平成28年(2016年)予備試験民法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2016年民法問題

答案

第1 DのBに対する請求

1  DはBに対し、解除に基づく原状回復請求権(545条1項本文)として、500万円の返還を請求することが考えられる。

甲機械は遺贈によりCの所有物となっており、BD間の本件売買契約は他人物売買に当たる。そして、Dは本件売買契約を解除(542条1項1号)しており、これにより甲機械の売主であるBは原状回復義務として売買代金の500万円をDに返還する義務を負う。よって、Dの請求は認められる。

2 次に、Dは乙機械を購入するために要した増加代金分の費用(40万円)について、損害賠償請求をすることが考えられる(415条2項1号)ところ、40万円が「損害」に当たるかが問題となる。

⑴この点について、416条の趣旨が損害の公平な分担であることにかんがみ、同条1項は相当因果関係の原則を規定し、同条2項は、その基礎とすべき特別の事情の範囲を示したものと規定する。

⑵これを本件についてみる。Bの過失は、甲機械の所有者がCであることをDに伝えなかったことであり、これによってDが甲機械を返還するという損害は通常生じる損害といえるが、甲機械に代わる乙機械購入のための増加費用は通常生ずべき損害とはいえない。しかし、甲機械を手放さざるを得ない場合、これに代わる機械の購入を検討することは当事者にとって予想可能な事情であるといえる。そうだとすれば、乙機械の購入により40万円という追加費用が生じたことはBの債務不履行と相当因果関係に立つ損害といえる。

⑶したがって、40万円は「損害」にあたり、上記損害賠償をすることができる。

3 さらに、DはBに対し、甲機械の修理による甲機械の増加価値分(50万円)の不当利得返還請求をすることが考えられる。しかし、甲機械の所有者はCであるから、修理によってBが「利益」を受けたとはいえず、上記請求は認められない。

第2 DのCに対する請求について

1 DはCに対し、上記50万円の不当利得返還請求をすることが考えられる。

⑴甲機械の修理により、Dは30万円の「損失」を受け、Cは甲機械の価値増加分である50万円の「利益」を得ている。そして、両者の間には社会通念上因果関係があるといえる。

⑵では、「法律上の原因」がないといえるか。

ア まず、Dは「義務なく」「他人」Cのために甲機械の修理という「事務の管理」を行っており、甲機械の修理に事務管理が成立する(697条1項)。そのため、修理費用30万円は「有益な債務」として、DはCに代弁済請求権(702条2項、650条2項)を有する。

イ そして、本件売買契約の解除に際し、CはDから甲機械の返還を受けており、客観的に見て50万円の価値が増加した甲機械の返還を受けているわけだから、その「利益」の保持に「法律上の原因」がないとも思える。

しかし、本件売買契約は他人物売買であるところ、本件売買契約の締結にCの了承がない以上、Dは当初から甲機械を占有する権限を有していなかったのだから当事者の公平の観点から295条2項を類推適用し、Cの「利益」の保持に「法律上の原因」は認められると考える。

ウ そうだとしても、当事者間の公平を貫徹するため、甲機械の修理費用に相当する30万円については、「法律上の原因」が認められないと考える。

⑶したがって、30万円の限度において、上記請求は認められる。

第3 BのDに対する主張について、

 甲機械の所有権はCにある以上、Dの甲機械の占有によって、Bに「損失」はないから、甲機械の使用期間に応じた使用料相応額(25万円)について、不当利得返還請求をすることはできない。

第4 CのDに対する主張について

1 では、CはDに対し、上記不当利得返還請求(704条)をすることはできないか。

⑴甲機械のDの使用により、その使用料相当額たる25万円の「利益」をDは受け、Bは同額の「損失」を被っている。そして、両者の間には、社会通念上因果関係がある。

⑵では、「法律上の原因」がないといえるか。

ア まず、Dは甲機械がCの所有であることにつき、「悪意」であったから、Dは甲機械の即時取得(192条)ができない。

イ そして、Dは「悪意の占有者」であるから、果実と同視しうる使用利益を収受することはできない(190条1項類推)。そして、190条1項は不当利得の特則であるから、同項が適用される場合、不当利得の適用はない。

ウ したがって、「法律上の原因」がない。

⑶よって、上記請求は認められる。

2 そして、505条1項但し書きの趣旨は抗弁権喪失による不利益を回避することにあるところ、Bの不当利得返還請求とDの不当利得返還請求は相互に現実の履行をさせる利益はないから同項ただし書の適用はない。したがって、両請求は対等額において相殺が認められる(505条1項本文)。よって、Dの請求が認められる額から使用料相当額分を控除すべきであるとのCの主張は認められる。

                                 以上

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