平成30年(2018年)予備試験民事実務基礎答案
武藤遼のプロフィール
初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]
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答案
第1 設問1について
1 小問⑴について
⑴弁護士Pが取りうる法的手段
YがAに対して有する80万円の売買代金債権(以下、「本件債権」という)に対する仮差押命令の申立て(民事保全法20条1項)。
⑵上記手段を講じなかった場合に生じる問題点
弁護士Pが本件債権に対して、仮差押命令の申立てをし、同命令が裁判所から発せられた場合、Yは本件債権を処分することができなくなる。しかし、上記命令の申し立てをしなかった場合に、Yが本件債権を第三者に譲渡してしまうと、Yには他にめぼしい財産がないため、金銭執行(民事執行法143条以下)が困難となる。また、本件債権の処分が行われた場合、処分を取り消すためには、詐害行為取消訴訟(民法424条1項)を提起しなければならず、Xにとって負担になる。このように、弁護士Pが本件債権に対して仮差押命令の申立てをしなかった場合、強制執行が困難になるおそれが生じるという問題がある。
2 小問⑵について
消費貸借契約に基づく貸金返還請求権
履行遅滞に基づく損害賠償請求権
3 小問⑶について
被告は、原告に対し、金100万円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。
4 小問(4)について
①原告は、被告に対し、平成27年9月15日、金100万円を貸し付けた。
②原告と被告は、①に際し、返還時期を平成28年9月30日と定めた。
③平成28年9月30日が到来した。
第2 設問2について
1 小問⑴について
本件貸金返還債務の履行として、平成28年9月30日に100万円を支払った
2 小問⑵について
⑴ (i)について
アの売買契約に基づく代金債権を持って、請求原因の消費貸借契約に基づく貸金返還請求権のうち対等額について相殺する旨の意思表示をした
⑵ (ii)について
ア 結論
当該事実を主張することは必要である。
イ 理由
Yは、自働債権の発生原因事実を抗弁事実アで主張しているところ、アの売買契約は双務契約であるから同時履行の抗弁権(533条)が付着することになり、同時履行の抗弁権の存在効果により相殺が許されなくなる。そこで、Yは、自働債権の抗弁権の発生障害または消滅原因を抗弁事実として主張する必要がある。したがって、反対債務を履行したことについての具体的事実として当該事実の主張が必要となる。
第3 設問3について
民法508条は、時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺適状になっていた場合には例外的に相殺が許されるとしている。本件売買代金支払債権は平成19年10月1日に発生しており、すでに弁済期にあったと考えられるところ、本件貸金返還請求権との関係では、その弁済期である平成28年9月30日にはすでに相殺適状にあったと考えるべきである。そのため、時効完成期間たる平成29年10月1日より以前に相殺適状にあったといえるから、民法508条により例外的に相殺が許される。これらの事情から、弁護士Pは、消滅時効の援用の主張を断念したと考えられる。
第4 設問4について
本件通帳の記載から、Yは、平成28年9月28日に50万円、その翌日である29日に50万円を引き出した事実が認められる。そして、Yは、平成28年9月30日にXと会い、レストランで食事をおごっている。50万円という大金を2日連続で引き出すことは通常生活の中では起こりがたい事実であり、Yが同日を期限とする100万円の貸金返済債務を負っていたことを合わせ考えれば、合計100万円の引き出しは、上記債務の返還のためのものと考えることができる。そして、平成28年9月30日、YはXと会い、レストランで食事を引き出した100万円をXに渡した。この時、Yは、Xから、「領収書 確かに100万円を受け取りました。」との文言、日付、およびXの氏名を記載した領収書を受領した。そのため、上記100万円の引渡しは本件消費貸借契約の債務の履行として行われたものであるといえる。
Yは、この領収書を証拠として提出できていないが、それは、Yが平成28年8月31日に現在の住所に引越しをした際(本件住民票)、処分してしまったためである。また、平成29年9月半ばごろに、Xが同窓会費を遣い込んでいたことをYが他の同窓会幹事たちの面前で指摘し、それをきっかけにXが幹事を辞任するということがあった。このことからXはYを恨んでいるといえ、Xはこの恨みから、Yが返したはずの金を返していないと言っているにすぎない。
以上を総合すれば、弁済の事実があったことは明らかである。
以上
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