平成23年(2011年)予備試験民事訴訟法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2011年民事訴訟法問題

答案

第1 本件において、訴状には訴状送達前に死亡したYが被告として記載されているが、実際に訴訟を追行したのはZである。本件では、本件訴訟の被告がYとZのいずれにあたるか及び訴訟係属が有効に生じていたかによって、控訴審が誰と誰を当事者としていかなる内容の裁判をすべきかが異なる。

1 まず、YとZのいずれが被告にあたるかを検討する。

⑴ そもそも、当事者という地位は、人的裁判籍(4条)等の判断基準となるので、訴え提起後直ちに、かつ明確に判断する必要があるところ、訴え提起直後においては訴状の記載が最も基準として明確であるため、訴状を基準とすべきである。もっとも、具体的妥当性確保のため、訴状の当事者欄の記載(133条2項1号)のみならず請求の趣旨及び原因を含む訴状の記載を客観的合理的に解釈して当事者を決すべきと解する。

⑵ これを本件についてみる。訴状には被告としてYの氏名及び住所が記載されている。また、Zは被告の法定代理人として表示され、被告の表示とは区別されている。さらに、請求原因としてXY間の売買契約が記載されている。これらの記載を客観的合理的に解釈すれば、本件における被告はYであると考えられる。

⑶ したがって、本件訴訟の被告はYである。

2 しかし、Yは、訴状の送達時には既に死亡していたことから、有効な訴訟係属が認められないのではないか。訴訟係属の発生時期が問題となる。

⑴ この点について、民事訴訟における二当事者対立構造は訴状の送達時(138条1項)に生じる。そこで、訴訟係属は、訴状の送達時に生じると解する。

⑵ これを本件についてみる。上記のとおり、Yは訴状の送達時には既に死亡していた。

⑶ したがって、有効な訴訟係属は認められない。

3 そうすると、第一審は、本件訴訟が当事者の存在という訴訟要件を欠き不適法な訴えであったとして、訴え却下判決をすべきであったといえる。そのため、Zが行った訴訟行為及びそれを基礎とした第一審判決は無効になるとも思える。

第2 しかし、Zの訴訟行為及びそれに基づく第一審判決を無効とすれば、訴訟経済に反するとともに勝訴したXの手続保障が害されるという不都合が生じる。

1 当事者が死亡した場合に訴訟を継続させる手段としては、訴訟承継の規定(124条1項1号)が考えられる。もっとも、訴訟承継は有効な訴訟係属を前提とした規定であるから、有効な訴訟係属が生じていない本件では同号を直接適用することができない。

2 では、同号の類推適用が認められないか。

⑴ この点について、相続人が異議なく訴訟行為を遂行しながら、後になって自らの訴訟行為の無効を主張することは矛盾挙動にあたり、信義則(2条)に反する。また、訴訟成立の準備段階に入った後に被告が死亡した場合には、潜在的な訴訟係属が生じていたと評価でき、訴訟係属後の死亡と同視できる。そこで、かかる場合には、同号を類推適用し、相続人による訴訟承継が認められると解する。

⑵ これを本件についてみる。Yは、Xが訴状を裁判所に提出した2日後に死亡している。そのため、訴訟成立の準備段階に入った後に被告が死亡した場合といえる。

⑶ したがって、同号の類推適用により、相続人であるZによる訴訟承継が認められる。

第3 では、控訴審は誰と誰を当事者としていかなる内容の裁判をすべきか。

1 上記のとおり、Zが当事者となるから、控訴審は、XとZを当事者として裁判をすべきである。

2 では、控訴審はいかなる内容の裁判をすべきか。

⑴ そして、控訴の利益、控訴期間(285条)及び控訴提起の方式(286条1項)に問題はない。そのため、控訴は適法であり、控訴審は控訴却下判決(290条)をすべきではない

⑵ 次に、第一審判決は、Zが被告であるのにYを被告としている点で「不当」(305条)であるから、控訴審は第一審判決を取り消すべきである。もっとも、第一審においてZは答弁や尋問等の訴訟追行を行っているから、「更に弁論をする必要」(308条1項)はないといえ、本件訴訟を第一審に差し戻す必要はない。したがって、控訴審はその心証に従い、自ら本案判決をすべきである。

以上

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