平成29年(2017年)予備試験行政法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2017年憲法問題

答案

第1 設問1

1 Aは、国家賠償請求訴訟において、本件申請に対する許可の違法性につき、内容証明郵便を送付した時点から、「違法」(国家賠償法1条1項)になると主張する。

2 本件の留保は、事実行為たる行政指導(行政手続法(以下、「行手法」という)2条6号)であり、住民と十分に協議し、紛争を円満に解決する目的で行われたものである。

行政指導は、「相手方の任意の協力」(32条1項)に基づいて行われるものである。そして、申請に関して「内容の変更を求める」際に、申請者が従う意思がない旨を表明している場合、行政指導の継続により、従うことを余儀なくさせてはならない(33条)。

そして、申請者が不服従・不協力の意思を明確にしている場合には、行政指導の継続によって申請者が被る不利益と達成できる公益とを比較衡量して、行政指導に対する不協力が正義の観念に反すると認められる特段の事情がない限り、以降の行政指導の継続は国家賠償法上「違法」となると考える。

3 これを本件についてみる。本件では、AがBに対し、直ちに本件申請に対して許可をするように求める旨の内容証明郵便を提出した時点で、Aの不服従・不協力の意思が明確になったといえる。

そして、甲県としては、留保によって達成できる公益は住民と十分に協議し、紛争を円満に解決できるところにあるところ、Aは住民を装ったA社従業員を説明会に参加させたり(ア)、手狭な説明会場を準備し、反対派住民が十分に参加できない形で説明会を運営する(イ)など反対派住民に対して不誠実な行動をしているから、行政指導の継続によるAの不利益を考慮してもなお上記公益を保護する必要性が高く、上記特段の事情があると反論することが考えられる。

しかし、(ア)については、従業員を参加させることで、住民に対し、安全性に対する理解を深めてほしいという考えに基づいており、真摯な対応であったといえる。また、(イ)について、説明会を開催するにあたっては、会場が物理的に制約されてしまう。そのため、反対派住民全員が会場に入ることができなかったのはやむを得ないことであった。さらに、Aは反対派住民の参加を一切拒んだわけではない。

このように、説明会を円滑に行うことで、住民の理解を促進したという点でAは誠実な対応をしようとしていたといえる。そして、Aが、再度、本件提案を試みた姿勢からも問題の解決に向けてなしうる努力を尽くそうとしていたといえる。他方で、内容証明郵便の送達から10ヶ月間、本件許可が留保されたことにより、建築資材の価格の上昇という不利益をAは被っている。上記のようなAの真摯な対応からすれば、このような不利益をAに負わせるべきではなく、行政指導に対する不協力が正義の観念に反すると認められる特段の事情があるとはいえない。

4 よって、Aが内容証明郵便を送付した時点から、本件の留保は「違法」となる。

第2 設問2

1 本件の取消訴訟において、CおよびC2に原告適格が認められるためには、CおよびC2が「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)9条1項)に当たることが必要である。

⑴この点について、「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されまたは必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべき趣旨を有すると解される場合には、かかる利益も「法律上保護された利益」にあたると解する。

⑵本件では、CおよびC2は本件許可の名宛人ではないため、「処分の相手方以外の者」(同条2項)にあたるので、同項を参酌する。

2⑴本件におけるCおよびC2の被侵害利益としては、栽培する農作物が汚染されない利益、汚染物質により健康被害を受けない利益がそれぞれ想定される。

⑵本件許可の根拠法令は、法15条1項である。法は、許可申請に際し、「周辺住民の生活環境に及ぼす影響」について、調査の結果を添付した書類を必要とし(同条3項)、施工規則11条の2で、大気質、水質、地下水等について、調査項目を設けるなど、周辺地域の生活環境に特に配慮するよう求めている(同条各号)。

また、公衆への縦覧制度(15条4項)や利害関係人の意見書提出の制度(同条6項)から、処理場の設置により周辺住民の生活環境が大気や地下水の汚染から害されないように配慮することを「法の趣旨及び目的」としているといえる。

そして、このような被害は、本件処理場に近接するほど増大する。さらに、一旦処理場が建設されると、以後継続して被害を受けることになる。また、生命・身体の安全といった利益は最も保護されるべき利益であり、農作物の汚染が住民の生活に及ぼす不利益は甚大である。

このような被害の内容程度や権利利益の性質を考慮すると、法は本件処理場の周辺に居住する者が本件処理場から排出される汚染物質により生活環境を害されないという具体的利益を保護しようとしているものと解され、このような具体的利益は一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものである。そこで、本件処理場の周辺に居住し、本件処理場から排出される汚染物質による直接的な被害を受けるおそれがある者は「法律上の利益を有する者」にあたると解する。

⑶これを本件についてみる。まず、C1は本件予定地から下流側に約2キロメートル離れた場所に居住している。そして、C1は居住地内の果樹園で高級ぶどうを栽培しているところ、汚染された地下水によりぶどう栽培に直接的な被害が生じるおそれがあるといえる。他方、C2は本件予定地から500メートル上流に居住している。しかし、汚染水がC2の居住地に到達するおそれはなく、地下水を飲用していてもC2の生活環境に直接的な影響があるとはいえない。また、有害物質が風等の影響で飛散してもC2の居住地に到達するかどうかは定かではなく、直接的な影響があるとまではいえない。

(4)したがって、C1は「法律上の利益を有する者」にあたるが、C2は「法律上の利益を有する者」にあたらない。

3 よって、C1に原告適格が認められるが、C2には認められない。

以上

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