが認められる。また、V供述によれば、もう一方の刃物については、犯行に用いられたものではない。そうすると、犯行に用いられた凶器は発見されていないことになる。もっとも、帰宅途中に捨ててくるなど凶器を処分することは容易である。

⑵ また、犯人は緑色のジャンパーを着ていたところ、犯行当日の午後零時ごろ、自宅でAに財布を渡した時点では、甲は赤いジャンパーを着ていた(A供述)。もっとも、着衣は着替えるのが容易であり、帰宅後Aに財布を渡す前に着替えた可能性もある。

⑶ そうすると、これらの事実を考慮しても、上記認定に合理的疑いを抱かせるものではない。

4 結論

以上より、甲が犯人であると認められる。

第2 設問2について

1 Bの申し立てた異議は、Aの供述が伝聞証拠(法320条1項)に当たり証拠とできないことを理由とする異議の申立てである。かかる異議の申立てに対し、裁判所は、申立てに理由があると認めるときには規則205条の6第2項によりAの当該供述を排除する決定をし、理由がないと認めるときには規則205条の5により棄却決定をすることになる。

2 これを本件についてみる

⑴ そもそも、伝聞法則の適用により証拠能力が否定されるのは、供述証拠が知覚・記憶・叙述という誤りの介在しやすい過程を経て証拠化されるにもかかわらず、伝聞証拠については反対尋問がなされないために一般的にその正確性の保障がなく、事実認定を誤る恐れがあるからである。かかる趣旨からすると、伝聞法則の適否は要証事実との関係で相対的に決せられ、原供述の内容の真実性が問題となるか否かで判断すべきと解する。

⑵ 本件の要証事実は、甲がアリバイ工作をするような発言の存在それ自体であって、4月2日の朝から午後0時までに家にAと2人でいたことではない。そうすると、原供述である甲の供述内容の真実性が問題とならないから、伝聞法則は適用されない。

⑶ したがって、Aの供述は伝聞証拠に当たらない。

3 よって、Bの異議の申立てには理由がなく、裁判所は、法309条3項、規則205条の5に基づき異議を棄却する決定をすることになる。

以上

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