平成29年(2017年)予備試験民事実務基礎答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2017年民事実務基礎問題

答案

第1 設問1について

1 小問⑴について

⑴採り得る法的手段

本件壺の占有移転禁止処分の仮処分の申し立て

⑵手段を講じなかった場合に生じる問題点

本件訴訟の言渡前に、Yが本件壺の占有を第三者に移転した場合、Xが本件訴訟で勝訴したとしてもその既判力が第三者に及ばない(民事訴訟法115条1項1号)。そのため、Xがその第三者から本件壺の引渡しを受けるためには、その第三者に対してまた別個の訴訟を提起する必要が生じる。

2 小問⑵について

本件壺の所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権

3 小問⑶について

①平成27年3月5日当時、本件壺を所有していた。

②Xは、平成28年5月1日、Bから本件壺を代金150万円で譲り受けた。

③Yは、本件壺を占有している。

4 小問(4)について

⑴主張の内容

Xが、Bを本件壺の所有者と信じて、占有改定により引渡しを受けたことによって、即時取得(民法192条)によりその所有権を取得したということ。

⑵主張を断念した理由

即時取得が認められるためには、動産の「占有を始めた」といえる必要がある。しかし、即時取得の趣旨が動産取引の安全を計るところにあるところ、占有改定による引渡しは外部に対する公示がないため、「占有を始めた」とはいえない。そのため、占有改定によっては即時取得が認められない可能性が高いからである。

第2 設問2について

1 小問⑴について

対抗要件具備による所有権喪失の抗弁

即時取得の抗弁

2 小問⑵について

⑴主張しないこととした抗弁

対抗要件具備による所有権喪失の抗弁

⑵主張しないこととした理由

上記抗弁において、Yは、対抗要件として平成28年5月15日にAから本件壺の引渡しを受けたことを主張すると考えられる。しかし、本件訴状では、Aは、Bに対し本件壺を3月5日に売ったとされていることから、BはYより前に本件壺を占有していたことになる。そのため、Bの方がYよりも先に対抗要件を具備したとの再抗弁が認められる可能性が高いといえるから。

第3 設問3について

1 小問⑴について

本件領収書は、私文書であるところ、私文書は、本人の署名または押印があるときは、申請に成立したものと推定される(民事訴訟法228条4項)。本件領収証にはBの記名とB名下の印影が存在する。しかし、Bの記名はプリンターで打ち出されたものであり、「本人…の署名」にあたらない。また、印影についても、Bは、Xが勝手に押印したものだろうとして自己の押印によるものではないと主張している。そのため、本人の…押印」にあたらない。したがって、裁判所は、Bの記名及びB名下の印影が存在することをもって、本件領収書の成立の真正を推定することはできないと考えることになる。

2 小問⑵について

⑴XがBに150万円を支払った事実について

 Bは、Xが平成28年5月1日にBの家を訪れたことを認めており、また、同日にXが150万円を引き出したことをBの代理人である弁護士Rが認めている。Xは、Bから150万円でなら本件壺を売ってもよいと言われたことを受け、上記150万円の引き出しを行っている。150万円という金額は、日常生活を営む上で通常持ち歩く額ではなく、即時に費消することを目的として同額を引き出したと考えられる。同日、XがBの家を訪れていたことを考えれば、150万円はXに対して支払われたと考えることが相当である。

また、XがB宅を訪れたそのわずか1日後にBは、Aに対し、200万円を返済している。Bが150万円を5月1日以前に工面できていれば当然返済できていると考えられるところ、XがBに150万円を支払ったとされる翌日にBがAに対し200万円という高額の返済をしていることを考慮すれば、この200万円の中には、Bが渡したとされる150万円が含まれている可能性が高い。Bは200万円を父親から借りたとしているが、貸し借りについての書面がなく、Bの主張は信頼性に欠けるものである。以上を考慮すれば、XがBに150万円を支払った事実が認められるといえる。

⑵BがXに対して本件壺を売った事実について

Xは、Bに対して150万円を支払っているところ、XとBは平成28年5月1日に初めて顔を合わせた関係である。会ったばかりのBに対し、Xが理由なく150万円もの高額を払うことは考えられない。Bはその日Xに対して本件壺を見せているところ、Xは骨董品の収集が趣味であった。そうだとすれば、Xは、本件壺を購入するために初見のBに対し、150万円もの大金を現金で支払ったのだと考えることができる。骨董品の壺を考えれば、150万円という代金額は妥当であり、XがBに対してそれ以外の理由で同額を支払う理由は他にない。以上のことから、BがXに対して本件壺を売った事実が認められる。

以上

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