平成29年(2017年)予備試験商法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2017年商法問題

答案

第1 設問1

1 A社がX社に対して募集株式1万株を発行するにあたり、A社のX社に対する5億円の金銭債権を利用するためには、A社のX社に対する金銭債権を自動債権として相殺するという方法をとることが考えられる。

2⑴ここで、会社法(以下略す)207条3項は、募集株式の払込みにあたり、引受人が出資履行債務と株式会社に対する債権を相殺することを禁止している。しかし、同項の文言上、募集株式の引受人からの相殺が禁止されているだけで、会社からの相殺は禁止されていない。そこで、会社から相殺を行うことは、同項に反しないと解する。

⑵ア また、同項の趣旨は、会社の資本を充実させることにある。そうすると、自動債権とする金銭債権の弁済期が到来している場合は、相殺したとしても会社の資本が侵害されるおそれはない、しかし、弁済期が未到来の場合は、会社の資本が侵害されるおそれがある。そのため、弁済期が未到来の場合は、検査役による調査が必要となる(207条1項)。

イ 本件においては、A社のX社に対する5億円の金銭債権の弁済期は、平成28年7月1日である。そのため、本件株式出資の払込み履行期期日である平成28年5月27日の時点では弁済期が未到来である。

ウ したがって、X社が相殺を行うためには、検査役による調査を経る必要がある。

3 以上のことから、X社は、A社のX社に対する5億円の金銭債権について、検査薬による調査を経れば相殺するという方法をとることができる。

第2 設問2

⑴CはZ社に対して株主代表訴訟(847条1項)を提起して、213条の2第1項の責任を追及することが考えられる。

ア まず、Cが上記訴えを提起するためには、6ヶ月前から引き続き株式を有する株主でなければならない。(847条1項)

イ 次に、本件Z社のX社に対する払込みが見せ金にあたり、「払込みを仮装した」(213条の2第1項1号)といえないか。

(ア)この点について、見せ金は形式的には金銭の移動があるが、実質的に見れば払込みを仮装するための一連の手段に過ぎず、見せ金による金銭の払込みは無効であると解する。そのため、金銭の払込みが見せ金にあたる場合、「払込みを仮装した」といえる。

そして、払込みが仮装であるといえるためには、①借入金を返済するまでの期間の長短、②払込金が会社資金として運用された事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無を総合的に考慮して判断すべきである。

(イ)これを本件についてみる。X社はZ社から払込みがされた平成29年2月1日の翌日である2日に借入金債務を弁済しており、期間は極めて短いといえる(①)。そのため、払込金がX社の会社資金として運用された事実もない(②)。借入金を翌日に返済し、会社に資金がなくなったことから、Z社の事業の状態は悪化している(③)。このことから、借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響は大きいといえる。

(ウ)したがって、本件払い込みは、払込時からX社に資金を調達する目的はなく、見せ金にあたる。そのため、Z社は「払込を仮装した」といえる。

⑵よって、CはZ社に対して上記責任を追及することができる。

2 Yに対する責任追及

⑴CはYに対して株主代表訴訟を提起して、213条の3第1項の責任を追及することが考えられる。

⑵本件払込みをするにあたり、YとZ社は協議した上でZ社がY社の連帯保証を受けて払込金を金融機関から借り受けていた。そのため、Yは、「出資の履行を仮装することに関与した」(213条の3第1項)といえる。

⑶よって、CはYに対して上記責任を追及することができる。

第3 設問2⑵

1 本件において、Bが議決権を行使するためには、Bが「募集株式を譲り受けた者」(209条3項)であって、株式会社が定めた基準日(124条)に株主名簿に記載されていなければならない。

2 ここで、本件株式は、仮装払込みによって発行された株式であり、有効といえるか問題となる。これに対しては、引受人に悪意または重大な過失がない限り有効に権利を行使できる。(209条3項)

3  本件では、B社はZ社から代物弁済により株式を「譲り受け」(209条3項)ており、「募集株式を譲り受けた者」(209条3項)にあたる。

また、B社は平成29年5月29日にX社から株主名簿の名義書換えを受けており、これはX社の定時株主総会の基準日である同年5月31日より前であるため、124条1項の要件を満たす。

4 よって、B社は、仮装払込みについて「悪意または重大な過失」(209条3項ただし書き)がない限り、X社の株主総会において当該株主につき議決権を行使することができる。

以上

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