平成23年(2011年)予備試験刑事訴訟法答案

武藤遼のプロフィール

プロフィール

初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

問題はこちら

2011年刑事訴訟法問題

答案

第1 設問1について

1 罪名の記載について

本件捜査差押許可状においては、「罪名」(219条1項)として「覚せい剤取締法違反」と法律名のみが記載されており、具体的な罰条の記載はない。そこで、捜査差押許可状における罪名の記載として具体的罰条の記載まで必要かが問題となる。

⑴ この点について、判例は、憲法35条が具体的罰条の記載を要求していないこと等を根拠に、特別法については法令名のみの記載でも適法とする。しかし、法219条1項が「罪名」を記載要件とする趣旨は、被疑事件を特定することによって令状が他事件の捜査に流用されることを防止することにある。そうだとすれば、特別刑法犯についても具体的罰条の記載が必要であると解する。

⑵ これを本件についてみる。本件捜査差押許可状においては、「罪名」として「覚せい剤取締法違反」とのみ記載されており、具体的な罰条の記載はない。

⑶ よって、本件捜査差押許可状の「罪名」の記載は違法である。

2 差し押さえるべき物の記載について

本件捜査差押許可状は「差し押さえるべき物」(219条1項)として「その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」との概括的な記載をしているが、かかる概括的記載が許されるのかが問題となる。

⑴ この点について、憲法35条を受けて219条1項が差し押さえるべき物の特定を要求した趣旨は、捜査機関に許可した権限の範囲を明確にし、もって一般令状を禁止するとともに、令状の執行を受ける者に対して受忍限度の範囲を明確にする点にあるところ、かかる趣旨にかんがみれば、「差し押さえるべき物」の記載はできる限り個別具体的に特定してなされる必要がある。

ただ、捜索・差押えは操作の初期段階で行われることが多く、物の具体的内容が判明しないことが多い。それにも関わらず、あまりに厳格な特定を要求すると、捜査機関に不可能を強い、かえって被疑者・参考人の取調べ中心の捜査を助長することになりかねない。

そこで、ある程度概括的な記載も許され、①具体的例示が伴ったものであり、かつ②本件の内容が明らかであれば、上記概括的記載も許されると解する

⑵ これを本件についてみる。本件捜査差押許可状においては、「金銭出納簿、預金通帳、日記、手帳、メモ」といった具体的な差押え対象物が例示されており、具体的例示が伴っているといえる(①充足)。しかし、「罪名」の記載として法律名の記載しかなく、本件捜査差押許可状の記載から「本件」の内容が明らかであるとはいえない(②充足)。

⑶ よって、本件の捜査差押許可状における「差し押さえるべき物」の記載は違法である。

第2 設問2について

本件捜査差押許可状に基づいて本件メモを差し押さえるためには、①本件メモが「差し押さえるべき物」に当たること、②本件メモと本件被疑事実との間に関連性が認められること(222条1項本文・99条1項)が必要である。

1 まず、本件捜査差押許可状には「差し押さえるべき物」として「メモ」が挙げられており、本件メモは「差し押さえるべき物」に当たる(①充足)。

2 次に、本件メモと本件被疑事実との間に関連性が認められるといえるか。

⑴ この点について、被疑事実の直接証拠もしくは間接証拠であれば、当該証拠物件は被疑事実と関連性を有するものと解する。

⑵ これを本件についてみる。本件メモは、甲が丙から6月30日に250万円で覚せい剤100グラムを購入した事実を推認させる証拠となるにすぎず、7月1日に乙に対して覚せい剤10グラムを30万円で譲渡したという本件被疑事実の直接証明するものではない。

次に、6月30日は本件被疑事実において覚せい剤譲渡を行ったとされる日の前日である。覚せい剤は通常流通しているものではなく、入手経路が限定されていることを考えれば、同日に購入した覚せい剤を本件乙への譲渡に用いた可能性が高い。また、購入した量も100グラムと多量であり、甲は転売目的で覚せい罪を購入したと考えられる。さらに、本件メモの記載によれば、甲は覚せい剤を1グラムあたり2万5千円で購入しているところ、本件被疑事実では、甲は1グラム当たり3万円の価格で覚せい剤を譲渡している。そうだとすれば、甲が被疑事実に記載された覚せい剤の譲渡を行うことにより1グラム当たり5千円の利益を得られることになる。これらの事情に照らすと、甲が本件被疑事実に用いられた覚せい剤を丙から入手した事実が強く推認され、本件メモは覚せい剤の入手ルートの存在を証明する証拠となる。そうだとすれば、本件メモは本件被疑事実を証明する間接証拠となる。

⑶ よって、本件メモに本件被疑事実との関連性が認められる(②充足)。

3 以上より、本件メモは本件捜査差押許可状に基づき適法に差し押さえることができる。

以上

メルマガやってます

司法試験、予備試験合格のために
さらに詳しい情報が知りたい方はメールマガジンに登録してください。
もちろん無料です。
メルマガでは、
より具体的な話をしております。

無料なので、
興味がある方は
ぜひご登録ください。

大好評いただいていて、
メールマガジンでしか流さない話もよくしてますし、
メルマガ限定企画も流しますし、
ここまで読んでいただいた方は、
登録して損することはないかと思われます。

下記から登録できます。
武藤遼のメールマガジンはこちら