平成26年(2014年)予備試験行政法答案
武藤遼のプロフィール
初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]
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答案
第1 設問1について
1 行政手続法上の利点
⑴ 本件不許可処分を、占用許可申請を拒否する処分であると理解する法律論(以下「法律論①」という。)によれば、本件不許可処分は申請に対する処分に当たるため、A県知事は理由の提示(同8条)等の手続上の義務を負うが、聴聞手続は必要とされない。
⑵ これに対し、本件不許可処分を、占用許可の撤回処分であると理解する法律論(以下「法律論②」という。)によれば、本件不許可処分は不利益処分に当たるため、A県知事は、聴聞(同13条1項1号イ)、理由の提示(同14条)等の手続を行わなければならない。
⑶ このように、Cにとって、法律論②は本件不許可処分を行うにあたり行政側が行う手続が増えるという利点がある。
2 行政事件訴訟上の利点
⑴ 法律論①によれば、取消訴訟(同3条2項)により本件不許可処分を取り消したとしても、拘束力はA県知事が改めて処分をするという点にのみ及び(同33条2項)、再度不許可処分がされる可能性が残る。そのため、Cが本件敷地の占用許可を受けるためには、取消訴訟に申請型義務付け訴訟(同3条5項2号)を併合提起し、仮の義務付けの申立て(同37条の5第1項)をする必要がある。
⑵ これに対し、法律論②によれば、Cが上記目的を達成するには、本件不許可処分の取消訴訟を提起し、執行停止の申立て(同25条2項)をすれば足りる。
⑶ このように、Cにとって、提起すべき訴訟が少なく、訴訟要件、本案勝訴要件及び仮の救済手段の申立要件がより緩やかな手段を提起できるという利点がある。
3 実体法上の違法事由の主張における利点
⑴ 法39条2項は、要件が抽象的で、法1条の目的を達成するため政策的判断が必要だから、占用許可の許否についてA県知事に要件裁量が認められているといえる。そのため、法律論①によれば、実体法上の違法事由として、A県知事の判断が裁量の逸脱・濫用であることを主張する必要がある。
⑵ これに対し、法律論②によれば、Cは同様に裁量の逸脱・濫用を主張する必要があるが、本件不許可処分はCに本件敷地の占用を認めるという授益的処分の撤回であり、Cの被る不利益を上回るだけの必要性が認められる場合に限って撤回が許されると考えるべきである。
⑶ このように、Cにとって、法律論②の方が、裁量の逸脱・濫用が認められやすく、実体法上違法になりやすいという利点がある。
4 よって、以上のようなCにとっての利点があるために、Cは法律論②を主張していると考えられる。
第2 設問2について
1 小問⑴について
⑴ 法39条1項は、土地の占有について許可制を定めており、漁業管理者に許可をする権限を与えているといえる。そして、同条2項は「許可の申請に係る行為が特定漁港漁場整備事業の施行又は漁港の利用を著しく阻害し、その他漁港の保全に著しく支障を与えるものでない限り」、同条1項の許可をしなければならないと規定しており、文言上許可をするのが原則となっている。同条2項の趣旨は、行政財産の使用についての一般法である地方自治法の特別法として、漁港区城内の公共空地や水面の一部の利用を積極的に認めることによって、漁港漁場整備事業の推進及び漁港の適正な維持管理による国民生活ならびに国民経済の発展という法の目的(法1条)を達成する点にある。これらの規定内容からすれば、法39条2項に従って判断する法律論の場合、公共空地の占用許可が認められやすいといえる。
⑵ これに対し、地方自治法238条の4第7項は、「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度において」、使用を許可することが「できる」と想定しており、文言上許可をするか否かについて行政庁の効果裁量が認めている。また、同項の趣旨は、公共用財産は住民の共通の財産であって、住民誰もが自由に使用できるものであることから、許可権者の判断を経ることによって一私人の排他的かつ独占的な使用を防止する点にある。これらの規定内容からすれば、地方自治法238条の4第7項の定める基準に従って判断する法律論の場合、公共空地の占用が認められにくいといえる。
⑶ このように、A県側にとって、法39条2項に従って判断する法律論よりも、地方自治法238条の4第7項の定める基準に従って判断する法律論によった場合の方が、本件敷地の占用を認めない本件不許可処分を適法としやすいという利点がある。
2 小問⑵について
⑴ 前述の法39条2項と地方自治法238条の4第7項の趣旨から、どちらの基準により公共空地の占用許可を判断するかは、申請に係る利用が水産業の健全な発展という法の目的に関連するか否かにより決すべきである。
⑵ これを本件についてみる。Cの経営する飲食店は、当初は魚市場の関係者が利用しており、法の目的に関連するものであった。しかし、現在、Cは観光客などの一般利用者のみをターゲットとしている。また、観光客の誘致事業は、法1条にいう漁港漁場整備事業にも当たらない。そうだとすれば、Cの申請に係る利用は法の目的に関連するとはいえない。
⑶ よって、Cの申請は、地方自治法238条の4第7項により判断すべきであり、A県側の法律論は認められる。
以上
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