平成27年(2015年)予備試験民法答案
武藤遼のプロフィール
初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]
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答案
第1 設問1
1 Fは、Bに対して、甲建物の所有権(206条)に基づき甲建物の明渡請求を行っている。かかる請求が認められるためには、甲建物のF所有とBの甲建物占有が認められる必要があるところ、Bは甲建物を占有している。
2 では、Fに甲建物の所有権が認められるか。
⑴Fは、C及びDから、本件売買契約により、甲建物を2000万円で買い受けている(555条)。甲建物は元々Aが所有していたところ、Aが死亡したことにより、相続人であるC及びDが、その所有権を相続により取得する(882条、887条1項、896条)。しかし、C及びDは、他の相続人Eの持分については無権利である。そのため、FはEの持分については権利を取得できず、甲建物の3分の2の共有持分権を有していることになる。
⑵一方、Bは、Aの生前にAから本件贈与契約によって、甲建物を譲り受けている(549条)ところ、これについて所有権移転登記を備えていない。Aの死亡により、相続人となったC及びDは、Fに甲建物の持分権を譲り渡している。共有持分権を譲り受けたFは、不動産に関する登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者といえ、「第三者」(177条)に当たる。そのため、C及びDの持分であった3分の2の持分について、BとFは対抗関係に立つ。そうすると、Fは、Bに先立ってC及びDの持分権について登記を具備していることから、この部分についてはFがBに優先することになる。
⑶したがって、Fは甲建物の3分の2の持分権をBに対して主張でき、この限りにおいてBに対して上記請求をできる。
3 そうだとしても、Fは、Eの持分については権利を取得しておらず、Eの持分の範囲においてはBが共有持分権を取得することになる。そのため、かかる範囲でBは甲建物を占有する権限を有する。
4 それでは、上記のような共有物である甲建物について、FはBに対し上記請求をすることができるのか。
⑴この点について、252条が共有物の管理に関する事項について、各共有者の持分の価格に応じた過半数で決すると規定していることからすると、過半数を超える持分を有する共有者は、少数持分権者に対し、共有物の明渡しを求めることができるとも思える。しかし、少数持分権者も自己の持分によって共有物を使用収益する権限を有する(249条)のであるから、過半数を超える持分を有する共有者であっても、当然に少数持分権者に対して共有物の明渡しを求めることはできないと解する。
⑵したがって、本件でも、Fが甲建物について過半数である3分の1の持分権を有するとしても、Bに対して甲建物の明渡しを求めることはできない。
5 以上より、FのBに対する上記請求は認められない。
第2 設問2
1 Bは、Eに対して甲建物の登記移転義務の履行不能による損害賠償請求(415条1項)をしていると考えられる。
⑴本件では、Aは、生前Bに対し本件贈与契約によって甲建物を贈与していることから、Aはこの契約によりBに対し甲建物登記移転義務を負う。かかる義務は、Aの死亡により、相続人であるC、D、及びEに移転する。ところが、C及びDが各持分をFに譲渡し、登記も具備したことによって、上記登記移転義務は履行不能になった。甲建物の登記移転義務は、不可分債務であるから、Fが登記を具備した時点で履行不能に陥り、損害賠償という可分債務に転化する。
⑵これに対し、Eとしては、上記義務が履行不能に陥ったのは、C及びDが甲建物の持分をFに売却したからであり、自らに過失がないため上記請求は認められないと反論することが考えられる。しかし、不可分債務については、債権者保護の観点から、債務者の一人について過失があれば、債権者は過失のない債務者に対しても請求できると解する。そのため、Eの上記反論は認められない。
⑶不可分債務であった登記移転義務が損害賠償という可分債務に転化した結果、C、D、及びEはそれぞれ3分の1の範囲について責任を負うことになる。
2 よって、Eは、Bに対し、3分の1の範囲で、甲建物の全部について所有権移転登記がされないことによって受けた損害の賠償について求めることができる。
以上
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