平成30年(2018年)予備試験商法答案

武藤遼のプロフィール

プロフィール

初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

問題はこちら

2018年商法問題

答案

第1 設問1について

1 Dは、甲社代表取締役のEに対し、議題及び公認会計士Fを監査等委員である取締役に選任する旨の議案の要領を定時株主総会の招集通知に記載することを請求している(303条1項、305条1項)。これらの請求が認められるためには、それぞれの要件を満たしている必要がある。

⑴株主提案権および議案の要領の通知請求権を行使するためには、「総株主の議決権の百分の一以上の議決権又は三百個以上の議決権」を「六ヶ月前から引き続き有する株主」である必要がある。

⑵Dは甲社の株式を1万株有する株主であるところ、甲社は100株をもって一単元の株式とする定めがある。これによれば、Dは、100個の議決権を有する株主ということになる。甲社の発行済株式総数は100万株であるから、甲社議決権の総数は1万個である。Dは、上記100個の議決権を平成24年から継続して有しているので、「総株主の議決権の百分の一以上の議決権又は三百個以上の議決権」を「六ヶ月前から引き続き有する株主」にあたる。

⑶したがって、Dは上記請求時にこれらの要件を満たしていたことになる。

2 ところが、本件では平成29年5月8日に、丙社に対して20万株の募集株式が発行されている。

⑴議決権については、基準日に株式を有する株主のみが議決権を行使できるとする基準日制度が定められ(124条1項)、甲社の定款には、毎年3月31日に最終の株主名簿に記載された議決権を有する株主が議決権を行使することができるとされている。

⑵しかし、基準日制度の趣旨は議決権の行使ができる株主の把握について会社の便宜を図る点にあるところ、基準日後に株主となった者の議決権行使を会社が許可することを認めている(同条4項)。丙社への募集株式発行にあたっては、丙社が5月29日に開催される定時株主総会において議決権行使をすることができることを甲社が認めている。そうすると、丙社に20万株の募集株式が発行されることにより、丙社は2000個の議決権を有することになり、この2000個の議決権を加えた総議決権数12000株に対し、Dは「総株主の議決権の百分の一以上の議決権又は三百個以上の議決権」を有しないことになる。

⑶したがって、Dは株主総会の時点では議題提案権および議案の要領通知請求権の要件を満たさないことになる。

3 この場合において、甲社が本件株主総会の招集通知にDの議題及び議案の要領を通知しなかったことは妥当といえるか。

⑴この点について、基準日に、株主提案権及び議案の要領通知請求権を行う株主がその要件を満たしていれば、同権利の行使は正当である。もっとも、株主提案権及び議案の要領通知請求権は一定の株式を有するがゆえに認められる権利であることからすれば、株主総会時もその要件を満たしていることが前提とされているといえる。そこで、基準日後に会社が提案者の議決権数を操作するために意図的に募集株式を発行するなどの特段の事情がない限り、株主総会時に要件を満たさない株主の議案の要領を招集通知に記載する必要はないと解する。

⑵これを本件についてみる。本件では、基準日後に丙社に募集株式が発行されているものの、これは甲社がDの議決権数を操作するために行なったというような事情はなく。上記特段の事情は認められない。

⑶したがって、甲社が本件株主総会の招集通知にDの議題及び議案の要領を通知しなかったことは妥当である。

第2 設問2について

1 損害賠償責任の有無

⑴ 甲社の取締役であり「役員」たるBは、甲社に対して423条1項の損害賠償責任を負うか。

ア 「任務を怠った」とは、法令または定款違反をいう。

(ア)356条1項2号にいう「自己又は第三者」とは、間接取引との区別を明確にするため、自己又は第三者の名義においてを意味すると解する。甲社の「取締役」であるBは丁社を代表して本件賃貸借契約を行なっており、「第三者」丁社の名義において丁社の「ために」甲社と「取引」をしたといえ、本件賃貸借契約は直接取引(同号)に該当する。

(イ)利益相反取引が行われた場合、取引を行った取締役は取締役会に対して重要な事実を開示する必要があるところ(356条1項柱書、365条1項)、Bはこの手続きを行っていない。

(ウ)したがって、356条1項柱書、365条1項に違反しており、「任務を怠った」といえる。

イ 本件賃貸借契約による賃料は1ヶ月300万円であるが、これは周辺の相場の2倍に相当する額であり、丁社に不当に有利な額であった。そのため、平成29年7月1日から平成30年6月30日までの12ヶ月間において、1ヶ月あたり150万円多く賃料を支払っていた。そのため、Bの任務懈怠「によって」1800万円の「損害」が生じたといえる。

⑵よって、Bは、甲社に対して423条1項の損害賠償責任を負う。

2 損害賠償額

⑴本件賃貸借契約により生じた損害は前述の通り1800万円であるが、Bは甲社と最低責任限度額を定めた契約を締結している(425条1項)。これにより、Bの損害賠償額に変化があるか。

ア 同項の「職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない」とは、会社に対する任務懈怠が会社に損害を及ぼすことを知らなかったか、もしくは損害を及ぼすことにつき注意を怠っていなかったことをいう。

イ 本件賃貸借契約で定められた賃料は周辺の相場の2倍に相当する額で、丁社に不当に有利な額であった。本件賃貸借契約の締結にあたっては、Bの意向が尊重されたものの、賃料の相場についてBが悪意であったといえる事情はない。しかし、Bは丁社を代表しており、丁社が保有する土地の賃料の相場について調査することは容易であったといえる。そのような調査を欠いたBは、任務懈怠により会社損害を及ぼすことにつき注意を怠っていなかったとはいえない。

ウ したがって、責任限定契約は本件において適用されない。

⑵よって、損害賠償額は1800万円である。

以上

メルマガやってます

司法試験、予備試験合格のために
さらに詳しい情報が知りたい方はメールマガジンに登録してください。
もちろん無料です。
メルマガでは、
より具体的な話をしております。

無料なので、
興味がある方は
ぜひご登録ください。

大好評いただいていて、
メールマガジンでしか流さない話もよくしてますし、
メルマガ限定企画も流しますし、
ここまで読んでいただいた方は、
登録して損することはないかと思われます。

下記から登録できます。
武藤遼のメールマガジンはこちら