平成30年(2018年)予備試験刑事訴訟法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2018年刑事訴訟法問題

答案

第1 設問1について

1 ①の行為について

⑴①の行為は、所持品検査に当たるところ、そもそも所持品検査が許されるか否かがまず問題となる。

ア この点について、警察官職務執行法2条1項は職務質問について規定するのみであるが、所持品検査は口頭による質問と密接に関連し、かつ職務質問の効果をあげる上で必要性・有効性の認められる行為であるから、同項による職務質問に付随してこれを行うことができると解する。

イ これを本件についてみる。甲は、Pと目が合うや、急に慌てた様子で走り出している。甲とPがいた地域は凶器を使用した強盗犯罪等が多発している地域であり、かかる甲の様子から判断すると、甲が凶器や覚せい剤等の禁制品を所持している可能性があることがうかがわれ、「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当の理由」(警察官職務執行法2条1項)があるといえる。

ウ したがって、所持品検査を行うこと自体は違法にはあたらない。

⑵そうだとしても、①の所持品検査はPの承諾を得ていない。このような承諾を得ない所持品検査が許されるのかが問題となる。

ア この点について、任意手段たる職務質問の付随行為として所持品検査が許される以上、所持品検査は、所持人の承諾を得て行われなければならないのが原則である。

ただし、常に承諾を要するとなると犯罪の予防・鎮圧という行政警察目的が達成できない。そこで、所持人の承諾がない場合であっても、捜索に至らない程度の行為は強制にわたらない限り、所持品検査の必要性・緊急性、これにより侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡等を考慮し、具体的情況の下で相当と認められる限度において許容され得ると解すべきである。

イ これを本件についてみる。Pが検査したのはシャツの上から見える部分であり、このような外部に晒されている部分の検査は外出している以上プライバシーの制約として受任すべき限度である。また、Pはへそ付近を右手で触っただけであり、制約の程度も軽微である。そのため、①の行為は捜索に至らない程度の行為である。

そして、Pと目が合い急いで逃げ出すという行動やシャツのへそ付近が不自然に膨らんでいることからすれば、所持品検査をする必要性があったといえる。また、この地域では凶器を使用した強盗犯罪等が多発していることもあり、地域住民に対する被害を防ぐため緊急性もあったといえる。これに対し、甲の受ける不利益はへそ付近を右手で触られるという軽微なものであり、上記必要性・緊急性を上回る不利益があったとはいえない。

ウ したがって、具体的状況の下で相当と認められる限度であったといえる。

⑶よって、①の行為は適法である。

2 ②の行為について

⑴②の行為も所持品検査であるところ、①の行為により、甲のへそ付近にはペンケースくらいの大きさの物が隠されていることがわかった。そして、その中身を見せるよう頼んだところ、甲は拒否しており、②の行為の当時においても所持品検査をする合理的理由があったといえる。

⑵次に、②の行為も①の行為と同様に甲の承諾を得ていない。②の行為を見るに、甲を羽交い締めにして甲の両腕を腹部から引き剥がすという強度の有形力を用い、シャツの中に手を差し入れてズボンのウェスト部分に挟まれていたものを取り出している。これは、外部に晒されていない部分についてその中身を確認するものであり、甲のプライバシー侵害の程度は大きく、捜索に当たる行為といえる。

⑶よって、②の行為は違法である。

第2 設問2について

1 本件覚せい剤は②の行為によって得られた証拠であるところ、②の行為は前述の通り違法なものである。そこで、本件覚せい剤は、違法な行為により得られた証拠であるとして、証拠能力が否定されないか。違法収集証拠排除法則の可否及びその判断基準が問題となる。

⑴この点について、適正手続、司法の廉潔性、将来の違法捜査の抑止の観点から、原則として違法収集証拠の証拠能力は否定される。

しかし、些細な違法があったにすぎない場合にも証拠能力を否定すると、真実発見(1条)の見地から妥当ではない。そこで、①令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、

②これを証拠とすることが許容することが相当でない場合に証拠能力が否定されると解する。

⑵これを本件についている。②の所持品検査は甲に強度の有形力を行使し、そのプライバシーを大きく侵害するものであり、捜索に当たる行為といえるものであった。捜索を行うにあたっては、捜索差押許可状が必要であるところ(刑事訴訟法218条1項)、Pはこの手続を行わず、捜索差押許可状がないまま甲のシャツの中に手を差し入れてズボンのウェスト部分に挟まれていたものを取り出している。このようなPの行為には、令状主義(憲法35条、刑事訴訟法218条1項)の精神を没却するような重大な違法があるといえる(①不充足)。

そして、所持品検査は行政警察活動であり、令状なくして行える行為であるところ、所持品検査を通した実質的な捜索行為を防止することは将来の違法捜査抑止の観点から重要であるといえる。そのため、本件覚せい剤を証拠として許容することは、将来の違法捜査抑止の観点から相当であるとはいえない(②不充足)。

⑶したがって、本件覚せい剤は違法収集証拠にあたる。

2 よって、違法収集証拠排除法則により、本件覚せい剤に証拠能力は認められない。

以上

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