国際私法平成30年(2018年)司法試験第1問答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2018年司法試験国際私法

答案

第1 設問1について

1 本件遺産分割は、「相続」の問題として法の適用に関する通則法(以下、「法」という。)36条によって決定される。

⑴ 同条は、被相続人の本国を連結点とする。その趣旨は、被相続人の保護の観点から被相続人の属人法により判断する点にある。本件の被相続人であるDの本国は甲国であるから、本件遺産分割の準拠法は甲国法となる。

⑵ 甲国民法によれば、嫡出子及び配偶者は、第1順位の相続人となる(⑥)。したがって、CがDの嫡出子であれば、Cは本件遺産分割における相続人となる。

2 CはA B間の嫡出子であるところ、Cが相続人となるためには、その前提としてC D間に親子関係が成立している必要がある。そこで、本件遺産分割(本問題)を行う前提としてのD C間の親子関係の成否(先決問題)をいかにして決定すべきかが問題となる。

⑴ この点について、先決問題について本問題の準拠法所属国の国際私法によるべきとの考え方もある。しかし、渉外的法律関係を単位法律関係に分割して、それぞれにつき準拠法を決する国際私法の構造を考えれば、先決問題は本問題の準拠法の適用に際して初めて生じた問題ではなく、当初から生じていた問題であるといえる。また、同じ単位法律関係について、それが本問題となる場合も先決問題となる場合も、同一の法律所内で解決を異にする理由はない。そこで、先決問題についても法廷地の国際私法により定める準拠法により判断すべきと解する。

⑵ これを本件についてみる。法廷地は日本であるから、D C間の親子関係については日本の国際私法によって判断することとなる。

ア CはA B間の嫡出子であるところ、CはAがDと再婚したことにより、一緒に暮らすに至った。このような再婚による親子関係の成否については、法に規定がない。この点について、親子関係の成否は子の保護を目的として考えるべきであるところ、非嫡出子親子関係よりも嫡出親子関係の方が子の保護に適うことから、法28条を類推適用してその準拠法を決定する。

イ 法28条は、抵触法上の両性平等と子の嫡出子の身分取得の容易化の観点から、夫婦一方の本国法によって子の嫡出性が認められればその子を嫡出子とする選択的連結を採用している。本件において、再婚時におけるAの本国は日本であり、Dの本国は甲国である。そのため、日本法または甲国法のいずれかで嫡出親子関係が認められればよい。

ウ 甲国民法によれば、親が再婚した場合、前婚の子は、後婚の嫡出子としての法的地位を取得する(⑤)。したがって、Cは、甲国法によりDの嫡出子としての身分を取得する。

⑶ よって、D C間に親子関係が成立する。

第2 設問2について

1 本件遺産分割は甲国法によって判断されるところ、Aが再婚した平成19年当時の民法によれば、前婚の子は、後婚の嫡出子としての法的地位を取得する(⑤)。そのため、AがDと再婚したことにより、CはDの嫡出子としての法的地位を取得することになる。

2 もっとも、甲国において、同規定は平成22年12月31日をもって廃止され、かつそれまでに同規定により発生した親族関係は同日をもって消滅するとの法改正がなされている。そのため、本件遺産分割において、CとDの親子関係は消滅しており、CはDの相続人とならないのではないか。

⑴ この点について、場所的な法の抵触を問題とする国際私法とは異なり、時間的な法の抵触という問題は当該準拠法国内の問題である。したがって、新法と旧法の何を適用するかは、準拠法国内の経過規定によって決せられると解する。

⑵ これを本件についてみる。甲国では、法改正により、平成22年12月31日以前の親子関係は同日をもって消滅しており、かかる法改正に従えば、D C間の親子関係は甲国法上消滅している。

⑶ よって、CはDの相続人とならない。

第3 設問3について

1 Cは、本件遺産分割が行われる前に行われた不動産の持分移転登記の無効を争っているところ、かかる問題についての準拠法決定規則は法に存在しない。そのため、いかにして準拠法を決定すべきかが問題となる。

⑴ この点について、いかなる財産が相続の対象となるかは相続の問題として法性決定されるのであるか、そのような財産を遺産分割前に共同相続人が処分できるかという問題も相続の問題として法性決定すべきである。もっとも、不動産の処分を考えるにあたっては取引の安全も重視すべきであるから、不動産の所在地法も累積的に適用し、いずれかの法によってその処分が有効であれば、当該財産の処分は有効であると解する。

⑵ これを本件についてみる。被相続人であるDの本国は甲国であるところ、甲国民法によれば、遺産分割前の相続財産は、共同相続人全員の同意がなければその持分を処分することができない。これに対し、本件において持分移転登記がなされた不動産は日本に所在している。日本法によれば、遺産の分割は相続開始の時に遡って効力を生じるとされ(民法909条)、共同相続人による遺産分割前の財産の処分を禁じていない。

⑶ したがって、Cによる不動産の処分は有効である。

2 よって、Cの請求は認められない。

以上

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