平成24年(2012年)予備試験行政法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2012年行政法問題

答案

1 実体法上の違法事由

⑴ まず、Aは、本件規則(以下、「規則」という)7条2項6号違反を理由とする本件処分は、本件工事の主体の設定を誤っており、Aに対する規則11条の適用は違法である旨を主張すべきである。

ア 市長は、指定工務店が本件条例(以下、「条例」という)なまたは規則に違反したときに指定停止処分を行うことができる(規則11条)。条文の文言上、違反主体は指定工務店と明確に定められており、この点について市長に要件裁量は認められない。そのため、違反主体を誤った処分は重大な事実を誤認する処分として違法となると解する。

イ これを本件についてみる。本件工事を実際に行ったのはCであるところ、Cは建設会社Aの従業員にすぎず、その役員ではない。また、Cは本件工事についてAの指示等を受けることなく、自宅の下水道について、休日に、一人で行っているのであるから、Aの業務として行われたものでもない。そうだとすれば、本件工事にかかるCの行為はAの行為とはいえない。そのため、違反主体をAとする本件処分は違反主体を誤った処分である。

ウ したがって、本件処分は重大な事実を誤認し違法である。

⑵ また、Aは、本件処分は違反に対する過度に重い処分であって、比例原則に反し違法であると主張すべきである。

ア 規則11条には、効力を停止することが「できる」との文言が使われており、処分の方法について指定取消処分や効力停止処分など複数の方法が規定されていることや、当該処分が指定工事店としての適切性判断という専門的判断を要することから、同条は市長に処分を行うにあたっての効果裁量を認めているといえる。そして、裁量に基づく行為であっても、それが社会理念上著しく妥当性を欠くものあれば、裁量権の逸脱・濫用として違法となると解する(行政事件訴訟法30条)。

イ これを本件についてみる。規則11条の趣旨は、条例または規則に違反した行為を行った指定工務店に対する罰則を設けることで、市内の排水整備を適切に保ち公衆衛生の向上を実現する点にある。しかし、Aはこれまで条例及び規則に基づく処分を受けたことがなかったのであるから、「誠実に排水設備工事を施工」(規則7条1項)してきたものといえる。それにもかかわらず、たった一回の違反のみで、しかも特に重大な実害が生じたわけでもないにもかかわらず、過料(条例40条1項)、指定停止処分、同指定取消処分といった取りうる処分の中で最も重い指定取消処分を下すことは、Aの違反に比してあまりに重い処分であるといわざるを得ず、社会通念上著しく妥当性を欠く。

ウ よって、本件処分はBの裁量権を逸脱・濫用し違法である。

2 手続法上の違法事由

⑴ Aは、本件処分はAに意見陳述や資料提出の機会が十分に与えられずに行われた点及び理由の提示が不十分である点で、手続法上の違法が存在すると主張すべきである。なお、乙市においては行政手続法と同内容の乙市行政手続条例が施工されているのであるから、同法上の手続の不履行は、同零条違反として手続法上の違反となる。

⑵ 本件の指定取消処分は、Aという「特定の者」に対して、「直接に」排水設備の新設等の設計及び工事を行う権利(条例11条)を制限するものであるから、「不利益処分」(行政手続法2条4号参照)に該当する。そして、本件処分は「許認可等を取り消す不利益処分」に該当するため、本件処分を行うにあたっては聴聞の手続をとる必要がある(同13条1項1号イ参照)。そうだとすれば、Bは本件処分に際して、Aに対し、不利益処分の内容等の必要事項を書面により通知し、聴聞期日において当事者に意見を述べさせ、証拠書類等提出の機会を与えなければならなかったといえる(同15条1項、同20条2項参照)。

これを本件についてみる。乙市側からは市職員がAに電話で本件工事の経緯を説明するように求めたのみであり、Aの代表者がCを連れて乙市役所を訪れたのもAの自発的な行動によるものである。そのため、本件において聴聞の手続きが行われたとはいえない。

したがって、本件処分に際しては聴聞手続の不履行という手続法上の違法が存在する。

⑶ また、不利益処分の通知に際しては理由の提示が要求される(同14条1項、3項参照)。そして、その趣旨は行政庁の恣意的な判断を抑制し、処分を受けた者に不服申立ての便宜を与える点にある。かかる趣旨に鑑み、理由の提示の程度としては、いかなる事実関係につきいかなる条文が適用されたのかが、その記載自体から了知し得る程度の理由の提示が必要であると解する。

これを本件についてみる。本件処分通知書上の理由記載では、処分の理由となる具体的な事実関係が記載されておらず、いかなる事実関係につきいかなる条文が適用されたかを通知書の記載自体から了知することはできない。

したがって、本件処分通知書上の理由記載には理由提示の不履行という手続法上の違法がある。

⑷ もっとも、これは手続法上の違反にすぎず、これが直ちに本件訴訟における違法事由となるかは別問題である。

この点について、聴聞や理由提示の手続きは、不利益処分が国民の権利を侵害する処分であることから特別に法定された重要な手続であり、このような重要な手続についての瑕疵は、直ちに処分の違法事由となると解する。

⑸ よって、本件処分には上記聴聞手続及び理由提示の不備という手続上の瑕疵が存在し、これが本件処分の違法事由となる。

以上

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