平成25年(2013年)予備試験民法答案
武藤遼のプロフィール
初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]
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答案
第1 設問1⑴について
1 下線部の契約(以下「本件契約」という。)の有効性
本件契約は、将来債権を含む集合債権譲渡担保設定契約に当たるが、かかる契約は有効か。
⑴ この点について、将来債権の譲渡は466条の6第1項によって認められるところ、債権譲渡契約は、目的債権が十分に特定され、当該契約が公序良俗(90条)に反するものでない場合に有効となると解する。
⑵ これを本件についてみる。本件契約の目的債権は、その発生原因をパネル部品の製造及び販売に係る代金債権とし、発生期間が今後1年間の代金債権とされており、他の債権と識別できるから、目的債権は十分に特定されているといえる。
また、本件契約の期間は1年間と比較的短く、本件契約が譲渡人Aの営業活動を制限したり債権者間の平等を著しく害するものではないから、本件契約が公序良俗に反するともいえない。
⑶ したがって、本件契約は有効である。
2 Bの甲債権の取得時期
甲債権は本件契約の目的債権に含まれるところ、Bが本件契約によって甲債権を取得するのはいつか。
⑴ この点について、債権譲渡担保設定契約は目的債権の帰属を変更するものであるが、将来債権は、通常の債権とは異なり契約時において未だ具体的に発生しておらず、発生していない債権の移転は観念できない以上、将来債権が譲渡担保設定契約締結と同時に移転すると考えるべきではない。そこで、将来債権は、契約後具体的に発生した時点で譲渡担保権者に移転すると解する。
⑵ これを本件についてみる。将来債権である甲債権は、平成25年3月1日にAC間で契約が締結されたことにより、具体的に発生したといえる。
⑶ したがって、Bは平成25年3月1日に甲債権を取得する。
第2 設問1⑵について
Cの立場からは、平成25年3月25日のAD間における免責的債務引受けの合意により、Cは甲債務を免れていると主張することが考えられる。かかる主張は認められるか。
1 まず、甲債権は同年3月1日にBに移転しているが、かかる債権譲渡についてBが債務者対抗要件(467条1項)を備えたのは、譲渡人Aが債務者Dに通知を行った同年5月7日である。そうだとすれば、上記合意が行われた同年3月25日の時点では、Cとの関係で甲債権の債権者はAであり、上記合意は債権者・引受人間でなされたものといえる。
2 免責的債務引受契約(472条1項)については、債権者と引受人との契約によって行うことができる(同条2項)。この場合には、債権者の債務者に対する通知が効力を発生させるための要件となる。そのため、AがCに対して、免責的債務引受契約が締結されたことを通知していれば、当該契約の効力が発生する。
3 また、CからDへの債務移転は上記合意がなされた同年3月25日に効力が生じており、Fによる差押命令がCに送達されたのは同年5月2日であるから、債務移転が差押命令の送達に先行している。したがって、上記契約の効力が発生していれば、Cは上記合意により甲債務を免れていることをFに対抗できる。
4 よって、AがCに対して上記契約の通知をしていた場合に限り、Cの上記主張は認められる。
第3 設問2について
1 本件では、乙債権について譲渡制限特約が付されている。譲渡制限特約が存在しても、債権譲渡は有効であり(466条2項)、譲渡制限特約が存在しても、Eはその事実をもって対抗できないのが原則である。
2 もっとも、466条の6第3項は、将来債権譲渡の場合において、債権の対抗要件が具備されるまでに譲渡制限特約が締結された場合には、譲受人が譲渡制限特約の存在について悪意であったとみなす旨規定し、466条3項によって、債務者は譲受人に対して、債務の履行を拒むことができるとする。
これを本件についてみる。本件では、A B間の将来債権譲渡契約は平成25年1月11日に締結されているものの、具体的に乙債権が発生し譲渡制限特約がなされたのは同年3月5日である。そして、Bが乙債権を取得し、譲渡人であるAが債務者Eに譲渡の通知をすることでBが対抗要件を具備したのは同年5月7日であり、これは譲渡制限特約よりも後のことである。
したがって、債権の対抗要件が具備されるまでに譲渡制限特約が締結されたといえ、466条の6第3項により、Bは譲渡制限特約について悪意とみなされる。
3 よって、Eは、譲渡制限特約をもってBに対し乙債権にかかる債務の履行を拒むことができる(466条3項)。
以上
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