平成23年(2011年)予備試験行政法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2011年行政法問題

答案

第1 設問1について

1 抗告訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項)とは、公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

2 これを本件についてみる。

⑴ 本件不同意決定は、本条例5条に基づき乙町長が一方的に行うものであり、公権力性が認められる。

⑵ 次に、具体的法効果性について検討する。

ア まず、不同意決定がなされたとしても、そのこと自体によって不利益が生じるわけではなく、建築確認を受ければ建物を新築することが可能である。そのため、不同意決定に建物の新築を不可能にするといった法的効果はない。

イ 次に、建築主が乙町長の同意を得ずに工事を開始した場合には、中止勧告を受ける可能性がある(本件条例7条1号)。しかし、中止勧告は行政指導としての法的性格を有するところ、行政指導は法的効果を有しない行政行為である。そのため、中止勧告を受ける可能性があることを理由に、不同意決定の具体的法効果性を認めることはできない。

ウ また、乙町長の同意を得ずに工事をした場合、中止命令を受ける可能性があり(同号)、これは新築の継続を不可能にするという法的効果を有する。そして、中止命令に従わなかった場合、その旨を公表されるおそれがある(本件条例8条1項)。本件条例には罰則等の定めはなく、公表が中止命令の実効性担保の手段となっていること(同条2項、行政手続法13条1項2号参照)、及び本件条例8条1項が「公表できる」ではなく「公表するものとする」と規定していることから、本件条例は中止命令の後にその旨を公表することを当然に予定しているといえる。公表は事実行為に過ぎないものの、公表によって社会的信用が失われる可能性があり、これは接客業である旅館経営にとっては重大な不利益である上、事後的に回復することが困難な損害である。そうだとすれば、不同意決定の段階で原告の実行的な権利救済を図る必要があるとも思える。

しかし、本件条例は、公表の場合とは異なり、中止命令を「することができる」(7条柱書)と規定しており、かかる文言から乙町長には中止命令を出すかどうかについて裁量が与えられているといえる。そうすると、不同意決定が出されたとしてもその後当然に中止命令が出されるわけではなく、不同意決定がなされたからといって建築主は当然に中止命令及び公表を受ける法的地位に立たされるということにはならない。公表による不利益についても、乙町長が中止命令を出した段階で中止命令の取消訴訟によって争えることができるから、原告の実行的権利救済として十分である。

エ したがって、本件不同意決定に法的効果性があるとはいえない。

3 よって、本件不同意決定は「処分」に当たらない。

第2 設問2について

1 まず、Aは本件不同意決定の取消訴訟(行訴法3条2項)を提起することが考えられる。しかし、取消判決の拘束力は違法事由にしか及ばず(33条1項)、乙町長が本件施設の新築に同意するとは限らない。

そこで、Aは、乙町長の同意を得るべく、乙町を被告とし(38条1項・11条1項1号)、本件不同意決定の取消訴訟とともに、乙町長が本件施設の新築につき同意決定をすべき旨を命じることを求める申請型義務付け訴訟(3条6項2号)を併合して提起することが考えられる。

2 では、かかる訴えは訴訟要件を満たすか。

⑴ 取消訴訟について

ア まず、本件不同意決定は「処分」に当たる。

イ 次に、Aは本件不同意決定の直接の相手方だから、本件処分の「取消しを求めるにつき法律上の利益を有する」(9条1項)といえ、原告適格を有する。

ウ また、Aは本件不同意決定を取り消すことで本件施設の建築を進めても乙町長から中止勧告又は中止命令(本件7条1号)、それに伴う公表(本件条例8条1項)といった不利益を受けることがなくなるのだから、本件訴えによって自己の法的利益を回復することができ、訴えの利益も認められる。

エ  さらに、2011年7月上旬時点では、Aが「処分……があったことを知った日」である同年2月18日から「6箇月」以内で、出訴期間(行訴法14条1項本文)も満たす。

オ したがって、取消訴訟は訴訟要件を満たす。

⑵ 申請型義務付訴訟について

ア まず、本件不同意決定は違法であるから、「法令に基づく申請……を……棄却する旨の処分……がされた場合において、当該処分……が取り消されるべきもの」(37条の3第1項2号)であるといえる。

イ 次に、Aは本件条例3条に基づいて本件施設の新築の同意を求めているから、「法令に基づく申請……をした者」(同条2項)に当たる。

ウ また、Aは本件不同意決定という「処分……に係る取消訴訟」(同条3項2号)を適法に提起でき、これを「義務付けの訴えに併合して提起」している。

エ したがって、申請型義務付訴訟も訴訟要件を満たす。

3 よって、Aは上記訴訟を提起すべきである。

以上

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